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アルバム「VOYAGER」が完成して思うこと

緊急事態宣言の翌日から制作を開始した、僕と内山肇さんのコラボアルバム「VOYAGER」が、ついに・・・

ついに!マスタリングを終え完成しました!

今日は、自分への備忘録も兼ねて、今思っていることを素直にnoteに書き残しておこうと思います。


山と谷を毎日行き来した仕上げの時間

以前、完成間近のnoteを書きました。ここで書いたように、ある一定の期間から先は、予定していた7月上旬、つまり今頃にリリースできないことがストレスになっていました。

この頃、正直僕は病んでいたと思います。そして、その病みっぷりはこの記事をアップした後も快方に向かうことなく、最後の最後までしんどい時間は続いていました。あんまりこういうこと書かない方がいいのか?いいや、素直に書くと決めたから、全部書こう(笑)

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楽曲を全て揃え、全曲のミキシングが終わったのは、マスタリングの前の日の深夜。僕と肇さんが2人で判断して音源制作を進めていたので、一回「いいね」と思えても、聴き込んでいくうちにどちらかに楽曲への改善点が芽生え、それを話し合うたびに、「またリテイクするのかよ・・・」と、僕は思ってしまうほどの精神状態でした。

間違いなく、僕は電話越しの声にその態度が出ていました。

楽曲によっては、何度ミックスし直したか、セッションを見返すのすら嫌になる曲も。6月末にはミックスは全て終える。そう思っていたのに、結局7月を跨いで、マスタリング前夜まで2人でゴリゴリに直していた。

もちろん、僕だって全くの妥協はしていない。でも、肇さんは気になると言い出したら、絶対に直したい。今思えば、かなり言葉を選び、その度にすごく悩ませてしまいながら、粘り強く僕に相談をしてくれていました。

肇さんの言っている意味は、内心よくわかっているし、言われれば言われるほど、気になる。でも、受け止めるにはもう、精神的な限界ラインまで差し掛かっていた。終わらせることが、つい数日前まで目的になっていた。

代わりに肇さんがミックスを担当してくれたりすると、今度はそれはそれで、せっかく自分が途中までやったのだから自分でやり切りたい、みたいな変なプライドが見え隠れしてしまったこともありました。

今思えば、冷静な状態ならそんな思考には至らない。けれど、やっぱりアルバムを作っていると、自分って本当に追い込まれてしまうということ。そして、親と同い年のCM音楽業界の巨匠に、めちゃくちゃ気を使わせてしまいながら仕上げたんだなという、肇さんへの申し訳なさが浮かぶばかり(笑)

これが今、2人して笑って振り返らせてもらえること、肇さんには本当に感謝しています。(面と向かって言いにくいからnoteに書く。)


細部を詰めれば詰めるほど出る、意見の相違

共作している上で一番大事なのは、
間違いなく一緒に作っている仲間へのリスペクト。

特にアルバムという大きな物語をダブルプロデューサー=意思決定を2人で行う場合、一番大変なのが互いの意見がずれてしまった時。

2人とも、本当に多くのものを投じて作ったアルバムです。意見が食い違ったからと言って、本質的に納得できないことに譲歩はしません。一番いいと2人が同時に思える答えにたどり着くまで、本質的にはずっと、各楽曲のどこが、というのが全くない状況を目指したくなる。

1人でも、どこが完成かを決めきるのは慎重になるのに、それが2人で、しかもお互い楽曲に対して客観性を付与しながら議論するから、終わらない。

とにかく、終わらない。

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去年から今年にかけて、本当に多くの種類の楽曲を一緒に作ってきた肇さん。かなりの濃度で2人で話し合いながら楽曲を作ってきたし、アルバムを2人で作ろうと思えたことも、4月の段階まではごくごく自然でした。

でも、やっぱり、シングルとアルバムって違うんです。

昨今の、シングル単体で定期リリースを行うストリーミング時代ならではの配信手法と違い、アルバムは(どう聴いてもらえるかは別として)頭からラストまでの時間芸術だと僕らは感じています。1曲だけでなく、全曲を通じてこれだけ濃密なコミュニケーションと音楽的嗜好を確かめ合った関係性で臨んでいました。

それでも、人は会う頻度や共有する時間が減ってくると、考え方や価値観に少しずつズレが生じる。自粛期間中、電話で話す他ない状況での僕と肇さんの音楽制作は、歩幅があっているようで少しずつ距離が生まれる。特に僕たちは、考えたり感じたりしながら常に進み続けるから、会話の頻度が減ると、それを意感覚的に共有するのが本当に大変でした。感覚で共鳴できないと、音楽は絶対にどちらかが後悔するから。

あの肇さんとでさえ、こんなに意見が合わないことがあるんだ。時代の流れに、気づかぬうちに僕が押し流されていたように今は思います。


史上初、マスタリング後のリテイク

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マスタリングはいつも通り、僕らのサウンドを熟知しているDr. SWING氏。僕らの楽曲に、上質感や立体感、スピーカーの外に溢れ出るような感覚をもし持っている方がいれば、それは100%彼の功績です。

今回も、既存リリースシングルも含め全10曲のマスタリングを依頼して、様々なチャレンジをし、集中に集中を重ねて楽曲が完成しました。


しかし・・・今回の僕らは、帰宅後に互いの試聴環境で聴いてみて、どうしてもこれは直したい・・・と思ってしまったことがあったのです。

「肇さん・・・直したいです。」
「僕も。これじゃ、僕らのサウンドじゃないよね。」

前提として、リテイクの原因はSWING氏の作業には一切ありません。注意深く聴いた上で、OKを出したのはこちらです。何があったかは専門性の高い話なので割愛しますが、純粋に思うのは、

世界的なトレンドを意識したサウンドにすることを試みるより、
僕らが一番大事にしてきた質感を、今回も一番大事にすべきだった。

ということ。

これを、完成後の音源を聴いていて強く思います。リテイク後の楽曲は、それはもう美しく、低域も高域も、まさに僕らが求めていた希望の光に満ちたサウンド。考えられるすべてのケースを試すことができたため、これが最善の選択だったと心の底から、2人とも思えています。

そこにたどり着けて、本当に良かった。マスタリングをやり直した分、もちろん追加費用はかかっている。けれど、後悔しない選択をしたことは、僕らがこの音楽たちを世の中に届ける意味では、妥協できない投資でした。


「やってはいけない」は、過去の自分や人が決めたもの

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今回の音楽制作は、コロナの自粛期間における僕らにとって、本当に2人の情熱を注ぎこむ対象として強い存在感を放っていました。

緊急事態宣言、日本中が不安な空気に包まれる中。仕事が延期になって空いた時間を、「最高で最大の趣味」と言っても過言ではない、楽しい音楽制作に没頭することができた。
アルバム制作を行うために、僕は新たに高価な機材を無理やり買い込んで制作に没頭した。音楽家が皆、明日生きていくのが不安な最中に。

僕らは、本当に楽しく、そして同時に、必死でした。あの期間に楽しんで音楽が作れたこと。確かに仕上げはしんどかったけれど、終わってみた今、この楽曲たちの魅力に自分たちが心底夢中になれていること、ただただハッピーだなと僕は思います。きっと、肇さんもそう思っているはず。

この期間中、誰かに直接言われたわけでもないのに、

楽しむことは、不謹慎だ。

という、戦時中かよって思うような強迫観念を僕は自分自身に感じていました。日々、目に映る情報の中で印象に残るのは、政治批判や差別問題、誹謗中傷、そしてそれらに対する、いろんな人たちの、いろんな立場の、それぞれの強い想い。

苦しい。不安。怖い。先が見えない。

それは、きっとどんな立場の人でも大なり小なり同じだったはず。だからと言って、本当は楽しむこと自体を遠慮する必要なんて何もない。少なくとも僕らは音楽を作ることが楽しかったから、自分の心の中にある、今表現したことに集中し切れれば、楽しんで時間は過ごせたはず。

今なら、2ヶ月ほど前の自分にそう言いたい。

僕は、自分自身が勝手に感じていた世の中のバイブレーションに、勝手に自分が呼応して進めずにいました。外側の世界に、自分がどうメッセージを発信すればいいのか、どうすれば、この作品をより多くの人に届けられるか。それを考えれば考えるほど、その沼にのめり込む自分がいました。


僕にとっての「ホンモノ」は、僕の心の中にある

それでも、いい音楽だと思えた瞬間にあふれる喜び、そして公私それぞれ、僕のことを支えてくれた仲間たちの存在で、僕らのアルバムは完成した。

楽しいこと、苦しいことを行ったり来たりして作り終えた今、

自分の心の内側を

見つめ直そう。
育てよう。
自ら楽しくしよう。
他人から、評価される筋合いはない。

ということが、何よりも大切だと胸を張って言えます。


人はそれぞれ、その時の自分が直感的に善悪を判断するだけの価値観を持っていると思います。その直感の正体は、決して目には見えない、心が決めてくれるものだとアルバム制作から学びました。

僕が発信しているこのnoteを含め、現代人は皆、日々あふれるような情報を自分自身で取捨選択しながら生きています。昨日話題になったニュース、2時間前にバズった話題も、一瞬で忘れ去られてしまう日々。発信活動をしていれば尚更、話題になったものに対する即時的なリアクションを求められがちだし、情報の波に乗ることでPVやエンゲージメントをいかに稼ぐかが、情報発信者としてのスキル、のように囚われがち。それ自体は否定しない。


でも、それに呑まれたら、僕は楽しめなかった。

ふとした瞬間に、自分自身のことだけを集中して考える時間ができること。過去とか未来を考えず、現在の自分にだけ集中して、その時何を欲し、どこへ向かい、誰とどんな時間を過ごしたいのか。それらを確かめる時間って、僕にとってはすごく必要。それはきっと、これから先どんな時代になろうと、自分なりに知っておく必要がある。

自分にとっての「ホンモノ」とか「本質」って呼ばれる価値や考えは、常に外部には存在せず、自分自身の内側にあると強く感じます。外部の情報や状況はあくまで、そんな内側の自分を人格として表現するためのツールに過ぎない。内側の、人として生まれた丸裸の心に向き合えた時、「幸せ」とか「楽しい」とか「嬉しい」という気持ちは、僕の場合は昔からさほど大きく形を変えずに残っていたんです。

そんな「ホンモノ」でさえ、常に状況に応じてそれぞれの内側で変化するのだと思います。それを確かめられる機会を作ることができたら、自分の異変にも、そのための対処も、きっともっと楽しくできるようになるはず。


VOYAGER - それは、心の中の旅路

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僕らがこの3ヶ月を賭けて描いてきた世界は、巡り巡って、僕自身の今後の生き方に大きな気付きを与えてくれました。

・デモ制作時の、ただただ楽しくて仕方なかった自分。
・伝えたいことが、世の中の流れの中で濁り始めた自分。
・「幸せの成果」の基準が、世の中からの評価についなりがちな自分。
・楽曲を聴いたら、「純粋に楽しい自分」に戻れた自分。

心を自由にしてあげられる環境を、僕は強く求めていた。僕にとっては今、このアルバムがその役割を担ってくれるようになりました。


ノイズを遮断し、音に没頭できる世界。
心が平常に戻ったときに気付ける、いつもの街並みの美しさ。
日々すれ違う人々の前向きな空気感。
人の愛情や優しさを、素直に受け止められた時の喜び。


苦しい世の中にだって、間違いなく明日に進める希望はある。本当に楽しくて楽しくて作り進めた楽曲たちの奥底に、悩みもがいた僕は救われました。すべての楽曲が完成し、僕らにとって文句なしの「名盤」と思える楽曲ができた今、最後まで作り進められたこと、支えてくれた人たち、そして、途中で諦める決断をせずに済んだ、僕らの楽曲を待っていてくれる人たちへ、きちんとお礼が言いたいです。


ありがとうございました。


アルバムのリリース時期

アルバムの先行シングルをもう1曲、7月22日(水)にリリースします。

今回、とっても素敵な、国際色豊かなアーティストの方にゲスト参加いただきました。実はまだきちんと会えていないのですが、フルリモートで、一発で、僕と肇さんが「最高かよ」って感嘆した歌声です。肇さんの色気たっぷりの洗練されたアコギの音色と、僕のぶっといリズムとベースが折り重なり生まれたニュージェネレーションサウンドです。お楽しみに。

そして・・・アルバムのリリース日ですが、

2020年8月7日(金)

に、決定しました!

全く意図せずして、実はこの8月7日は、ちょうど2年前に僕の音楽人生を大く変えることになった「BRAINSTORM」のリリース日と全く同じ。

いまだに物凄い勢いで読んでもらえているこの記事。この頃のリアルな感情や状況変化の推移を、是非今改めて読んでもらえたら嬉しいです。


2年前から大きく状況は変化して、気がつけばSpotifyの累計リスナーは100万人を超え、総再生数はもうすぐ300万回を超えます。いつも、本当にありがとう。皆さんに、僕らは支えられています。

楽曲は、肇さんとのコラボ、そして自分自身の心やスキルのアップデートによって、間違いなく当時の楽曲から成長できていると確信します。是非、今の僕たちを、楽しみにしていてください。


さぁ。完成してからも僕のアクションは続きます。

今月は、アルバムをより多くの方に届けること、そして何より、「今、僕らの音楽を聴いてくれている方々」を、どうすればもっと近くに感じられるか。をテーマに、関係各所との打ち合わせやリリースに向けた準備を重点的に行います!リリースまでの1ヶ月、なかなかリアルな場でお会いできない今、僕らなりにファンの皆さんとのコミュニケーションを追求します。

どうかお楽しみに!


Kotaro Saito / 齊藤耕太郎

https://twitter.com/kotarosaito1211

そうそう、Google社が新しく始めたハウツー動画SNS、「Tangi」のエクスクルーシブクリエイターになり始めました。こちらも是非フォローしてくださいね。随時更新します。







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