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地方産業の再生

現在の日本では、人口が減少するとともに、少子高齢化が進み働き手が少なくなってきている。また、過密化が進んでおり都市の人口過密はどんどん高くなっている。対して地方では過疎化が進み、その影響で地域の産業が衰退してきてしまっている。
このような地域の産業をこれからどのように守って育てていくべきなのか。さらに地方圏では、人口減少と少子高齢化によって、市場の縮小、産業の担い手の減少などで地域の産業が縮小している。地域産業が縮小することで、村で育った若者が、地域からさらに離れていくという負の連鎖が起きてきている。
地方圏の多くの地域は、企業誘致という企業からの立地行動的視点、すなわち、工場などをどこの場所に立地させるのかといった立地選択の視点からも比較劣位が大であることは免れ得ない。従って、従来の立地論では選択されえない比較劣位にある地域、すなわち条件不利地域において、新たな産業を展開させていくためには、地域自ら産業を創りだしていく仕組みをいかに構築していくかが問われてくる。

・事例

桜坂劇場(沖縄県那覇市)の地域産業の一つの事例を取り上げる。地域独自の文化発信拠点づくりから街づくりへ繋げることを目的とした地域産業であり、沖縄県那覇市の中心市街地にある。県庁所在地である那覇市の中心市街地には、県下の中心的な商業・業務機能が集積しているが、2000年頃から進む新市街地や郊外部の開発に伴って商業機能は分散し、求心力が低下するようになり、客層が流れ、次々と街から姿を消していった。それを改善するため地域の顧客との継続的な関係を築いて、そのニーズに対応した映画・サービスを提供するという経営スタイルを確立し、開業から3年ほどで会員数が1万人に達し、経営を安定軌道に乗せた。売上に占める興行収入の割合は50%以下と低く、その他のカフェやショップ、市民大学でそれぞれ売上を出すという複合的、安定的な売上構成となっている。民間事業者の創意で作った「文化の発信拠点」を中心に新しい動きが生まれつつある。映画・音楽・クラフトなどの分野で地元のクリエイターが作品を発表し、マーケットとつながる拠点になりつつある。また、周辺のライブハウスや市場と連携して、音楽を中心にアートと食を楽しむ文化イベントを開催するなど街づくりとも関わっており、行政と連携する場面も増えてきている。こうした動きを発展させ、今後は、劇場界隈に映像・音楽・クラフトなどの分野のクリエイターが集まり、互いに触発し合いながら新しい作品・活動・事業を生み出していくような拠点エリアとなっていくことが期待される。そのようなエリアの形成に向けて、拠点となる劇場、新しい価値を創造するクリエイター、街づくりに関わる事業者や市民、それを支える行政等が連携し、具体的な活動を進めていくことが重要である。そのためには、多様な参加主体間で「文化創造の街づくり」という社会的目標を共有化し、そのもとに各主体がそれぞれの役割と能力を生かして活動することにより、持続的な活動の原資となる経済的な利益を実現・分配できるような仕組みを構築することが必要になる。

・今後の対応

現在の日本で求められているのは、地域の資源、人材、文化などを丁寧に発見し発掘して生産要素として組み合わせながら雇用や所得の漸次的な増加をつくっていく考え方である。「地域」とは人間が生活する「場」であり、その「場」を安定的に形成していくことが地域経済の再生である。そのためには、行政と住民と地域産業との協働による様々な事業活動が求められる。

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