【Julia vs Python】メリット・デメリットを比較〜Juliaのおすすめライブラリ20選から開発環境設定まで
Juliaは2012年に誕生した比較的新しいプログラミング言語です。
新しいイメージのあるRustと比較しても、Rustは2006年誕生ですので、かなり新しいですよね。
プログラミング言語選択においては、特にデータサイエンスや数値計算の分野で、Python(1989年誕生の老舗)とJuliaが注目を集めています。
それぞれの言語には独自の利点があり、用途に応じた適切な選択が重要ですので、この記事では、JuliaとPythonのメリット・デメリットを徹底比較しながら、それぞれのメリットとデメリットを探ります。
まずは簡単にJulia を把握してください。
2012年誕生
2018年12月、開発者の3人がジェームズ・H・ウィルキンソン賞を受賞
実行時には、JITコンパイラ処理、表面的にインタプリタとして動作する
機械学習や科学技術計算との相性がGOOD
PythonやMATLAB、R言語、C言語などのいいとこ取りをした言語
高速性、構文のシンプルさ、外部ライブラリとの連携性
Juliaは知名度が低い
知名度が低いというのはプログラミング学習の中では致命的でしたが、昨今GPTなどの登場によりこの致命傷は改善されているわけであります。
一方で機械学習や計算などに強くPythonのような要素を持ち合わせておきながら、実行速度はPythonの30倍の速度であるとも言われており、興味のある方はJulia という言語、チェックしてみるのもいいかもしれません!
1. パフォーマンス
Juliaのメリット: Juliaは、コンパイル型の言語であり、CやFortranと同等の高速なパフォーマンスを提供します。特に、大規模な数値計算やシミュレーションにおいては、その速度が大きなアドバンテージとなります。
Pythonのメリット: Pythonはインタプリタ型の言語であり、コードの実行速度は一般的にJuliaより遅いです。しかし、NumPyやPandas、TensorFlowなどの高度に最適化されたライブラリを使用することで、多くのケースで実用的な速度を実現しています。
デメリット:
Julia: 一部の複雑なケースではコンパイル時に遅延が発生し、初回実行時に時間がかかることがあります。
Python: 素のPythonコード(ライブラリを使わない場合)は、特にループを多用する処理で遅いパフォーマンスを示すことがあります。
2. エコシステムとライブラリ
Pythonのメリット: Pythonは、長年にわたり膨大なライブラリとフレームワークを蓄積してきました。科学計算、データ分析、Web開発、機械学習など、ほとんどの分野に対応するライブラリが揃っています。
Juliaのメリット: Juliaのエコシステムも成長中で、特に科学計算やデータサイエンスに特化したライブラリが充実してきています。Juliaのライブラリは、同じ言語で記述されており、PythonのC拡張のような外部依存が少ないのも特徴です。
デメリット:
Python: ライブラリによってはCやFortranに依存しているため、インストールや環境構築に手間がかかることがあります。
Julia: 一部の分野ではまだ対応するライブラリが少なく、特にWeb開発などではPythonの方が優れています。
3. 学習曲線とコミュニティ
Pythonのメリット: Pythonは、シンプルで読みやすい文法が特徴です。初心者でも比較的容易に学ぶことができ、豊富な学習リソースと活発なコミュニティが支援します。
Juliaのメリット: Juliaは、数値計算や科学計算のバックグラウンドを持つ人にとっては学びやすい言語です。また、数学的な表記に近いコードが書けるため、特定の分野での学習が効率的です。
デメリット:
Python: 柔軟性が高いため、特定の分野では学習すべきライブラリやフレームワークが多く、初心者には混乱を招くことがあります。
Julia: Pythonに比べて学習リソースやコミュニティの規模が小さいため、特定の問題に対する情報を見つけるのが難しいことがあります。
4. 並列処理と分散処理
Juliaのメリット: Juliaは、並列処理や分散処理のためのツールが言語自体に組み込まれており、簡単に利用できます。特に大規模データの処理や分散シミュレーションに強みがあります。
Pythonのメリット: Pythonも並列処理をサポートしており、multiprocessingやconcurrent.futuresなどのモジュールを使うことで、マルチスレッドやマルチプロセスによる並列処理が可能です。また、DaskやPySparkのようなフレームワークを使用することで分散処理もサポートします。
デメリット:
Julia: 並列処理のためのツールは豊富ですが、特定のケースでの最適化には経験が必要です。
Python: GIL(Global Interpreter Lock)の存在により、マルチスレッドのパフォーマンスが制限されることがあります。
5. 互換性とインターオペラビリティ
Pythonのメリット: Pythonは多くのシステムと互換性があり、他の言語やツールとの連携が容易です。C/C++とのインターフェースを持つライブラリや、JavaやRと統合するためのツールも充実しています。
Juliaのメリット: Juliaは、CやFortranのコードを直接呼び出すことができ、他の言語とのインターオペラビリティが高いです。また、Pythonのライブラリも使えるため、Pythonのエコシステムを活用することができます。
デメリット:
Python: 一部の高度な最適化が必要なシナリオでは、CやC++のコードを手動でラップする必要があります。
Julia: 他の言語と比較すると、統合のためのツールやドキュメントが少ないことがあります。
6. どちらを選ぶべきか?
Juliaを選ぶべきケース:
高速な数値計算やシミュレーションが求められるプロジェクト
科学計算やデータサイエンスの分野で、パフォーマンスを重視する場合
並列処理や分散処理が重要なプロジェクト
Pythonを選ぶべきケース:
広範なライブラリとフレームワークが必要なプロジェクト
簡便なプロトタイピングや、複数のドメインにまたがる開発が求められる場合
幅広いコミュニティサポートや学習リソースが重要な場合
アルゴリズム取引における優位性
アルゴリズム取引において、どちらの言語が優位性が高いかを判断するには、プロジェクトの具体的な要件や開発環境に依存します。
Pythonは現在、アルゴリズム取引の分野で広く使用されており、豊富なライブラリとツールを備えていますので、開発で躓くということはほとんどないでしょう。
例えば、取引プラットフォームとの統合やデータ取得、戦略のバックテストに役立つQuantLibやZipline、TA-Libなどのライブラリは、Pythonのエコシステムの強力なアドバンテージとなっていますし、なによりも、多くの取引所やデータプロバイダがPython向けのAPIを提供しているので、環境のセットアップがスムーズに行える点もPythonの大きな魅力です。
一方、Juliaはその高速な数値計算能力と優れた並列処理・分散処理の機能により、特に複雑な数理モデルのリアルタイム実行や、大規模データセットの処理が必要なシナリオで強みを発揮します。
JuliaはCやFortranと同等のパフォーマンスを持ちながら、Pythonと同じく高レベルな言語の柔軟性を持ち合わせているため、リアルタイムでの取引戦略の実行やシミュレーションが求められる場面で非常に効果的です。
しかし、Pythonの成熟したエコシステムとツールの豊富さは無視できない要素であり、特に迅速なプロトタイピングや既存のインフラとの統合を考慮すると、Pythonの優位性が際立ちます。
特にコンパイル言語にこだわりがない場合はPythonでの開発を軸にしたほうがいいでしょう。
やはりPythonの利便性とエコシステムの強さが世界的に多くのアルゴリズム取引のプロジェクトで選ばれる理由となっています。
結論として、アルゴリズム取引のシステムにおいては、プロトタイピングやツールの豊富さを活用したい場合にはPythonが適しており、複雑な数値計算やリアルタイム性が求められる場面ではJuliaが優位性を持つといえます。それぞれの言語が持つ特徴を理解し、プロジェクトの要件に最も適した言語を選ぶことが、成功への鍵となるでしょう。
Juliaのおすすめライブラリ20選
ここからは計算やトレードに便利なJulia のライブラリを紹介。
それぞれPythonに該当するライブラリ名も記載しています。
Pythonからの乗り換えにもいかがでしょうか?
DataFrames.jl
Python対応: Pandas
用途: データフレームの操作と解析。
CSV.jl
Python対応: csv、pandas.read_csv
用途: CSVファイルの読み書き。
QuantLib.jl
Python対応: QuantLib-Python
用途: 金融計算、オプション価格設定、債券価格計算。
TimeSeries.jl
Python対応: pandas (with datetime)、statsmodels
用途: 時系列データの操作と解析。
MCMCChains.jl
Python対応: emcee、pymc3
用途: MCMCの結果を扱うためのライブラリ。
Turing.jl
Python対応: PyMC3、TensorFlow Probability
用途: ベイズ統計モデリング。
JuMP.jl
Python対応: PuLP、CVXPY
用途: 数理最適化問題の定式化と解法。
Flux.jl
Python対応: TensorFlow、PyTorch
用途: 機械学習とニューラルネットワークの構築。
MarketData.jl
Python対応: yfinance、pandas_datareader
用途: 金融市場データの取得。
DifferentialEquations.jl
Python対応: SciPy、SymPy
用途: 微分方程式の数値解法。
Plots.jl
Python対応: Matplotlib、Seaborn
用途: データの可視化。
HTTP.jl
Python対応: requests
用途: HTTPリクエストを扱うためのライブラリ。
Zygote.jl
Python対応: Autograd、TensorFlow (with automatic differentiation)
用途: 自動微分ライブラリ。
Gadfly.jl
Python対応: Plotly、ggplot (Python)
用途: グラフ作成のためのライブラリ。
BayesOpt.jl
Python対応: BayesianOptimization、scikit-optimize
用途: ベイズ最適化ライブラリ。
StatsBase.jl
Python対応: SciPy.stats、statsmodels
用途: 統計的手法を提供するライブラリ。
Distributions.jl
Python対応: SciPy.stats、numpy.random
用途: 確率分布を扱うためのライブラリ。
FinancialToolbox.jl
Python対応: QuantLib-Python、NumPy
用途: 各種金融計算ツール。
JSON.jl
Python対応: json
用途: JSON形式のデータのパースと生成。
Dagger.jl
Python対応: Dask、Ray
用途: 並列・分散計算のフレームワーク。
Juliaの開発環境
Mac (macOS) での Julia 開発環境設定と実行
ステップ 1: Julia のインストール
Julia公式サイトにアクセス:
Juliaのダウンロードページにアクセスします。
macOS用のインストーラーをダウンロード:
macOS用の最新バージョンのJuliaインストーラーをクリックしてダウンロードします。
インストーラーを実行:
ダウンロードが完了したら、インストーラーを開き、画面の指示に従ってJuliaをインストールします。
Juliaを起動:
インストールが完了すると、ApplicationsフォルダにJuliaがインストールされます。Juliaをクリックして起動します。
ステップ 2: ターミナルから Julia を起動する(オプション)
Homebrewを利用してインストール:
ターミナルを開き、以下のコマンドを実行してHomebrew経由でJuliaをインストールすることもできます。
bash
コードをコピーする
ターミナルからJuliaを起動:
インストール後、ターミナルで以下のコマンドを実行してJuliaを起動できます。
bash
コードをコピーする
ステップ 3: Hello, World を実行
Julia REPLでの実行:
Juliaを起動したら、以下のコードを入力してEnterキーを押します。
julia
コードをコピーする
これにより、Hello, World!と表示されれば成功です。
スクリプトファイルを作成して実行:
テキストエディタで以下の内容をhello_world.jlという名前で保存します。
julia
コードをコピーする
保存したら、ターミナルでファイルの場所に移動し、以下のコマンドでスクリプトを実行します。
bash
コードをコピーする
Windows 11 での Julia 開発環境設定と実行
ステップ 1: Julia のインストール
Julia公式サイトにアクセス:
Juliaのダウンロードページにアクセスします。
Windows用のインストーラーをダウンロード:
Windows用の最新バージョンのJuliaインストーラーをクリックしてダウンロードします。
インストーラーを実行:
ダウンロードが完了したら、インストーラーを開き、画面の指示に従ってJuliaをインストールします。
Juliaを起動:
インストールが完了すると、スタートメニューにJuliaが追加されます。Juliaをクリックして起動します。
ステップ 2: 環境変数の設定(オプション)
パスを設定する:
Juliaをコマンドラインから簡単に起動できるようにするため、環境変数にJuliaのパスを追加します。
スタートメニューで「環境変数」と検索し、「システム環境変数の編集」を選択します。
「環境変数」ウィンドウで、「システム環境変数」の「Path」を選択し、「編集」をクリックします。
C:\Users\YourUsername\AppData\Local\Programs\Julia\bin のようなJuliaのインストールディレクトリを追加します。
ステップ 3: Hello, World を実行
Julia REPLでの実行:
Juliaを起動したら、以下のコードを入力してEnterキーを押します。
julia
コードをコピーする
これにより、Hello, World!と表示されれば成功です。
スクリプトファイルを作成して実行:
テキストエディタで以下の内容をhello_world.jlという名前で保存します。
julia
コードをコピーする
保存したら、コマンドプロンプトでファイルの場所に移動し、以下のコマンドでスクリプトを実行します。
cmd
コードをコピーする
まとめ
Mac(macOS)とWindows 11のどちらでも、Juliaの開発環境を簡単に設定し、最初のプログラムである「Hello, World」を実行することができます。
MacではUnix系の環境と親和性が高く、Homebrewなどのツールを活用できます。
一方、Windows 11では、標準的なインストーラーで簡単にセットアップでき、環境変数の設定を行えばより便利に使用できます。
それぞれの環境に応じて適切な手順を選んでください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?