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叶うかどうかじゃない、叶えたいかどうかだ。〜10000m日本新記録をみて感じたこと〜

「塩尻和也、日本新記録でフィニッシュー!!」

日本陸上選手権大会の男子10000m、およそ30分間の死闘を制したのは、大復活を遂げたランナーでした。

ゴールの瞬間、数日前に読んでいた小説、「星を編む」のワンフレーズが脳裏に浮かんできました。

「追いかけるのをやめたら、それが本当の夢の終わりだよ」

夢を追うのも、諦めるのも最後は自分。叶うかはわからないけど、達成の可能性が僅かに残されるのは「夢を追う人”だけ“」だ。

今回優勝した塩尻選手は、夢を追い、諦めなかった内の一人だと思います。

まずは今回日本新記録を達成し、日本選手権覇者となった「塩尻和也」選手について紹介しておこうと思います。

◯ 塩尻和也
出身地:群馬県 (伊勢崎清明高→順大→富士通)
年齢:27歳 (1996年生まれ)
<主な戦績>
2014年 インターハイ3000mSC 優勝🥇
2015年 日本インカレ3000mSC 優勝🥇
2016年 リオデジャネイロオリンピック
      3000mSC 出場
      日本インカレ3000mSC 優勝🥇
2017年 10000m:27分47秒
       →(当時日本人学生歴代4位)
      日本インカレ3000mSC 優勝🥇
2018年 日本選手権3000mSC 優勝🥇
       →8分29秒(当時日本歴代8位)
      日本インカレ3000mSC 優勝🥇
       →(日本インカレ 4連覇達成🏆)
      箱根駅伝2区 区間新記録🎖️
2019年 アジア競技大会3000mSC 3位🥉
2021年 5000m:13分16秒(日本歴代7位)
2023年 日本選手権5000m 優勝🥇
      日本選手権10000m 優勝🥇
       → 27分09秒 日本新記録🎖️
      ブダペスト世界選手権5000m 出場
      アジア選手権5000m 2位🥈
      アジア競技大会10000m 5位

など...。

挙げだしたらキリがないくらい、素晴らしい戦績の数々に目が眩んでしまいそうになります...。

塩尻選手と言えば、
「3000mSCとロードで無類の強さを誇る、世代最強ランナー!」
学生時代の活躍から、そんな印象を受けた陸上ファンも多くいるのではないでしょうか。ぼくもそんな印象を受けたうちの一人で、逐一動向を追っていた選手の一人です。
戦績なんかを見てみると、一見なんの挫折もなく、エリート街道を突っ走ってきた選手のようにも見えますが、そんなことはありません。

彼にも挫折してきた過去がありました。
悲劇が襲ったのは2019年9月、3000mSCの競技中のことでした。障害を超えたときの異変が、悲劇の序章でした。後の検査で、

「右膝靱帯損傷」

であることが判明しました。

9月中にすぐ手術に踏み切り、復活を果たしたものの、いまいちピリッとしないシーズンが続きました。得意だった3000mSCで結果を残せない日々。若手が台頭したことも影響し、記録だけでなく、勝負の面でもあと一歩届かないレースが長く続きました。

苦境のときでも淡々と練習を継続する。結果が残せない時期こそ、コツコツと小さなことを積み重ねる。そんなひたむきな姿勢が、状況を少しずつ改善させていきました。

調子の上がらない3000mSCから離れ、フラットレースでの闘いを決意します。2019年シーズン以降、優勝からは永く遠ざかっていましたが、ここにきて4年間の努力が2023年シーズンで爆発することになりました。日本選手権の5000mを制したことを皮切りに、世界選手権やアジア選手権といった国内外の大会で「完全復活」を印象づけるレースが続きます。

そして2023年12月10日、怪我から、そして長くて暗いトンネルに入ってから4年。陸上ファンの誰もが待ち望んだその瞬間が訪れました。

27分09秒80

大学3年生でマークした10000mの自己ベストを30秒以上更新する、圧巻の日本新記録。前日本記録保持者の相澤選手にも競り勝つ、会心のレース展開で掴んだ栄冠でした。

ぼくは「諦めなかったから掴めた栄冠」なのかなと思います。塩尻選手だけに関わらず、多くの競技者が怪我や、なんらかのアクシデントに直面し苦境に陥ります。そんなとき、彼らはけっして諦めない。最後まで自分に出来ることに精一杯取り組み、最善を尽くす。一時は輝けなくても、そこで腐らない。
夢に向かって一直線で、小さなことにコツコツ取り組める。だから復活を遂げ、輝く舞台に舞い戻ることができる。

当たり前なことだけど、意外と難しいことです。輝いて見えている人たちも、影では弛まぬ努力をしているもの。ただ羨ましがるのではなく、そういった姿勢を自分自身も持って取り組むことが大切なのかなと感じました。

これまでの自分はどうだっただろうか。
苦境に陥ったとき、心のどこかで言い訳して逃げたことはなかっただろうか。
心に問うてみると、考えさせられる場面が幾つか浮かんできます...。

挑戦を継続するのも自分、諦めるのも自分。周りになにを言われたとしても、最後に決断するのは自分自身です。「他責」ではなく「自責」です。
決めたからには責任を持って遂行し、やり遂げる。それもまた、結果を追い求めていく上では必要な要素なのだと思います。

今回の快走は、怪我をした時に決して諦めない、不屈の精神が呼び込んだ産物という側面も少なからずあると思います。
故障をしていたときや不調が続いたとき、諦めていたら、今回の快走はなかったわけですから...。

最初に紹介したフレーズ、
「追いかけるのをやめたら、それが本当の夢の終わりだよ」
これは裏を返せば、
「諦めない限り、夢は終わらない」
「夢の終わりを決めるのは自分自身だ」
と言い換えられます。

このフレーズを見て、聞いて、真意を解釈したとき、なにを選択するでしょうか。どう行動するでしょうか。

少なくともぼくは、
「夢が叶うかどうかで迷い、躊躇するのではなく、叶えたい夢かどうかで決断したい」
そう思いました。叶えたい夢なら、どんな苦労も苦労とは感じないはずです。自分にとって必要なプロセスで、それはきっと充実感を覚えると思います。

このレースを視聴して、大切な何かに気づけたような気がします。

最後になりましたが、塩尻和也選手。
この度は日本新記録ならびに、日本選手権での二冠達成、おめでとうございました。
勇気づけられるレース、感動しました!

(2,610文字)

図1. レース視聴直後の日記

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