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ちょうちょの話

今日はちょうちょの話をしようと思う。

半年ほど前のこと。道路、アスファルトの上でひなたぼっこをするちょうちょを見つけた。

ふわふわと羽をゆらめかせ、それはそれは気持ちよさそうだった。

しかし、ちょうちょがひなたぼっこしているそこは車も通れば人も通る場所で僕はひどく心配になった。こんなに気持ちよさそうにしているのに、気が付かずに天に召されるのはかわいそうだと。

よってダメ元でそのちょうちょにひょいと手を差し伸べてみた。人差し指だけを伸ばしたETポーズでちょうちょと交流を試みたわけである。

するとなんと驚き。ちょうちょがトコトコ足を動かして僕の指に乗ってくるではないか。そしてそこで落ち着いてまたふんわりしている。僕としても癒されてしまった。

しばらく歩いた先の家の軒先のコンクリートブロックの上なら安全だろうとそこへ離してやろうとしたところ、ちょうちょが嫌がった。あたいはあんたの指がいいのよ! と言わんばかりに僕の指に留まって離れない。

いくらなんでもどこまでもちょうちょを指に載せて歩くわけにはいかない。確かに動物博愛主義の人々には老若男女問わず好感度は上がりそうだが、そうは言っても僕としてもうーんと頭を抱えたわけである。

そこからさらに歩いたところ、とある家から伸びる松の木だか梅の木だか忘れてしまったその木に向かってすっとちょうちょの載る手を伸ばしてやったところ、あたい、ここならいいわよ! と言わんばかりにちょうちょは僕の手を離れて行った。

その数日後も家のベランダでちょうちょと遭遇したのは、またの話にするとして。僕はひとつの仮説を立てた。ちょうちょとて動物。動物はやはり自然の物の温もりをもとめるのだろうと。

アスファルトに比べれば僕の指の方が温もりがあり、コンクリートの塀に比べれば僕の指の方が温もりがあり、しかし松の木とも梅の木とも分からなくなってしまった木の温もりに僕の手の温もりは敗れたわけである。

以前どこかで木製の家具の多い部屋を寝室にしている人の方が眠りが深いと聞いたことがある。それもちょうちょが僕の指を好んだのと同じ理由ではあるまいか。

はてさて、答えはちょうちょのみぞ知る。

志紀

おはようございます、こんにちは、こんばんは。 あなたの逢坂です。 あなたのお気持ち、ありがたく頂戴いたします(#^.^#)