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建築のコンセプトについて

この記事では、コンセプトに対する私の方法論を語っていく。「この方法が正しい」「これが効率的な方法だ」と言う様な物ではなく、こんな方法もあると言う単なるパターンの提示である。コンセプトの作り方は人によって異なるという前提を否定する様なものではない。
ただし、自信がない訳では無い。私はこの方法でいくつものコンペで賞を頂いてきた。これは私の方法論を支える実績であり、薦めるに値する理由であると考えている。


早速だが、まず最初に1番大切にしている事を述べる。
それはコンセプトに留めないということだ。そこから派生するアイデアを絵や模型で必ず形にしてみる。そうする事ではじめてコンセプトが魅力的のものか、そもそも形になるものなのかが分かる。

コンセプト模型の例

この工程を無視しているコンセプトは、単なる言葉遊びのアイデアに成りかねない。この考えを念頭にこれからの記事を読んでほしい。
また、コンセプトから形を作る方法については長くなる為、別の記事で説明する。


コンセプトの種類

コンセプトの作り方を以下の2つのタイプに分けて話す。

  1. 課題やテーマから考える。

  2. 普段の生活の中で考える。

タイプ1さえできれば、ただ課題をこなす分には問題ないだろう。しかし、良い作品を作るためには2つのタイプをどちらも使える事が大切だ。特に、タイプ2のコンセプトは飛躍的かつ独創的なアイデアのストックになりやすい。ただ、長距離走のような厳しさがある為、誰にでもできるものではない。

絶対に使うタイプ1を無料部分で、応用的で実践できる人の限られるタイプ2を有料部分で書いていく。


タイプ1.課題やテーマから考えるコンセプト

このタイプは誰もが設計課題で行っているだろう。しかし、方法についてはあまり語られない。それは、固定化できるような普遍的な物ではないからだ。私も順番に並べて説明していくが、これも基本的な順番であり場合により変化するものと考えてほしい。以下が基本的な順番である。

  1. テーマとそれ関連する情報を集める。

  2. 常に頭の中で考えられるようになるまで1.で集めた情報を読み込む。

  3. 敷地を徹底的に分析する。

  4. 得た情報、分析を元にコンセプトの種を探す。

このように書いてしまえば非常に単純だが、学内で選ばれていない人の多くはそもそもこの工程が足りていない。情報の収集も読み込みも分析も全てが足りていない。
特に2.情報の読み込みに関しては、1度目を通して満足している人が多い。何度も目を通して情報を焼き付けることで、一見して関係の無い物事にさえ関係性に気がつく事ができる。この状態になることで、ようやく敷地の分析をする準備が整う。

敷地の分析は直接形態に繋がりやすい事柄だ。街のコントラストや軸、問題点、歴史などからヒントをもらう。様々な着目点があるが、ここで注意して欲しい事はそのコンセプトが唯一性を持っているかどうかである。
例えば、「街の賑わいを作り出す」のような誰にでも思い付くような表層をなぞっただけのコンセプトには具体性や革新性が帯びることがない。賑わいを具体的に分析して、例えば街の賑わいの場のモジュールを発見するなどして敷地の情報を集める。これ元に「街の空き地がこのモジュールに当てはまるかも」等の発見を経ることでコンセプトの種となり「街の空き地を媒介として、敷地外まで活動が広がっていく建築」と言う様な発展を経てコンセプトとなる。

この後、最初に書いたようにコンセプト模型をいくつも作り空間が魅力的かどうかを確かめる。その結果魅力的でなければ、自身の造形能力が足りないか、そもそも空間的に魅力がないので新しいコンセプトを再び考える。

これを繰り返すことでコンセプトを見つけ出すが、考えても何も浮かばない時もある。そうした時に私が良くする行動は何も考えないようにして散歩する。敷地が近い場合はその周辺を散歩する。かなり感覚的な説明になってしまい申し訳無いが、そうしてボーとした時にバラバラだった情報が繋がりアイデアが思い付く。


次に、見落としがちの事柄についても説明しておく。
それは、コンセプトが建築で解決できる事柄かどうか、または解決すべき事なのかを見極めるという工程である。建築を学ぶにあたって何でも建築で解決したい気持ちは分からなくもないが、建築以外で解決できるコンセプトには変えの効かない唯一性がない。そうした変えの効くコンセプトは、メインコンセプトの副次的な効果として現れる程度の扱いでいい。
先ほどと同じく「街の賑わいを作り出す」というコンセプトを例にする。これはイベントを企画すれば達成できる事である。このようなイベントは「空き地で起こりうる活動の1つ」という扱いでいい。コンセプトは建築でしか起こり得ない「共通するモジュールによる行動の伝播」や「空き地という場所の居場所化を促す空間」とするべきである。


次にタイプ2の説明をしていく。
最初に述べた様に、これは誰でも実践できる物ではない。ある程度の努力かセンスが必要な為、万人に薦められる物では無い。しかし、その分強力な武器になるだろう。

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