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旅先の猫

日帰りジンギスカンツアーで山形に飛んだ旅先で、キジトラの猫に出会った。
人懐こく、私に近づいてくる割に、構おうとすると敬遠する素振りを見せるので、追いかけるのを控えた。
すると、今度は向こうからやってきて、いきなり床からジャンプして、膝に乗ってきた。
そうか、そうかと、亡き愛猫・コタロウも大好きだった耳の後ろや顎、肩甲骨の内側をさすってあげると、気持ち良さそうに、私の膝に顔を埋めて、寧静な表情をした。柔らかく、滑らかな毛の感触が懐かしかった。
しばらくそうしていたけれど、音に驚いて、飛び降りると、その後は部屋の隅で、踞って眠っていて、近寄ってくることはなかった。
あれはもしかしたら、いつも傍にいて守ってくれているコタロウが、撫でてもらいたくて、一時あの子に憑依したのではなかろうか。
そんな馬鹿げた妄想が、時と共に、やはりそうだったに違いないと次第に確信めいて思えてくるのだった。

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