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貧血を正しく知ろう

今日は貧血についての、よくある思い込みや勘違いについてお話します。基本的な話ではありますが、自分が今どこにいるのか、どちらを向いて行こうとしているのか。

これを考えずに歩きだしても、遠回りになってしまい、なかなか改善に結び付かないことがあると思います。

今日お話する内容はこちらになります。

☘️貧血症状があっても貧血とは限らない
☘️貧血があっても鉄が有効とは限らない
☘️貧血でなくても鉄が足りていないことがある

今回の記事を読むと貧血についての理解が深まるはずですので、是非最後まで読んでみて下さい。

貧血の定義

まず、貧血とはどのような状態を指すかご存知ですか?一般的には立ちくらみ、息切れ、動悸、だるさ等の「症状」を「なんとなく」貧血と呼んでいる人が多いように思います。

しかし、病院では貧血は採血のヘモグロビンの値の減少と定義しています。基準はいくつかありますが、WHOによるものは、

✅成人男性 13g/dL未満
✅成人女性と6~14歳 12g/dL未満
✅妊婦と6か月~6歳 11g/dL未満

従って貧血は、採血をしなければ分からないことになります。少なくとも受診して医師と話をする時は、医師は上記を貧血と考えていますので、症状のみで「貧血」と呼ぶと話が食い違う可能性があります。

立ちくらみ≠貧血

電車や朝礼などで長い間立っていたり、精神的な強いストレスを受けた時に目の前が真っ白になり、気分が悪くなって倒れてしまうことがあります。これを俗に、「脳貧血」と呼ぶことがあります。

しかし、この場合、先程説明した貧血とは異なり、ヘモグロビンが低下しているわけではないので、医師が使う「貧血」の状態とは異なります。多くは迷走神経反射など、自律神経がうまく働かない場合に起こります。

確かにヘモグロビンが低い貧血の方も立ちくらみを起こすことがありますが、立ちくらみがあるから貧血とは言えないということです。

症状だけで貧血とは言えない理由

貧血では、立ちくらみのほか、次のような症状を伴います。

■疲れやすい
■だるい
■動悸
■動いた時の息切れ

しかし、これらの症状は貧血以外でも起こるので注意が必要です。たとえば「疲れやすい」「だるい」は、うつ病など心の問題も含めてあらゆる病気で起こりますし、動悸も、甲状腺機能亢進症や不整脈といった原因でもあり得ます。

息切れも心不全や肺気腫など、呼吸器系、循環器系の様々な病気で起こる場合があります。

「若い女性」に条件を絞れば、貧血の可能性は高くなりますが、中には別の重大な病気の可能性もあるため、決めつけずに病院で検査を受けておくことをお勧めします。

貧血なら、鉄を摂ればいい?

「貧血」と聞けば、「じゃあ、鉄」と反射的に答えてしまう方が多いのではないでしょうか?これも確かに、「若い女性」に限定してしまえば、殆どは「鉄欠乏性貧血」ですので鉄を摂れば良くなることも多いです。

しかし、貧血は次のような病気もあります。

白血病、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄線維症、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、各種がん(慢性炎症性疾患)、再生不良性貧血、慢性腎不全、鉄芽球性貧血、サラセミア、遺伝性球状赤血球症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、G6PD異常症、マラリア(感染症)…

これはごく一部で、細かい分類も含めると数えきれない数になります。このうち、鉄が有効なのは「鉄欠乏性貧血」だけです。他の原因で起こった貧血には、鉄は全く効果のない治療になります。

血液検査を受ければ通常、「鉄欠乏性貧血」の診断は容易です。この意味でもやはり病院の検査はきちんと受けておいた方が良いと思います。

「隠れ貧血」とは?

最後に、最近よく聞く「隠れ貧血」についてお話しましょう。これは医学用語ではないので、医師に対して使っても「は?」というリアクションや、「そんなものはない」というような否定的な反応になる可能性もあると思います。

これは、通常貧血の診断に用いるヘモグロビンが正常範囲でも身体の鉄が不足していることであり、これにより貧血にみられる症状が出現している状態を指します。言わば「潜在性の鉄欠乏」を「隠れ貧血」と呼ぶのです。

「隠れ貧血」の診断には「フェリチン」という検査項目が役立つことが多いです。これについては先日お書きした記事が詳しいので、よろしければお読み下さい。

なお、赤血球(ヘモグロビン)の材料となるのは鉄だけではありません。「グロビン」は球状になったたんぱく質を指し、たんぱく質が貧血の改善には必要であるほか、亜鉛、葉酸、ビタミンB12、ビタミンAが赤血球合成に関与しています。

鉄だけ摂れば良い、とは言えないことも、覚えておいて下さい。

まとめ

知っているようで知らない貧血の話をしました。

☘️貧血症状があっても貧血とは限らない
☘️貧血があっても鉄が有効とは限らない
☘️貧血でなくても鉄が足りていないことがある

病院の受診は敷居が高いという方もいると思いますが、診断が間違うとその後の治療も間違ったなものになります。出来れば貧血の症状があっても自己判断せず、病院で検査をうけて頂くことをお勧めします。

最後までお読み下さり、ありがとうございました!

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