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生きるための記憶だから

施設などで認知症の患者さんに、
「私のこと覚えてる?」
と聞いている人が時々います。
記憶力の訓練のつもりなのか
わかりませんが、
私はやめた方が良いのにと
思っています。

認知症の初期、
特にアルツハイマー型認知症は
新しいことを記憶出来ませんが
人格・感性・プライドなどは
保たれており、

自分の記憶がないこと、
何かおかしいことを
どこかで感じていて

傷ついたり不安になったり
しているからです。

嫌だった感情は覚えている

よく言われることですが
感情が動いた時の記憶は
忘れにくいようです。

残念ながら
楽しかった記憶よりも
怖かった、
つらかったといった
記憶が忘れにくいようです。

認知症の患者さんが
実際に、その相手と
何があったか
その出来事の内容は忘れても、

その人といた時に
不快だったことを
どこかで覚えていると、
その人やその場所に対して
強い拒否をされることが
あります。

そうなると、
被害妄想が増えたり
怒りっぽくなって
介護が大変になることに
つながります。

この、人と会った時の
「快」、「不快」は
身を守るために
「敵」か「味方」かを
見分けているという
本能的な部分なので

物忘れによっても
失われにくいのだという
説もあります。

困ったことに、
不快な感情は
思い違いや
間違った記憶と結びつき、
強固になる傾向があり

訂正がきかない
ということもよく経験します。

なるべく不安にさせない

実際に介護をしていれば
なかなか理想通りは
難しいのですが

ご本人が怒ったり
不安になることは
なるべくしない
ようにすると良いです。

先ほどお話した通り、
ネガティブな感情は
物忘れがあっても
なかなか消えないからです。

だから私は
認知症の患者さんを
診察する時は、

なるべくポジティブな
気持ちでいていただけるよう
努めています。

ご家族からの、
「同じ話ばかりする」
「道に迷ってしまった」
「幻覚が見えているようだ」
などの報告や悩みは、
なるべくご本人が
いないところで
お聞きしています。

恐らく、
ご本人にとって
家族が不安の源に
なってしまうことが
一番きついのではないかと
考えているからです。

まず家族を守る大切さ

認知症の患者さんの
記憶や言葉が現実に
「真実」か「偽り」かが
問題ではなく、

患者さんの「世界」を
肯定することで
ご本人も安心し
しあわせに過ごせます。

ただ、そのためには
家族に余裕がないと
なかなか実現が難しいです。

ですので、
頼れるところは
介護サービスに
頼ったり、

個人的には
夜はご本人も睡眠導入剤で
寝ていただいたり、

怒りっぽいとき、
混乱している時は
安定剤を使うなどの方法は
積極的に考えて頂いても
良いのではないかと思います。

これらの症状が
家族を苦しめて
最も疲弊させて
しまうことが多いからです。

まとめ

認知症の患者さんも
生きるために必要な
感情に基づく情報は
忘れにくいようです。

ご本人が穏やかに
過ごせるように、
ネガティブな感情を
出来るだけ減らせると
良いですね。

そのための第一歩は
どうすれば家族の負担を
減らせるかを考えることが
大切だと思います。

最後までお読み頂き、
ありがとうございました😊
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