ゆるゆるカガクの用語集「第二の地球」編
オジさんのカガク2018年7月号
7月2日に「宇宙における生命」を研究するアストロバイオロジーセンターより「第二の地球探しのための系外惑星観測装置IRDが稼働!」というニュースが発表された。
自分探しの旅が流行ったこともあったが、これからは第二の地球探しだ。地球もちょっと住みにくくなってきた。移住先に宇宙なんてどうだろう。
今回は、移住先候補を探すうえで困らないように、キーワードを説明しよう。
まずは、冒頭のニュースにもあるこの言葉から。
けいがいわくせい【系外惑星】
太陽“以外”の恒星を周る惑星のこと、太陽系外惑星。水星、金星、地球、火 星、木星、土星、天王星、海王星以外のこと。最初の系外惑星は1995年に発見さ れた。現在ではほぼ確実と言われる候補を入れると6,000余りある。
ちゅうしんせい【中心星】
惑星が周っている真ん中に有る恒星のこと。太陽系では太陽。中心星が双子の 場合もある。ルーク・スカイウォーカーの故郷、惑星タトゥウィーンのように、 空に浮かぶ二つの太陽が眺望できる。
ほっとじゅぴたー【ホットジュピター】
ジュピターとは木星の事。木星の質量は地球の318 倍。太陽を12年かかって周 る。恒星のすぐ傍を周っているため、高温に熱せられた巨大惑星を、ホットジュ ピターと呼ぶ。
1995年に初めて発見された系外惑星はホットジュピター。恒星を4日で 一周する。近すぎて暑苦しい奴だ。住むには適さない。
えきせんとりっくじゅぴたー【エキセントリックジュピター】
変わった行動をとる巨大惑星の事。巨体なのに極端に細長い楕円軌道で周る。 ハレーすい星のように太陽の間近まで近づいたかと思うと、はるか遠い辺境まで 飛び去る。灼熱と極寒を繰り返す。ここも暮らしにくいかも。
あーす/すーぱーあーす【アース/スーパーアース】
よく効く蚊取り線香ではない。アースとは地球と同じくらいの、スーパーアー スは地球よりちょっと大きめの惑星の事。
はびたぶるぞーん【ハビタブルゾーン】
直訳すれば居住可能な場所。超大雑把に言うと、惑星の表面に水が液体でいら れる(0~100℃)中心星との距離。生物が居る可能性がある。地球はど真ん中に 入るが、火星はぎりぎり。ちなみにオジさんはゾーンのシークレットベースが好 きだ。
はびたぶるわくせい【ハビタブル惑星】
ざっくり言うとハビタブルゾーン内のアースやスーパーアースなど。まだ数十個 しか発見されていない。有力な移住先だ。
せきしょくわいせい【赤色矮星】
赤く弱々しく光る、軽く小さな恒星。放出するエネルギーが小さいのでハビタ ブルゾーンが中心星に近い。惑星を発見しやすく、銀河系にたくさんある。ハビ タブル惑星の発見が期待できる。赤提灯のように親しみを感じるなぁ。
とらんじっとほう【トランジット法】
飛行機の乗り換え方法ではない。系外惑星を探査する方法の一つ。地球から見 て惑星が中心星の前を横切る時、ちょっとだけ光を遮ることになる。恒星の光度 が定期的に変化するかどうかを観測する。
どっぷらーほう【ドップラー法】
救急車のサイレンの音は近づく時は高く聞こえ、遠ざかる時は低くなる。ドップ ラー効果だ。同じように光源の相対速度が変わると色が変わる。惑星が周ってい ると恒星もほんのちょっとふらつき、速度が変わる。変化する色調を観測する。
けいがいわくせいたんさきけぷらー/けぷらーうちゅうぼうえんきょう【系外惑星探査機ケプラー/ケプラー宇宙望遠鏡】
2009年NASAが系外惑星を探すために打ち上げた人工衛星。直径140cmの 反射望遠鏡でトランジット法を使う。系外惑星の大半を発見した。あと数カ月で 燃料が切れる。
ケプラーは、惑星の法則を発見した16~17世紀の大天文学者の名前。
けいがいわくせいたんさえいせいてす【系外惑星探査衛星TESS】
ケプラーの後継機種。今年4月にスペースX社のロケット「ファルコン9」で 打ち上げられた。望遠鏡4台で全天の90%を観測する。特にご近所の赤色矮星を ターゲットとし、トランジット法で解析する。
けいがいわくせいたんさえいせいけおぷす【系外惑星探査衛星CHEOPS】
欧州宇宙機関ESAが年内に打ち上げる予定の探査機。口径32cmの望遠鏡を搭 載する。TESSが天空を広く調べるのに対し、既に惑星があることがわかっている 恒星をトランジット法で詳しく分析する。
すばるぼうえんきょうようしんがたけいがいわくせいたんさそうちあいあーるでー【すばる望遠鏡用新型系外惑星探査装置IRD】
日本も負けていない。冒頭に紹介したニュースの装置。IRDは「赤外線ドップ ラー」の略。国立天文台がハワイのマウナケア山頂に持つ大型望遠鏡すばる、に 取り付ける。赤色矮星に的を絞ってハビタブル惑星を探す。
きょうとだいがく3.8めーとるぼうえんきょうせいめい【京都大学3.8m望遠鏡せいめい】
8月から稼働する国立天文台岡山天体物理観測所内に建造された望遠鏡。平安時 代の陰陽師・天文博士である安倍晴明にちなむ。恒星の光を分析して間接的に惑 星を探すのではなく、直接惑星の光を捉えることを目指す。灯台の脇に居るホタ ルを見るようなものなのだとか。
では、良い物件が見つかることをお祈りいたします。
2018.07.28 や・そね
<参考資料>
プレスリリース
・「第二の地球探しのための新観測装置IRDが稼働!」
2018年7月2日 自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター
書籍
・「系外惑星と太陽系」 井田茂 岩波新書
雑誌
・「系外惑星探索の新時代」 日経サイエンス2018年7月号
・「マイヨール博士が語る系外惑星発見物語」 日経サイエンス2016年4月号
HP
・京都大学
・ウィキペディア「系外惑星」など
<オジさんの科学バックナンバー>
2016年 1月号 世界一のシマシマ
2月号 夢を操る
3月号 指で潰せる最強生物
4月号 腰痛は愛から
5月号 働くオジさん
6月号 鬼門の先
7月号 ネコはおしゃべり
8月号 世界のタムじいさん
9月号 台風七番勝負
10月号 見えてます
11月号 ヒトの脳は大雑把が得意
12月号 謎解きDNA
2017年 1月号 旧石器時代最先端技術博レポート
2月号 がんばれベテルギウス
3月号 ヒトのカラダは倹約上手
4月号 ボクが鳥を恐がるわけ
5月号 恐竜からヤキトリ
6月号 「ハンバーガー」と「かば焼き」
7月号 将棋と脳
8月号 ナノカーなのだ~
9月号 宇宙の「柿の種」問題
10月号 ちいさなさざ波
11月号 カラフルな、ふとん
12月号 お熱いのがお好き
2018年 1月号 13%の不運!
2月号 インフルエンザは、なぜ流行る?
3月号 おイヌさまさまなのだ。
4月号 ネコの人工血液が出来たんだニャ~。
5月号 ミートテックを愛用する方々にジャストミートする諸研究
6月号 下手は伝染る
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