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小説 「私を 想って」

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高校二年生の鮎沢鞠毛(あゆさわ まりも)は自分の名前について悩んでいた。 でも、不器用な性格もあって相談できる友達はいない。   父、正臣(まさおみ)の再婚相手の涼花(りょうか)…
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#ミステリー

私を 想って 第十三話

私を 想って 第十三話

 車は置いてあるが、涼花さんは畑に出ているのか、家の中にはいなかった。
 悪いことをしているわけではないのに、私は忍び足で父の部屋へ向かい扉の前で深呼吸する。この家に引っ越してきてから一度も足を踏み入れたことのない父の部屋。そこに初めて入った。
 父の部屋は小さな机と本棚が一つあるだけだった。
 本棚の中にあの本はなく、夢中になって探していたら、いつの間にか涼花さんが部屋の中にいた。
「鞠毛さん、

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