文化構築ヘッド

強くなるための部活動マネジメント(文化構築編)

※アメブロに書いていた記事を加筆・修正しnoteに移植しました。

1.はじめに

高校での硬式野球、大学でのアメリカンフットボールの経験と、経営工学、経営学の視点を組合せて「人材的、環境的に不利なチームが勝つにはどうするべきか」について考えをまとめて書いています。

大きく5つに分けて考えをまとめています。

①戦術編

キーワード: 環境が不利なチームは環境に恵まれたチームと同じ戦い方をしても勝てない

②練習運営編

キーワード: 練習効果 = 回数 × 1回当たりの質

③システム構築編

キーワード: PDCAサイクルの回転速度と同時回転数を最大化

④文化構築編(今回)

キーワード: PDCAサイクルの1回転当たりの質を最大化

⑤人材獲得編

キーワード: 共感の獲得

主に高校野球の経験は①と②に、大学フットボールの経験は②~⑤に反映されています。
(アメリカンフットボールは戦術について突き詰めて考えるのは当たり前なので、あえて①には入れませんでした。)

【①戦術編】はこちら

【②練習運営編】はこちら

【③システム構築編】はこちら

2.文化構築編本編

システム構築編はPDCAサイクルの回転スピードと同時回転数の最大化のための考え方でしたが、文化構築編もPDCAサイクルと大きく関わってきます。

ここでは勝つために「チーム文化」をどのようにして作り上げていくか、ということを書きます。

まず、チーム文化とは何か、ですがスポーツにおける「組織文化」のことです。

組織文化の定義ですがGLOBIS知見録から引用すると、

《組織文化は、「組織構成員が共有する信念、価値観、行動規範の集合体」と定義できる。組織文化は価値観や行動規範として構成員の行動を規定する。》

とあります。

つまり、チーム文化とは「メンバーが共有する価値観や行動規範」のことです。

ではなぜチーム文化が大切なのか。

それはチーム文化ができていると以下の2つのメリットがあるからです。


・チームが同じ方向に向かって進むことができるため、チームとしてPDCAサイクルを1回転した時の効果が大きくなる。
・選手、スタッフ、コーチの間の信頼関係が増進され、役割分担が促進されるため、チームとして同時に回すPDCAサイクルの数を増やすことができる。

それではチーム文化の作り方、浸透のさせるための方法について例を挙げていきます。

この作り方、浸透のさせ方についてはチームによって千差万別だと思うのであくまで一例だと思っていただければ幸いです。

(1) スローガン
(2) チーム哲学
(3) コミュニケーション
(4) 何を評価するか

の4つについて以下書いていきます。

3.(1) スローガン

チーム文化を作っていくうえでスローガンは重要だと思います。良いスローガンがあると良いチーム文化を築きやすいのではないでしょうか。

スローガンの定義も難しいのですが、個人的にはスポーツにおいて、「自分たちがするべきことを簡潔に表した言葉」であることが望ましい、と思っています。

これは私の好みですがその上で、「動作」に関する言葉、なおかつ「○○することが自分達の誇りである」という捉え方ができて、ありきたりでないものが良いスローガンだと思います。

例えば「Challenge(挑戦)」という言葉は、意味としては非常に良い言葉ですが、スポーツチームのスローガンにするには動作感が少し弱く、ややありきたりな気がします。

「Never give up」も同じく、動作感が弱く、ありきたりな感じがします。

あくまで私の感覚ですので、気を悪くされた方申し訳ございません。

個人的にこれぞスポーツチームのスローガンだと思うのは、清宮克幸監督時代の早稲田大学ラグビー部の「ULTIMATE CLUSH」です。

このスローガンは「早稲田が戦った跡にはぺんぺん草も生えないくらい完膚なきまでに相手を叩きのめす」というメッセージを持っているそうです。

CLUSHという動作感のある言葉で、ULTIMATE CLUSHすることが自分達の誇りになり、ありきたりな感じもしません。

私が大学生4年生の時のスローガンは、「All-out Attack」でした。

これを直訳すると「総攻撃」ですが、「全員で、全力で、全てを出し切って取り組む」というメッセージを込めました。

Attackという動作感があり、誇りにできて、ありきたりでない(B’zに同名の曲があることは秘密笑)ので、個人的には良いスローガンだったなあと思います。

自分自身に自問自答するとき、チームに迷いが生じた時に、このスローガンは道筋を与えてくれる指針になり、チームを同じ方向に向けてくれます

4.(2) チーム哲学

チーム哲学もスローガンと同様に良いチーム文化を築く上で重要な役割を持っています。

チーム哲学はチームが大事にする価値観や行動規範を明文化したものです。

スローガンと違って言葉は自由だと良いと思いますが、何個か列挙して定める場合は統一感があったほうが良いと思います。

例えば私が大学4年生の時は英語で統一して5つを定めていました。
(スローガンに比べてこれは完全に浸透していたとはいえませんでしたが・・・)

1.Enjoy(楽しもう!)
2.Confidence(自信を持とう!)
3.Pride(規律を率先して守ることにプライドを持とう!)
4.Appreciation(支えてくれている全ての人に感謝しよう!)
5.For the team(すべてはチームのために!)

ちなみに前述のスローガンの「All-out Attack」というのはこれら5つ全てを大事にしていこう、という意味も込められていました。

注意点として、スローガンとチーム哲学はみんなで良く意見を出し合い、ぶつけ合って「このチームが大事にしたい価値観は何なのか」をちゃんと意見をまとめた上で決めなければチームとして大事にしたいと思ってもらえないので、しっかりと話し合うことが重要です。

おそらく最初の方は良いカッコをしようとして、耳触りのよい意見ばかり出てくると思いますが、「でもそれは出来てないし、本当に出来るとは思ってないんじゃないの?」という意見が出てきてからが本番です。

建前だけではなく、自分達の弱い所、出来ないところを一人一人さらけ出し、みんなで考えていくことによって、現実感があり、大事にしたいと思うスローガンや哲学が出来上がります。。

5.(3) コミュニケーション

スローガンとチーム哲学で目指すべきチーム文化を明確にしただけでは、チーム文化は浸透しません。

チーム文化を浸透させるのにチーム内のコミュニケーションの活性化は非常に重要です。

ポイントは通常のチーム運営では起こり難いところに強制的にコミュニケーションが発生するような仕組みを作ることだと思います。

コミュニケーションが起こり難いところというのは、例えば上級生と下級生、ポジションの違う選手同士、スタッフと選手などです。

以下2つコミュニケーションを活性化する方法の例を上げます。


1.学年・ポジション横断班
学年やポジションがバラバラになるように班を作って、オフにレクリエーションを企画したり、合宿の食事の席をその班ごとにしたりします。
どうしても同学年、同ポジション間で普段のコミュニケーションが固定化されてしまうのでこのようにすることで普段とは違ったコミュニケーションがチームに生まれます。

2.兄弟子制度
これは学年・ポジション横断班よりはバラバラではないのですが、練習時間外に行われる筋力トレーニングのペアを必ず上級生と下級生になるようにすることによって、上下のコミュニケーションが活性化されます。

6.(4)何を評価するか

チーム文化は「何を良しとして、何をダメとするか」とも言うことができます。

実際にチーム文化が現れる例として、

・○○君って本当にこのチームの模範みたいなことするよね。
・△△君がしてくれたことをもっと皆もやっていこう。

という言葉ではないかと思います。

哲学やスローガンを大事にすることはもちろんですが、それを大事にした行動をチーム内で褒め合う事、または大事にしていない行動をチーム内で叱る事を通じてチーム文化が浸透していきます。

その中で大事なのは、そこには学年やチーム内での立場は関係ないということです。

しっかり定めたチーム哲学に反することを上級生がとったのであれば下級生でも指摘できるような雰囲気が大事です。

逆に言うと、「チーム皆が、上級生も下級生も関係なく、チーム哲学を実現する為に出来ていないことを指摘し合うべき。そしてチーム哲学の模範となる行動を褒め合うべき。」という共通認識がないとチーム文化は構築できない、とも言えます。

何を褒めて何を叱るべきか、チーム文化を浸透するために話し合うべき大事な事項だと思います。

7.さいごに

以上のように、チーム文化をスローガンやチーム哲学として伝えやすく明文化し、チーム内のコミュニケーションを活発化させて浸透させていくことがチーム文化を築く上で重要なことだと考えられます。

以上が強くなるための部活動マネジメント【文化構築編】です。


次回は最終回、人材獲得編となります。

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