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【地方にチャンス有】スポーツ産業拡大にとって超重要事項であるSDGsと社会的インパクト投資

1.はじめに

今年はオリンピックイヤーということもあり、スポーツに注目が集まりやすい状況だと思います。

 そんな状況だからこそ、「スポーツにはこんなことができるんだ」ということをデザインしていきましょう。

さて、"SDGs"という言葉をご存じでしょうか? 

Sustainable Development Goalsの略で「持続可能な開発目標」と訳されています。


貧困の解決、環境問題、人権問題など、その名の通り、地球で人類が持続可能な形で発展していくために達成しなければならない目標が定められています。

現在、ビジネスにおいてSDGsの重要性が非常に高くなっています。

参考: JAPAN SDGs Action Platform 

まだ、スポーツ界ではそれほど大きく捉えられていないように感じますが、これからはSDGsを無視しては事業展開できなくなると思いました。

以下、詳細書いていきます。

2.SDGsとは?

SDGsには番号が振ってあります。

1 貧困をなくそう
2 飢餓をゼロに
3 すべての人に健康と福祉を
4 質の高い教育をみんなに
5 ジェンダー平等を実現しよう
6 安全な水とトイレを世界中に
7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8 働きがいも経済成長も
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
10 人や国の不平等をなくそう
11 住み続けられるまちづくりを
12 つくる責任 つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を
14 海の豊かさを守ろう
15 陸の豊かさも守ろう
16 平和と公正をすべての人に
17 パートナーシップ目標を達成しよう

さらに各項目で詳細の取組が分類されており、番号を振ってあります。

例えば
1 貧困をなくそう
の中には

目標 1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる

1.1
2030 年までに、現在 1 日 1.25 ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。

1.2
2030 年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。

1.3
各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030 年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。

1.4
2030 年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。

1.5
2030 年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。

1.a
あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。

1.b
貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。

と詳細の取り組むべき目標が定められています。

スポーツ庁もスポーツSDGsとして積極的に取り組む姿勢を見せています。
参考:スポーツSDGs


ただ、これまでも「企業の社会的責任(CSR)」や「社会貢献」などといった言葉でこれらの取組は企業や行政がやるべきだという流れはありました。

SDGsが今までと違うのはどの部分なのか?

3.SDGsが重要なのは何故か?

SDGsが凄いのは「国や業種をまたいだ共通言語」となっているということだと思います。

国際的に定められた事項なので、自分たちが取り組んでいるのはSDGsのどの部分なのか、と全てSDGsによって説明できるようになったことです。

例えば三菱商事のホームページを見てみると、以下のように、SDGsと関連付けて取り組みを紹介しています。

ここまでの情報だと、SDGsは取り組みが説明できるようになっただけで、ビジネスに何の影響があるのか見えてこない、という方もいらっしゃるかもしれません。

SDGsがビジネスに与える影響。

それは「事業への投資価値がグローバルに資金提供者へ説明ができるようになり、社会的インパクト投資を呼び込むことができる」ということです。

さらに、現在の「カネ余り」の状態もSDGsの重要性を押し上げています。

4.現在は「カネ余り」の状況、そして社会的インパクト投資の成長

現在は、企業・投資家が資金を投入する対象が無く、余っており、経済が循環していない状況だということです。
参考: 資金循環 ゆがみ拡大 借金、政府に偏在 日米欧企業カネ余り

そのような中、「社会貢献になるのであれば、それほどリターンが大きくなくても投資するべき」という考えで運用される資金が出ているようです。
これは「社会的インパクト投資」と呼ばれています。

GSG国内諮問委員会発行の『社会的インパクト投資拡大に向けた提言書2019(キービジュアル集)』によると、社会的インパクト投資は以下のように定義されています。

社会的インパクト投資とは、社会面・環境面での課題解決を図ると共に、経済的な利益を追求する投資行動の事を指す。

従来、投資は「リスク」と「リターン」という2つの軸により価値判断が下された。これに「インパクト」という3つ目の軸を取り入れた投資、かつ、事業や活動の成果として生じる社会的・環境的な変化や効果を把握し、社会的なリターンと経済的なリターンの双方を両立させることを意図した投資を、社会的インパクト投資と呼ぶ。

社会的インパクト投資の特徴は、社会的な課題解決を目的としていることや、事業や活動を通じて生まれる社会的なインパクトを把握し、価値判断を加える、いわゆる「社会的インパクト評価」を行いながら投資を行うことが特徴である。

社会的インパクト投資は、経済的なリターンが一般的なマーケットレートを上回る、あるいは同程度であるケースもあれば、下回る場合もある。しかし、社会的価値と経済的価値の両立を意図するという意味で、経済的リターンを目的としない寄付や補助、女性、あるいはベンチャーフィランソロピー等の活動とは一線を画す。

上記の提言書によると、社会的インパクト投資は現在、世界で5,020億ドルもの市場規模になっていると試算されています。
日本においても、市場規模は2014年から2018年(3,440億円)には約20倍の増加と試算されています。

このように近年世界で物凄いスピードで成長している社会的インパクト投資を呼び込むためには共通言語として、SDGsによる事業説明が必要となってきています。

SDGsがビジネスにおいて今一大ブームなのも、このような背景が影響していると考えられます。

5.スポーツ界でもSDGsを意識し、スポーツデザインをしていこう

私は、スポーツが持つ力は「教育」「健康」「福祉」「経済」「食」「平和」「平等」「技術革新」など色々なところで活かせると信じています。

でも、そのためには投資が必要です。

日本のスポーツ界自体には資金がありませんので、外部から資金を獲得していく必要があります。

これまで、スポーツ界は既存の事業の延長線上をベースに工夫を重ねていくことが多く成長に限界がありました。
最近はプロスポーツを中心に様々な企業が参入し始めましたが、これは企業からのアプローチがメインのように思われます。

スポーツ業界発展のためにはただ企業からアプローチされるのを待っていてはいけないはず。

また、プロスポーツだけでなく、地域スポーツ、学校スポーツなどあらゆる分野で投資を呼び込んでいくことが必要だと思います。

だからスポーツの持つ力を発揮できる事業に「経済的価値」と「社会的価値」をセットにして投資家や企業に「説明」し、社会的インパクト投資を呼び込むことができる人材がスポーツ界に求められていると感じています。

“スポーツデザイン”はまさにその説明に必要な概念だと思います。

実は日本サッカー協会はすでにSDGsによる説明に取り組んでおり、さすがだなと感じました。下記のリンク先をご覧頂くと、SDGsのボックスと共に説明していることがわかると思います。
参考: JFAのHP 社会貢献活動

6.地方にチャンスあり

社会的インパクト投資を呼び込みやすいのは、社会課題の現場で事業を興す主体だと考えられます。

すなわち、問題が多い地域で事業をする会社。

日本で問題が多いのはどこでしょうか?

地方ではないでしょうか?

例えばSDGsから引用すると、

4.3
2030 年までに、すべての人々が男女の区別なく、手頃な価格で質の高い技術教育、職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。

⇒ 地方には高等教育が少ない。スポーツでは有力校が関東関西に集中。

8.9
2030 年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。

⇒ まさに地方がテーマ。スポーツではスポーツツーリズムがど真ん中。

9.2
包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030 年までに各国の状況に応じて雇用及びGDP に占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。

⇒ 地方の後継者不足は深刻です。

目標 10. 各国内及び各国間の不平等を是正する

⇒ これは地方と中央の格差が全て当てはまります。

11.2
2030 年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。

⇒ 地方がいち早く進む高齢社会への対応が該当します。

11.3
2030 年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。

⇒ 地方がいち早く進む人口減少への対応が該当します。

11.a
各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。

⇒ 地域活性化がテーマ。「繋がり」はスポーツの得意分野。

など、ざっと見ただけでもこれだけ地方に山積みの課題があります。

これらをスポーツでどうやって解決するかという視点に立ったとき、地方の方が地域や自治体と密着して実施できるというメリットも有り、社会的インパクト投資を呼び込むための材料は地方に数多く眠っており、地方にはチャンスがある、とも言えるのではないでしょうか?

7.最後に

スポーツの最大の武器は「社会的価値」がものすごく発揮しやすい事。

スポーツの可能性を信じているみなさん、投資家や企業にとって魅力的なストーリーを描き、スポーツ界に社会的インパクト投資をガンガン引っ張って行きましょう!

さきほど触れましたが、スポーツが誰かに使われるようにデザインすることを「スポーツデザイン」と私が勝手に名付けております。

上記の通り、社会的インパクト投資をスポーツに持ってくるにはスポーツデザインの力が重要だと思っています。

このスポーツデザインの事例を共有し合う場を「スポーツデザイン研究会」というFacebookグループで作っておりますので、ご興味ある方は是非ご覧になり、趣旨に賛同いただける方は参加して頂けると嬉しいです!

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