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小杉湯が福島に行ってみた@会津地方編

こんにちは。小杉湯番頭の石田です。最近はジェット石田と名乗り始めました。

7月11日~7月15日の間、小杉湯のアルバイトメンバー8人は一般社団法人東の食の会の木村さんに案内され、福島の生産者さんに挨拶周りに行ってきました。

この記事では、小杉湯のお客様にその様子を伝えていこうと考えています。

小杉湯が福島に行ったわけ

バイトをしてきた私が言いますが、小杉湯は結構変わった銭湯です。今までシトラバやウシータといった高円寺のお店とコラボをしてきたり、宝山酒造や山燕庵(米農家)といった地方の方々とコラボをし、生産者さんがやむなく廃棄せざるを得ない「もったいない」ものを風呂に入れてきました。そのおかげでレモン、コーヒー、酒かす、米ぬか、イチゴミルクといった様々なバリエーションのお風呂を楽しめるようになっていました。

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しかし、小杉湯の社員、アルバイトメンバーのほとんどがこの生産者さんがどんな思いでものを作っているのかがいまいち他人事のように思えました。理由は単純で、生産者さんたちに直接会いにいけるケースが少ないからです。会いに行こうと思っても、もっと重要度の高い日々の業務をやらなければいけず、社員だけではそこまで手が回らない。北は北海道、南は沖縄まで、いろんな場所でお風呂のもとを提供してくださっている生産者さんがいますが、その中で直接会いに行った生産者さんは数少ないです。

その結果、私自身、小杉湯で働いているのにも関わらず、もったいない風呂がどこか他人事になってしまったと思っています。番頭のシフトに入っていると、きっと良いものなのだろうけどよくわからないものが番台前に売っているし、よくわからないものを入浴剤で入れている。お客さまの中にもきっと、「ちょっとわからないけど、小杉湯すごいことやっているな」と引いてしまっている方もいるかもしれません。

今年の5月ぐらい、小杉湯でインターンシップをやらないかという話が出てきたとき、誰かが「常連さんを置いていかない。そういうことをこの機会にしたい」と言いました。生産者さんがどういう方か、このお風呂がどうしてもったいない風呂になってしまうのか、お客様に深く説明できませんでした。

だったら、小杉湯で働いていて、時間がたくさんある大学生アルバイトが代わりに現地に行って、生産者さんに直接会う。生産者さんの様子をお客様にお伝えするのが必要不可欠ではないのだろうかという話になりました。そしてまず最初に、1,2か月に一回ほどコラボさせてもらっているふくしまプライドの湯で協力していただいている生産者さんに会いに行こうかという話になりました。

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福島に行くアルバイトメンバーの名前を、私たちはわかりやすいように「BUKUBUKU(ぶくぶく)」と名付けました。小杉湯のあつ湯のように、ぶくぶく沸騰し、熱をもって活動する学生チームです。インターンと名乗るは偉そうなのでやめました。

ふくしまプライドって何だよ

今これを読んでいただいているお客様にも、これを書いているうえでも疑問として考えているのは、「ふくしまプライドって何だよ」ということです。

小杉湯ではたびたび、ふくしまプライドの湯というコラボ風呂を行っていました。福島県の農家からトマトや米ぬか、薬草茶を送ってもらってそれをお風呂に入れたり、福島県で作られた地酒やトマトジュースを番台前で販売していました。

チームふくしまプライドとは、福島の食をつくる人と、食べる人をつなぐファンクラブです。生産者さんのストーリーやこだわりに迫るインタビュー記事を作成したり、旬の産地情報の発信、イベントで直接触れ合っていただく機会を設け、ふくしまの食の魅力と、プライドをもって品質に命をかける生産者さんの魅力を伝えようとする団体です。

ふくしまプライドを持った生産者さんを応援したい。彼らのふくしまプライドとは一体どういうものなのだろうか。私たち大学生はこれらを求め、旅に出かけました。

案内人・東の食の会の木村さんについて

私たち小杉湯大学生アルバイトは福島の農家さんと直接コネクションを持っているわけでは当然なく、誰か案内してくださる人が必要でした。そこで小杉湯三代目の佑介さんは、いつも小杉湯×ふくしまプライドのコラボイベントを企画・運営してくださっている、木村さんという方を紹介してくれました。

木村さんという方は東の食の会の事務局代表でした。東の食の会というのは、福島を含む東日本の食の復興と創造を目指して活動する団体です。いろいろな生産者さんと直接会い、東北のために新しい商品開発をしたり、食育事業をしたりしています。

食の復興を担当するプロフェッショナルが今回の旅を案内してくれることになりました。これから東の食の会に案内され会いに行った福島の農家さんのこと、その記録を残していきます。

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一日目は前泊で寝るだけ、二日目は会津地方の農家さんやお店を回り、岳温泉で宿泊。三日目から中通り地方を回り、浪江の民宿で泊まりました。四日目は浜通り地方を回り、途中で浪江町の震災の爪痕を見たりして帰りました。

見学先① アスパラの葉は食べれます!エガワコントラクター

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一つ目の見学先は、喜多方にあるエガワコントラクターという農業や耕作放棄地の整備を行う会社でした。会津の山々に囲まれ、高い丘の上に広がっているアスパラ畑に招待され、サフランの球根をいじりながら代表の江川さんはたくさんのことを語ってくれました。

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もともと江川さんのお父さんは農業用の重機を取りそろえ、田畑を整備する会社を経営していました。耕作放棄地の問題にも取り組んでおり、江川さんが後を継ぎ仕事をしました。

「そもそもなんで耕作放棄地が発生するかというと、若者が農家が魅力的な仕事だと思っていないからです」

耕作放棄地は農家さんが高齢になったり跡継ぎがいなくなったりして、管理者がいなくなった土地のことを言います。耕作放棄地はほおっておけば草が生えて根を張り、管理ができなくなってしまいます。江川さんが耕作放棄地問題に取り組む中で、まずは自分たちが魅力的な農家になれば、耕作放棄地も減って、地域が活性化するのではないのだろうか。そう考えて農業をはじめ、facebookやInstagramといったSNSやホームページをこだわりぬいたり、バイトメンバーが楽しく働けるような工夫をたくさんしました。

「夏は毎日働かなければいけないけど、バイトの若い子たちが楽しそうに来てくれて、仕事が本当に楽しかった」

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農家としてのエガワコントラクターは、アスパラやサフランを有機農業で栽培しています。サフランは、パエリアとかに入っている色を付けるものですが、市販のものを使うよりも香りが違うといいます。個人向けにホームぺージでも販売しており、一度告知したらあっという間に売り切れてしまうそうです。

「飲食店との取引はやっぱり顔が見えたり、感想をもらえたりするから好きだね。東京も地元も、両方大事」

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江川さんの説明が終わると、アスパラ畑を見せてくれました。アスパラの旬は春と夏で、春の収穫が終わると、アスパラは葉を生い茂らせ、夏の間はその生い茂る葉っぱの根元から生え始めます。江川さんは私たちに、生えて間もないぐらい細いアスパラを食べさせてくれました。

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「青空レストランみたいに『うまい!』って反応しなきゃいけないのかな」

BUKUBUKUメンバーは行く途中の車の中でそんな話をしていました。野菜単品にそんなに感動できるのかという疑問が尽きませんでした。またアスパラは普通、火を入れる固い野菜です。私はよくアスパラをベーコン巻きにして焼いて食べます。生で食べたら固そう………。

しかし、期待はいい意味で裏切られました。いつもスーパーで食べるものよりも筋が柔らかい。噛むたびにアスパラの甘みがぎゅっとあふれ出し、さわやかなみずみずしさが寝起きの口の中を浄化し、幸せで満たしてくれました。

「やば、うま!」

感動した我々は「草って食べれますか?」と聞き、普通は食べない草まで食べる始末。草もアスパラの味がしました。うまい。江川さんや案内人の木村さんは我々の感動に若干引いていましたが、福島の農家の作る野菜はおいしいし、料理人がこれを選ぶのも当然だろうなと思わされました。

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見学先② 本当の人参を守りたい!清水薬草店

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清水薬草店は、福島で唯一漢方薬を販売し、漢方薬を製造している会社です。こちらも喜多方にあります。小杉湯では以前、このお店で生産されたオリジナル健康茶を試飲・販売していました。お風呂にも入れており、私はふくしまプライドの中で一番香り高く好きな風呂でした。

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案内してくれたのは、次期代表になる予定の清水さん(上の写真:お兄さん)。店舗と漢方の製造工場を案内してくれました。小さい頃は薬剤師の母が薬を販売していた店舗の上で、社員さんとともに薬の選別をしたり、作業をしたりして育ったそうです。店舗では私たちより先にお客様がいて、やさしいお薬を求めているお客様がたくさんいるのだと感じさせれました。

店舗とは別の場所にある工場に着くと、漢方の香り高さがそこら中の空気を満たしていました。清水さんはいろいろな薬草を紹介してくれました。

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これはかきどおしという薬草。喜多方でも南のほうの山あいで生産されている薬草になります。癇癪や糖尿病に効くそうです。

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こちらはホウバミソという薬木(やくぼく)。こちらも喜多方で育てられている木です。震災の原発事故の影響で、このホウバミソを注文があって十トン倉庫に貯めていましたが、放射能にさらされてすべてを捨てなければいけないことになってしまいました。放射能の数値を減らす努力をし、0に近い数字をたたき出していますが、風評被害でいまだに買われないこともあるといいます。

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これは會津人蔘というおたね人参(高麗人参)です。おたね人参は白いです。会津若松産で江戸時代から生産されてきた人参で、薬用・食用両方使われてきました。ちなみに普段口にしているオレンジ色の人参はこのおたね人参の後から来た野菜で、おたね人参のようだから「セリニンジン」と呼ばれ次第にオレンジ色の人参が「ニンジン」と呼ばれてくるようになったそうです。

しかし、平成に入ると価格の下落や後継者不足などの問題で、会津人参の生産をやめる農家が増えました。清水薬草店では、ずっと続いていた會津人蔘を守りたいという思いから、解散した會津人蔘農協を買い取って栽培を自ら担ったり、講演を開いたりしています。

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見学先③ 野望高きヒューマン・忠藤農業

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三番目に訪れたのは、忠藤農業という豪農・忠保(ただやす)さんでした。彼の野望は会津若松市を忠保市に変えると豪語している通り、会津で一番ぐらい広い土地を持ち、すべてを効率よく管理する経営者でした。米や野菜を満遍なく育て、質の良さを担保しているまさに豪農。スーパーに出る時期とずらして販売する野菜もあり、稼ぎをしっかり意識して効率よく育てていました。

「(ネギの植えてあるハウスを指して)これ一棟150万円ぐらいすんだけど、七年ぐらいで対応年数終わるから、年間20万円ぐらいかかるわけだ。それをどうしたらいいかなって考えて。ネギを作るためのハウスだからこれ自体の売り上げはそんなないんだよね。ネギは手間がかからないけど、トマトは手間がかかるし、忙しくなるから、それ以外の時期に生産できるほうがいいから、冬場用に作っている」

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忠藤さんにはトマトを食べさせてもらったり、きゅうりを食べさせてもらいました!手間がかかると言っていたトマトも甘さがダイレクトに伝わってきておいしかったし、きゅうりも噛み応えがあって非常においしかったです。また、トロネギというめちゃくちゃ甘くておいしいネギを使った味噌も忠藤農業は販売しており、トロネギ味噌をつけたきゅうりは絶品でした。凝っていないダイレクトに欲求に訴えてくるようなうまみ。素敵。このトロネギでそれこそ青空レストランに出演した時もありましたが、それを踏まえたうえで忠保さんはこう言っていました。

「メディアとか関係ないから。たくさん作っていればいい。たくさん作ってたくさん回す。それが一番大事」

か、かっこいい………!

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これで会津地方編は終了です。我々は車で岳温泉に向かいました。次は中通り編!

(※事前のPCR検査にて陰性を確認した上参加しています。)

(文責:石田美月、写真・イラスト:松田大成)

※きゅうりにはあまりにも噛み応えがあって、同行者の深夜清掃スタッフ・荒波さんのつけ歯が取れました。中通り地方に向かう前、BUKUBUKU一同は歯医者に向かう羽目に………(笑)

食べ物ログ

見学以外で食べた食べ物を軽く紹介します。

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福島に食べて最初に食べたのが、この喜多方ラーメン。朝ラー文化があり、朝の9時から香福というお店のラーメンを口に突っ込むことに。チャーシューほろほろほどよく溶けて、寝起きの体に沁みました。

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鶴ヶ城の目の前にある、会津葵シルクロード文明館でのランチ。サンドウィッチとカステアン。

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そばソフト。

参考リンク

・チームふくしまプライド(https://team-fukushima-pride.com/

・東の食の会(https://www.higashi-no-shoku-no-kai.jp/

・エガワコントラクター(https://www.egawacontractor.com/about/

・清水薬草店(http://www.aizuninjin.jp/

・忠藤農業(https://www.tsukijiichiba.com/user/collection/437







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