フランスでデモに参加してみたーManifestation contre la réforme des retraitesー
突然ですが、皆さんはフランスと聞いて何を思い浮かべるでしょうか。バゲット、エッフェル塔、美術館、ファッション、、、そんなところでしょうか?もちろん、これらもフランスを構成している文化の一部ではありますが、留学している身からすると、最もフランス的だなと感じるものは、デモやストライキです。
皆さんの記憶に新しいのは、2018年の燃料税引き上げ反対を求めたGilet jaune(黄色いベスト運動)でしょう。そして、今年の1月からも、政府のRéforme des retraites(年金改革)に対する100万人規模のデモが、週一くらいの頻度で行われています。今日で5回目でした。
そして実は今日(2/16木曜日)、そのデモ行進に行ってきました!デモに参加することは、フランス留学中にやっておきたいことの一つだったので、叶って嬉しいです。在フランス日本国大使館の方からも、毎回メールで警告が届いていたり、ケガ人が出る恐れがあったり、と少し危険なイメージを持っていたのですが、実際参加してみると、かなり楽しかったです。
デモに際してパリで起こること
私がフランスで大学生として生活している中で、デモによって迷惑を被ることがいくつかあるので、まずはそれについて紹介していきます。(フランスの他の地域についてはあまり知らないのでパリの場合の話です)
交通機関に支障が出る
パリ付近の地下鉄やバス等を統括しているRATPという交通会社の職員がデモに参加するため、その日は、電車の本数が少なくなったり、最悪の場合運行が停止したりします。パリ観光をする人も、このことはちゃんと知っておいた方がいいと思います。
デモの日時は、前もってSyndicat(労働組合)の方で予告されているため、RATPのサイトを見ればその日にどの電車に影響が出るのかを予め確認することができます。いきなり交通手段がなくなるということはないので、その辺はありがたいですね笑
今回のような国民全体を巻き込んだ大規模なデモ以外にも、RATPの労働者が独自で賃金引き上げを求めるストライキを起こすこともあるので、交通手段に支障が出ることは、よくあります。パリでは、地下鉄は日付を超えても動いていますし、バスも1日動いているところもあるので、いっぱい働いてるしまあしょうがないよね、なんて個人的には思います。
授業がなくなる
今日の場合は、大学自体が閉鎖されました(大学側での判断)。大規模なデモが行われる際には、学生が運動の一環として、大学の一部を閉鎖することがあります。今回の大学側の判断の本当の理由はよく分かりませんが、おそらく学生と教授間でのトラブルを防ぐためなのだと思います。ナント(Nantes)大学では、水曜日から学生によって大学の一部が閉鎖されていたようです。
今回のように、大学側が自ら大学の閉鎖を宣言することはなかなかないです。でも、大学から少し遠いところに住んでいる先生が、電車の運行停止の影響で通勤できず、授業がなくなる、ということはよくあります。高校留学の時には、先生がデモに参加するから、という理由で授業がなくなることも多々ありました笑
最近は、zoomで授業を行うこともできますが、なぜか私の周りの先生はやらない人が多いです。今日も本当は授業があってzoomで行えたはずですが、先生の子供が通っている保育園が閉鎖され、子供の世話をしなければならなくなったという理由で、授業が完全に無くなりました笑
今回のデモの要因は?
前述の通り、今回のデモでフランス人が求めているのは、政府の年金改革案の取り消しです。
フランスの年金制度は複雑で、いくつか記事を読んでもなかなか理解し難いのですが、周りのフランス人意見を聞いていると、主な争点は2つあります。
まず一つは、年金の受給を開始できる年齢が62歳から64歳に引き上げられること。
1月10日に、Élisabeth Borne首相(フランスには首相と大統領の両方がいます)が、年金の受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げることを柱とする年金制度改革案を発表しました。2023年9月から毎年3カ月ずつ引き上げ、最終的には2030年に64歳にするという計画です。
仕事を終えた老後の生活を楽しみにしている多くのフランス人はこの改革に大反対しています。あわよくば60歳からの受給開始を求めています(ワガママすぎ笑)。原則65歳から年金を貰える日本で育った私からすれば、64歳でも早い方だと思ってしまう。
そしてもう一つは、年金の満額受給のためには、43年間働くことが義務付けられること(現在は41年6ヶ月)。元々は2035年までに段階的に引き上げられることになっていましたが、この施行が今回の改革案によって、2027年に前倒しされようとしています。それに加えて、18歳未満で就労を開始した者が満額受給を得るためには、プラス1年の44年間の就労が必要になる、という改革も。
フランスでは、大学に通っていてもAlternanceの制度を取って仕事をしていれば、年金を既に払うことになるため、これに当てはまる若者は割と多いです。フランスでは飛び級する人も少なくなく、他の人より若い年齢で大学に入る人もいるので尚更です。
AlternanceとStageについては、前の投稿を参考にしてみてください。
普通に大学に通って、大学院に行って勉強をした後に、就職するということを考えると、年金の満額受給はかなり厳しいと思います。
高校留学の時のホストファザーは、就労期間を増やす変わりに、少ない期間で一度に多く年金を納める制度の方がいいのに!って言ってました。改革するのはいいけれど、その改革のやり方が気に入らない、という考え方の人が多いです。
そして日本の年金制度との1番の違いは、何歳から年金を納めると決められている訳ではなく、就労を始めた時点から年金を納めるということ。日本では、大学生だと安定した収入がないので、しばらくは親御さんに年金を納めてもらう人が多いと思いますが、フランスでは、最初から全部自分自身で納めるみたいですね!
実際にデモに参加してみて
今日は元々授業があり、大学が閉鎖になってもzoomで行われると思っていたので、デモに行く予定はなかったのですが、急遽zoom授業もなくなったので、思い立って行ってみました。
今回のデモ行進では、Place de la BastilleからPlace d’Italieまで約3キロ歩きました。
私の通っているソルボンヌ大学にも、Syndicatの団体があり、大学メール内での呼びかけがあったので(前の写真のメール)、そこに合流しようと思っていたのですが、Bastilleの駅を出てブラブラしていたら、他に面白そうな団体を見つけてしまったので、その団体について行く事にしました。
attac(Association pour la taxation des transactions financières et pour l’action citoyenne)という1998年に発足した団体。その名の通り、金融関係の改革運動をする団体です。マクロン大統領は、主に高所得者層や経済界からの支持が厚く、ブルジョワ旋風が強いので、年金改革抜きにしても、反Macroniste(反マクロン派)が多かったです。また、フェミニズム運動も活発に行っているようです。
デモ中に、服やバッグに貼る用のステッカーがたくさん支給されました。割と可愛いかったので、ほとんどは貼らずに記念品として取っておいてます笑
その他にも、缶バッチや、この団体に参加していることが分かるように、赤いバンダナも貰いました。
あとは、反Réforme des retraites用の替え歌も何曲かあって、それを歌いながら(振り付き)、練り歩きました。だから、普通に楽しかった笑
デモ行進の途中では、特別ゲストとしてBernard Arnault(フランスの大富豪、LVMHグループの代表取締役でマクロンと仲良し)の仮装をした人が出てきて、札束(もちろんニセモノ)がばら撒かれたり、
こんな感じでチョークで道路に、年金改革に対する愚痴を書いたり、色々しました。前のデモの時には、Assemblée Nationale(国民議会)の門のところで、チョークで落書きをした人がいたらしく、そのうちの何人かが捕まったらしい笑
14:00にBastilleをスタートして、ゴール地点のPlace d’Italieに着いたのは17:00頃。ゴール地点では、最後に、替え歌に合わせてダンスしました。
帰ってきて、ネットの記事を見たら、今日はフランス全体で130万人もの人たちがデモに参加していたらしい。年金改革に関する運動とはいえ、年齢層は40-50代だけに偏らず、若者もかなり多かったです。
参加する前は、フランス政治のことちゃんと分かっていないとダメなのかなと思っていたけれど、全くそんなことはなく、ただただ歌って踊っているだけであっという間に時間が過ぎました。これくらい楽しかったら、そりゃあ参加する人も増えるわなぁ。(でも実際は銃声も何回か鳴っていたから怖いっちゃ怖かった)
日本ではなかなかできない大規模デモに参加するという経験。自分の意見を主張し行動に移すフランス人が素敵だな、と改めて感じた1日でした。また次用事がなかったら、絶対参加する!
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