また会えるかな。
「なんかさ、世界中のみんながこの世から消えちゃって、あたしらだけ生き残ってるみたい」
女は呟く。夕陽で紅く染まった両手で、足元の砂を救いあげながら。
「そんな気分だよ」
男は答える。骨張った手の甲で、額を汗をぬぐいながら。
「穴場のビーチと聞いてはるばるやってきたら、人影一人見えやしない。なんとタダで貸し切りとはな」
「『地元の人しか知らない秘境のビーチ』なんてSNSには書いてあったよね」
「このあたりの寂れ具合からして、もう地元の人すらいないんじゃないか?」
男は目の前に盛られた円錐状の砂山の斜面を、汗ばんだ掌で撫でまわした。
向日葵がところどころに咲く、高く生い茂った草原。それが幕となって世界から隠されているかのように、その小さな砂浜はあった。乾いた浜の砂は白く、一方で海水で湿りココア色に染まった砂の上を歩くと、振動でキュッキュッと小動物の鳴き声の如き音を鳴らすのだった。保養目的に遠方からはるばるそこを訪れた女と男は、波際から離れた場所にサンダルと荷物を置き、裸足で砂の感触を感じながら、海と戯れることを楽しんでいたのだった。
日中、浜辺に足を踏み入れた時にはサファイアのごとく青かった天空は、遊ぶ間に忘れた時の流れの悪戯によって、水平線の下へと沈み始めた太陽と、その光を通す大気の悪戯によって、オレンジ色に染まっていた。
「記念に砂のお城を作って、帰ろう」
女のその一言がきっかけとなり、二人は砂浜の上で向かい合い幼子の頃に還ったような様子で、砂遊びに興じていたのだった。
「お城」は二人の手先の技術面で困難と判断され、シンプルな造形の砂山に計画変更となるまで、そう時間はかからなかった。
女は、砂の山の斜面をそっと人差し指でなぞると、クスッと笑って言った。
「……そもそも、SNSに書かれた時点で『秘境のビーチ』じゃないよね。全世界に発信されてるし」
浜の上にしゃがむ二人のそばには、沖から細波が幾度となく押し寄せ、もろく砕けては砂浜を撫でながら引き、音を鳴らす。その音はわずかな変調を加えながら反復し、大気を揺らしていた。
ループする波の音の合間を塗って、男は返した。
「他人の反応を集めたいんだろ。それには強い言葉が必要な時もある。情報が飽和したこの時代、本当の秘境なんてまずないのにな」
「でもその人のおかげで、あたしらバカンス気分をタンノーできてるから」
「感謝だな。書いた奴に。そいつも先週あたり、ここで貸し切り楽しんでたのかもな」
潮の匂いと熱気が充満する、夏の夕刻の大気が、波の音で揺さぶられる。
男はふと砂山から顔を上げ、海が描く水平線の上に浮かぶ夕陽へと、視線を移した。世界の色彩を紅く染める光源である恒星を、恍惚をにじませた表情で見つめながら呟いた。
「……でもここはいいところだ。店も宿もない、人から捨てられた、この世の果てみたいなところだよ。けど、人類みんなが来るべきビーチさ」
波の音が響く。男の言葉に相槌を打つかのように。
わずかな静寂。女が口を開く。
「なんか、さ」
夕陽に見惚れる男の横顔を上目遣いで一瞥し、砂の山に視線を戻す。女は続ける。
「この場所、はじめて来たのに、とっても懐かしい感じがする」
潮の匂いを含んだ風が、女の髪の毛を揺らす。ほぐされて宙に舞うその毛先は夕陽の光を浴び、大気の中に溶け込んでいくかのように、眩く輝いた。
両手で砂を掬いながら、女は言った。
「なんかね、いつの日か一緒にここに来て、こうして遊んでた気がするの。あんたと。」
聞いた男はゆっくりと振り向くと、訝しさを含めた声色で聞いた。
「デジャブか?」
男は硬直した筋肉をほぐすためか、首をコクンと、銃のトリガーを押すように一度傾け、言った。
「言うまでもなく、オレたちはここに来たのは初めてだろ」
「うん」
「一緒に浜で砂遊びをするのも初めてだろ」
「うん」
「そして、一緒に海に来るのも初めてだろ。俺たちの住んでるところから、海は遠い」
「うん」
うつむいて砂山を撫でながら、女はそっけなく答える。
男は女から身体を背け、砂の上に尻餅をつき、海の方へと両脚を投げ出した。目の前に広がる大海原の夕景を眺めながら、男は問いかけた。
「……いつか海に来た記憶、砂遊びをした記憶、あるだろ?」
「あるよ。海は一度だけ。砂遊びはしょっちゅう。どっちも、子供の頃だけど」
「あるだろ」
「ある」
「それらの記憶の断片が混じり合って、『前にもこんなことをした気がする』ってニセの記憶を脳が作りあげるんだよ。それがデジャブさ。ここから見える景色、音、光、匂いに反応して、今おまえはデジャブを見せられている」
「うん。……あのね、デジャブくらい知ってるよ」
女は掬った砂を、さらさらと砂山の頂点にかけながら答えた。
「デジャブ知ってるし、あたしも何度も体験してるよ。でもさ、もしかしたら、今回の感じてるのはね、ちがうヤツかもしれない」
男は女の方を振り向き、光で紅く染まる顔を見つめた。女は砂山の表面を愛撫する手をゆっくりと静止させ、呟いた。
「できあがり」
女は衣服の胸元のポケットをまさぐり始めると、やがてやわらかな指で、一枚の白い貝殻を取り出した。それを目元に近づけじっと見つめると、手前に作られた砂山の頂に、そっと置いたのだった。貝殻の表面は夕陽に照らされ、黄金色に光った。
女は男の方を向く。互いの瞳孔から発射される視線がぶつかる。女は問いかける。
「ねえ、エイエンカイキって言葉、知ってる?」
また細波の音が響き、消える。
「エイエンカイキ」という単語のありかを探るため、脳内の記憶の海の中を泳ぎ、数秒のタイムで陸に上がった男は答えた。
「知らない」
女の唇が、軟体動物のように蠢く。言葉が続く。
「ニーチェっていう哲学者が考えた言葉なの。考えたっていうか、発見したっていうか」
「ニーチェなら知ってるよ。名前だけ」
男は女の方へと身体を向け直し、あぐらをかいた。裸足の足の裏には、無数の砂が、寄生するようにこびりついている。
二人は再び向かい合う。女の唇が、また蠢く。
「あのね。この世界、つまり宇宙の時間ってエイエンに流れていて、終わりがないの。エイエンで、ムゲンなの。ずっとずっと、死なずに、流れているの。でも、たとえばあたしたちみたいな生き物とか、リンゴみたいな食べ物とか、この砂浜とか、あの夕焼けの太陽も、ブッシツとして限りがあるわけで、これらはエイエンではないわけ」
「ああ。それで?」
「エイエンじゃない、限りのあるモノって、その組み合わせにも限りがあるでしょ。ムゲンじゃないわけでしょ。でも、時間はエイエンに流れてる。だから、エイエンに時間が流れる宇宙の器の中で、エイエンじゃないモノが組み合わさって起こる出来事が、ずっと、ずっと何回も同じように繰り返されているの」
「ああ。それで?」
「だからね。あたしたちがこの砂浜で、一緒に夕焼けを見ながら、砂の山を作って遊んでいたことも、今まで何度も何度も起きていて、これからも何度も何度も起きるってことなの。ずっとずっと。これを、エイエンカイキって呼ぶの」
「ああ。あのさ」
会話のリズムにスタッカートを打つかのように、男はしばし沈黙し、口を開いた。
「その理論が成り立つためには、おれたちが生まれる前に、全く同じオレたちが存在してなきゃいけないだろ」
「いたんだよ」
「じゃあ聞くぞ。姿も形も、名前も、今交わしている会話の一言一言まで、全く同じオレたちがここにいたのか?」
「いたんだよ。時はエイエンだもの」
「そんなの、一体誰がどうやって証明できる?ニーチェか?」
「ショウメイできないよ。ニーチェもただ言ってみただけ」
男はヒュウッと口笛を吹くと、肩をすくめ、悪戯顔で笑った。
「それじゃあ、理論として破綻してるだろ」
女は真顔のまま、返した。
「うん。……あのね、別にカガクとかリロンとかそういのじゃないの、これは。ニーチェがとつぜん発見した、ひとつのセカイカンなの。あとは聞いた人が信じるか、信じないかの問題なの」
「信じるか、信じないかの問題?それじゃ、もう宗教だろ」
「そうかも。でも、それでいいんだよ。ニーチェはね、アルプスの山の中にいる時に、突然このセカイカンを発見したんだって」
男はため息をつき、汗に食われた首の裏を掻きながら答えた。
「アルプスってのは危ないところだな。そもそも、哲学の知識なんてなさそうなおまえが、なんでそんな言葉を知ってる?」
「哲学好きな友達がいてさ。こないだ一緒にごはん食べた時に教えてもらったんだよ。『ところで、永遠回帰って概念があってね……』って」
スプーンで口元に食べ物を運ぶジャスチャーをしながら、女は言うのだった。
「そうか。おまえって、自分はチャランポランな学力のくせに、インテリな友達がいるんだな」
「ヒトはね、ちがうモノどうし、ひかれ合うの」
「だとすると、オレは又聞きの又聞きでエイエンカイキを説明されたわけだろ?ほんとにニーチェが実際に言った説と合ってるのか?」
「わかんない。でもだいたいこんな感じの話のはず」
言葉を交わす二人の横顔を夕陽が照らす。時は進み、広がる天空も大気のフィルターを通して届く太陽の光も、その色彩の濃度を増しつつあった。
「かつて同じ場所に同じオレたちがいた、って言うけどさ。」
男は片手で浜の砂をまさぐりながら、もう一方の手で衣服の胸元ポケットから電子端末を取り出すと、女にそれを見せて問いかけた。
「このスマートフォンまで持ってたのか?これがあるのは今の時代だけだろ」
「うん。そのね、この時の流れの中で、ジンルイの歴史も、何度も繰り返されてるの」
「歴史が?何度も?」
「何度も。この地球は何度も滅びて、何度も生まれてるの。だから過去にも未来にも、同じスマートフォンを持つあんたがいたし、これからも、いるの」
男はまたため息をつく。
「……そんなことあるか?」
「あるかもしれないの。時はムゲンだから。あたしらを包み込む、この宇宙はね」
女はまるでビーチボールを抱えるような仕草で、両手を胸の前に差し出した。そしてどんどん膨らんでいくビーチボールの輪郭をなぞるかのように、腕を少しずつ広げながら言った。
「宇宙は、息を吹き入れた風船みたいに、どんどんボウチョウして、ふくれ上がっているの。今、こうして話している間も」
「誰が膨らましてるんだ?」
「神さま。ゲンミツに言うとね、いろんなエネルギーやブッシツが作用してふくらんでいるらしいんだけど、細かいことは忘れちゃった」
「物理法則が働いているなら、神様の仕業じゃないだろ」
「よくわかんない力だから、まとめて神さまのせいってことにしてる、あたしは。でね、もともと何もない世界から、小さな点みたいな宇宙が生まれて、それがふくらんで今の宇宙になってるの」
「おまえの考え方を借りるなら、神が宇宙を創った、と言えるね」
男はしかめっ面でスマートフォンをポケットにしまいこむと、親指で耳の裏をひとかきした。そして、女が砂山の頂に供えた貝殻を指して言った。
「この貝殻も、神様へのお供え物かい?」
「ううん」
女は首を振る。
「砂山が完成したから、仕上げに置いただけ。もともとはお城の予定だったでしょ」
「旗みたいなもんか。でも、ただの山よりマシだ」
「でしょ、あたしはね、神さまっているかもしれないと思うけど、そんなにソンケイしてない。便利な言葉だから使ってるだけ。でね、話の続きだけど、宇宙が風船みたいにふくらみ続けて、ゲンカイに達するとね」
女は両腕を思いっきり広げたポーズで、言った。
『今度はどんどん、しぼんでいくの」
そして胸の前へと両腕を近づけ、手指で空気を包み、丸めるかのようなジャスチャーをした。
目前に押し寄せる細波の音は、段々とそのボリュームを増していた。それは、潮が満ちていく過程であり、波際が二人の方へと近づいてきていることを意味していた。
「しぼむのか。本当に風船みたいだな」
男はほくそ笑んで返す。女は腕を下ろし、片手の人差し指で砂山の表面を撫でながら言った。
「そう。どんどんしぼんで、時計の針がぐるぐる逆さに回転するように、時も一緒に巻き戻るの。そして宇宙は、最初にあった点へともどるの」
「……それも哲学好きな友達から教えてもらったのか?」
「ううん。また別の、天文学好きな友達。一緒に腕時計を買いにいった帰りに教えてくれたの」
「友達に恵まれてるな。……それで?宇宙が最初の点に戻って、1からまたやり直し?」
「そう。宇宙がまた最初からはじまって、地球もまた誕生して、あたしも、あんたもまた誕生して、またこの場所に来る。そうしてエイエンカイキが起こるの。その宇宙も終わると、また最初から巻き戻って、またエイエンカイキが繰り返すの」
「ニーチェは天文学にも詳しかったわけか?」
「ううん、あたしがエイエンカイキの話と、さっきの天文学の話を勝手にまぜて考えたの」
「勝手だな」
あぐらに肘を乗せ、頬杖をつきながら、男は静かに呟いた。
その腕についた汗が、やわらかい夕陽の光に照らされ、鈍くも、官能的に光る。
「でもね、つまりそういうことだと思うの」
「たとえおまえ流のエイコウカイキの説通り、宇宙の誕生が、繰り返されているとしてもだ」
男は手元の砂をまさぐり、掴み、頭上の高さまで握った拳をあげると、ほどいた。さーっと音をたてながら、砂が浜の上へと舞い降りる。
「そんな、何もかも全く同じ世界なんて、できるのかね。そもそも時が最初に戻るなら、時の流れは永遠とは言えないんじゃないか?リセットして、やり直しになるわけだろ。ストップウォッチの数値が、0の列に戻るように」
「ちがうの。時が0時に戻っても、カレンダーの日付が変わるように、次の宇宙の1日がはじまるの。時は戻っているようで、実は進んでいるの」
「じゃあ、1日1日ちがうんじゃないか?何もかも全く同じ1日なんて、ないだろ」
「ないと思うけど、日によってはあるかもしれない」
聞いた男は背筋を反らし、フウッ、とため息を空中にばらまいた。
「おまえ、勝手だし、いいかげんだな」
男の罵詈に表情一つ変えないまま、女は砂山の頂に置いた貝殻を指差し、言った。
「この貝殻さ」
「うん?」
「昼に浜辺で見つけて、かわいくて気に入ってひろった貝殻なんだけどね。実はもうひとつ、透明なガラス玉もひろったの。それもそれで水晶みたいに、周りの景色を反射させながら映していて、とってもキレイで。どちらを乗せようかずっと考えた末、貝殻にしたの」
「いいんじゃない?」
「でしょ。かわいいでしょ。でも次の宇宙の1日があるとしたら、今度はガラス玉の方を乗せようと思うの」
「今、どちらも乗せたらいいだろ?」
「それやったら、見た目がうるさすぎ。お互いに殺しあって、台無し」
砂浜を照らす夕陽の姿は、いつの間にかほぼ水平線の下へと隠れつつあった。猛暑で焼けたコンクリートの上にこぼしたアイスクリームのように、丸い形は歪み、崩れていた。世界が日没へと変わる気配が漂う。
月の引力に引っ張られた海面は、徐々に満潮の状態へと近づき、波際も二人の足下の、すぐそばまで迫ってきていた。尻餅をつきあぐらをかいていた男は、波で衣服が濡れるのを防ごうと、足の裏だけ砂浜に触れる姿勢でしゃがみこんだ。そして砂山の頂の貝殻を見つめながら、女に向かって問いかけた。
「次の宇宙があるとしてだ。おまえがその宇宙の中で、もう1つ拾ったガラス玉を乗せる選択肢を選んだとしたら、だ。そこでエイエンカイキとやらは終わるんじゃないか?」
貝殻は、反射する夕陽の光の色の変化により、オレンジ色からラベンダー色へと変色しつつあった。
女は答える。
「ん。終わるのかな」
「枝分かれして、違う世界になっちまうだろ」
「なっちゃうね。プチ・エイエンカイキ」
「なんだよそれ」
「でも、また次の宇宙では貝殻を乗せてるかもしれない。それならエイエンカイキは成り立つよ。ずっと毎回同じことを、ムリにくり返す必要なんてないんだから。好きな時にね、またくり返せばいいの」
「……都合のいい解釈だな」
男はそう吐き、立ち上がった。そして海洋の彼方の、水平線の方角へ顔を向けた。
日は沈んでいた。
空は色彩と明度を変え、上空は沈んだミッドナイトブルーに、水平線の上は太陽の残り香を連想させる妖艶なオレンジ色に染まり、その間にはピンクのグラデーションで塗られた大気が広がっていた。海原はブルーアワーの魔力で鮮やかに染められた空を、鏡のように映し出していた。目の前の細波だけが、動いていた。
しばしその光景を眺め、男は静かに口を開いた。
「……でも、それでいいんじゃないか?ふわふわした、つかみどころのない、自由だけど欲張りな答え。おまえらしいよ」
女は微笑み、うなずく。そして立ち上がり、男と同じ景色を観る。
太古の彼方から幾度も映し出されてきたであろう、太陽の光が天空と海洋に投影するその光景は、しばし二人の思考のノイズを沈め、リトリートさせるのに十分な力を持っていた。
一呼吸して、男が聞く。
「どうして、エイエンカイキなんて言葉、突然出したんだ?」
一呼吸して、女は答える。
「……砂山を作ってる途中さ。ふと、とても懐かしい気持ちになって。『これもしかしたら、こないだ友達に教えてもらったエイエンカイキってやつじゃない?』と思ったの」
二人は顔を向かい合わせる。
「……さっきも言ったけど、デジャブじゃないのか?」
「わからない。デジャブかもしれない。でもひょっとして、『エイエンカイキ』だったら、すごいなおもしろいな、と思ったの」
「……そもそも、エイエンカイキって、前の記憶は残るのか?」
女は鼻息の音を鳴らし、ひとときの間首を振りながら考え込むと、男の目を見て答えた。
「残ってたら大変だよね。記憶がどんどんどんどん重なって、どの記憶がどの自分のものだったかわからなくなって、頭おかしくなっちゃう」
「だろう。それじゃデジャブかエイエンカイキか、どっちかなんて、もうわからないだろ」
「わかんない。ケッキョクね、どっちでもいいんだよ。でもさ、エイエンカイキの方が、夢があってよくない?」
「どうして?」
「もう会えなくなった人に、また会えるから。同じ宇宙でも、ちょっとだけ違う宇宙でも、あたしらの命は繰り返されているわけだから」
潮は満ちていった。膨張していく海面の先端の細波が、二人の足先へと届いた。寄せ波は足の周囲にまとわりつき、勢いよく引く波は砂との摩擦で足裏をくすぐる。
「くすぐったいね」
「くすぐったい」
二人が作った砂山の麓も、波で洗われ、湿っていた。
男は砂山の頂点の貝殻に目をやり、問いかけた。
「本当にエイエンカイキがあるならさ。俺たちが生まれる前に、きちんと地球も誕生してくれるのかな?『奇跡の星』とか言われてるだろ」
「またキセキが起きてくれるの、願うしかないね」
「また奇跡が起きて、また恐竜が誕生して、隕石が落ちて恐竜が滅んで、そこからまた色々あって……」
「色々あって、今、あたしらがここにいる」
「すごいことだよな」
細波の音が、相槌を打つ。女の唇が蠢く。
「次の宇宙の一日では、キョウリュウが生き残ってもいいかもね。隕石とか、落ちてくるのやだし」
「それじゃ、人類は誕生せず、オレらも生まれないんじゃないか?」
「わからないよ。キョウリュウの隣でサルが誕生して、ジンルイに進化するかもしれない。キョウリュウと、ジンルイが、キョウゾンするシャカイ」
「都合のいい、自由な考え方だな」
「そしてキョウリュウも、ジンルイも、隕石でほろびる」
「……最悪のシナリオだ」
「そうなる前に、もっとジンルイは進化して、隕石をこわせばいいの」
女はゆっくりと片腕を垂直に上げ、親指を立て人差し指を伸ばし、銃を撃つハンドサインを見せた。指先の標準は、水平線の彼方の空へと向けられていた。
見ていた男も、真似をする。二人で笑いながら、ガンフィンガーのサインを空へと向け、銃撃音を唱える。
「ばあん」
「ばあん」
宇宙に向けた、二人だけの砲撃戦が始まる。
「ばあん」
「ばあん」
「ばあん」
「ばあん」
「ばあん」
「いつの間にか、波、高くなってきたね」
女は口走った。先ほどまで足の周囲をくすぐる程度だった細波は、引く際もすっかりくるぶしまでを覆う水深となっていた。
「このまま満ちると、俺たちも溺れちまうな」
「そこまでこないでしょ」
「冗談だよ」
日没から時は進み、あたりの波の色もまた、ミッドナイトブルーの色彩へと染まりかけていた。やがて波色は漆黒へと変色する。
女はしゃがみ、蠢く波の中から海水を両手ですくいあげると、暗い大気の中でしばらく眺めた。そして、小指の間を空けてこぼしながら呟いた。
「次の宇宙でも、またここに来れるといいね」
青紫色に濁った大気の中に浮かぶ、女の無垢な仕草を見ながら、男は静かな声で返した。
「……また来よう」
男は胸元のポケットから電子端末を取り出す。
「別に次の宇宙じゃなくても、来年でもいいだろ。少し寒くなるけど、来月でもいいぞ」
そう言って、電子端末のシャッターボタンを押した。
空。海。波。女。細波に包まれ、もはや島のミニチュアのようになった砂山。その頂点に飾られた貝殻。
並んで笑う女と男。
男がボタンを押す度に、センサーを通して映像化されたそれらが、電子端末の半導体の中へと記録されていく。
「話すのに夢中で、とるのわすれてたね」
女も笑いながら、胸元から取り出した電子端末をかざし、幾度もシャッターを切った。
世界が、その中に吸い込まれていく。
二人だけの撮影会がひと段落した頃、自身の電子端末の画面を見て、男は言った。
「もう帰るぞ。ちょっとしたら、こんな外灯もない浜辺、真っ暗になっちまう」
女はうなづいた。海からあがる間際に、作った砂山の表面を愛撫し、人差し指の先でゆっくりと、頂に飾られた貝殻を触った。
「また来る時まで、残っていてね」
荷物とサンダルをピックアップした男と女は、浜から引き返すため、歩いていた。
周辺を背高い木々に覆われた、土と草が凸凹を描き剥き出す、上り坂の獣道。
空の色は一段と暗くなり、美しく鮮やかなブルーアワーの夕景から、漆黒の夜へと変わる狭間にある暗い色彩へと変わっていた。
頭上にかすかに望める空とあたりの樹木とが、青暗く淡いコントラストでぼやけたシルエットを描きながら存在することだけ、二人には認識できたのだった。
闇に対する畏怖と、日没後も漂う夏の蒸し暑さが、坂道を登る二人の心身を消耗させていく。
息をあげながら、女は尋ねる。
「車を停めたところまで、まあまあ歩くよね」
身体中から汗を流しながら、男は答える。
「ああ。悪いけどあの空き地が、車で近づける限界だった」
「わるいとは言ってないよ」
「もし言われてもイヤだけどな」
「だれもいなかったし、そもそも駐車場かもわからなかったけど、停めてよかったのかな」
「知らないけれど、あとで怒られたら謝ればいいのさ」
汗まみれになった女は、ため息をつき、言葉を吐く。
「なんかもう、海が恋しい」
「俺もだよ。でも車に乗って高速道路に乗れば、数時間で地元の街だ」
「でも、海が恋しい。……旅の帰り道は、いつもさびしいね」
「さびしいな。だから、また来よう。エイエンカイキで次の宇宙に行く前にな」
ぼやきを混ぜた会話で恐怖と疲労と蒸し暑さを紛らわすうち、二人はようやく、ゴール地点である空き地についた。
もう、夜と言うべき空だった。
暗く塗られた大気の向こうに、停めた乗用車の輪郭が、かろうじてかすんで見える程度に浮かんでいた。
二人安堵の息をつく。車へと歩み寄る。その時だった。
闇に覆われた天空の頂点が、突如、血が滲むかのように紅く光りはじめた。
異変に気づいた二人は、空を見上げる。
円状の紅い光は、水の中に垂らしたインクのように、瞬く間に膨れ上がり、妖しく輝きを増していった。
「あれ……」
「あれ……」
二人が揃って「あれ」が何なのかを言葉にするのには、時間が足りなかった。
「あれ」は地上の人間が視認できた瞬間から、瞬く間に地球の大気の中へと突入し、衝突した。地殻はえぐられ、熱を帯びた蒸気が地球全体を包み込み、ありとあらゆる生命は燃やされ、溶かされていった。
「この場所、はじめて来たのに、とっても懐かしい感じがする」
潮の匂いを含んだ風が、女の髪の毛を揺らす。ほぐされて宙に舞うその毛先は夕陽の光を浴び、大気の中に溶け込んでいくかのように、眩く輝いた。
両手で砂を掬いながら、女は言った。
「なんかね、いつの日か一緒にここに来て、こうして遊んでた気がするの。あんたと。」
聞いた男はゆっくりと振り向くと、訝しさを含めた声色で聞いた。
「デジャブか?」
男は硬直した筋肉をほぐすためか、首をコクンと、銃のトリガーを押すように一度傾け、言った。
「言うまでもなく、オレたちはここに来たのは初めてだろ」
「うん」
「一緒に浜で砂遊びをするのも初めてだろ」
「うん」
「そして、一緒に海に来るのも初めてだろ。俺たちの住んでるところから、海は遠い」
「うん」
うつむいて砂山を撫でながら、女はそっけなく答える。
男は女から身体を背け、砂の上に尻餅をつき、海の方へと両脚を投げ出した。目の前に広がる大海原の夕景を眺めながら、男は問いかけた。
「……いつか海に来た記憶、砂遊びをした記憶、あるだろ?」
「あるよ。海は一度だけ。砂遊びはしょっちゅう。どっちも、子供の頃だけど」
「あるだろ」
「ある」
「それらの記憶の断片が混じり合って、『前にもこんなことをした気がする』ってニセの記憶を脳が作りあげるんだよ。それがデジャブさ。ここから見える景色、音、光、匂いに反応して、今おまえはデジャブを見せられている」
「うん。……あのね、デジャブくらい知ってるよ」
女は掬った砂を、さらさらと砂山の頂点にかけながら答えた。
「デジャブ知ってるし、あたしも何度も体験してるよ。でもさ、もしかしたら、今回の感じてるのはね、ちがうヤツかもしれない」
男は女の方を振り向き、光で紅く染まる顔を見つめた。女は砂山の表面を愛撫する手をゆっくりと静止させ、呟いた。
「できあがり」
女は衣服の胸元のポケットをまさぐり始めると、やがてやわらかな指で、水晶のように透き通ったガラス玉を取り出した。それを目元に近づけじっと見つめると、手前に作られた砂山の頂に、そっと置いたのだった。ガラス玉は周囲の光を取り込み屈折させ、辺りの景色を反転させて映し出した。白い浜辺と大海原が映ったその小さな球体は、縮小させた地球そのもののようにも見えるものだった。
女は男の方を向く。互いの瞳孔から発射される視線がぶつかる。女は問いかける。
「ねえ、エイエンカイキって言葉、知ってる?」
また細波の音が響き、消える。
「エイエンカイキ」という単語のありかを探るため、脳内の記憶の海の中を泳ぎ、数秒のタイムで陸に上がった男は答えた。
「知らない」
女の唇が、軟体動物のように蠢く。言葉が続く。
「ニーチェっていう哲学者が考えた言葉なの。考えたっていうか、発見したっていうか」
その時、男の衣服の胸元にあるポケットが突如、「ブウン、ブウン」と音を立て振動した。
「ちょっとごめんよ」
男は、女の瞳から自身の胸元へと視線を逸らすと、ポケットの中をまさぐり、電子端末を取り出した。そしてその端末に供えられた画面を、しばし凝視した。女は構わず、話し続けた。
「こないだね、哲学が好きな友達と一緒にごはん食べた時、教えてくれた言葉なんだけどね……ちょっと?聞いてる?」
清聴を求める女。一方で端末の画面を見つめる男の表情は、雲一つない夕景の空とは対照的に、曇っていった。そして答えた。
「ニーチェなら知ってるよ。名前だけ」
女の口元が緩む。男は女の目を見ると、一つため息をついて言った。
「……悪いけど、話はあとにしてくれ。ちょっと面倒なことになった」
二人は、宇宙空間の中にいた。人類の間で個人移動用に普及した、小型の宇宙船に乗って。
半球状に造られた操縦席の窓の向こうには、無数の星が浮かび、光っている。
後方を振り向けば、先ほどまでその大地を足を踏んでいた、地球が浮かんでいる。
だらしなく倒したシートに身体を預けた女は、「んんーっ」と両手を組んで大きく背伸びをすると、静かに呟いた。
「もっといたかったなあ、あの砂浜」
隣のシートに座る男は、運転のオペレーションを行うタッチパネルを操作しながら、無愛想に答えた。
「オレだって同じ気持ちさ。しかしタイミングが悪かったよ。隕石衝突警報が出て、コロニーへの帰還命令が届いちまったからさ。位置は監視されてるし、命令無視したら、あとあと面倒だろ?」
男はヒュウッと口笛を吹き、言葉を続けた。
「まあ、お上の方が砲撃して、太陽系に入る前に撃ち落としてくれるんだろうけど」
その言葉を聞いた女は、ゆっくりと片腕を垂直に上げ、親指を立て人差し指を伸ばし、銃を撃つハンドフィンガーサインを作った。その手を窓ごしの、宇宙の彼方へと向けて差し出し、呟いた。
「ばあん」
見ていた男も、真似をする。
「ばあん」
二人で笑いながら、ガンフィンガーのサインを宇宙へと向け、銃撃音を唱える。
「ばあん」
「ばあん」
「ばあん」
「ばあん」
「ばあん」
「しかし、初めて地球に来たけれど、想像以上にすごいところだったな」
口走る男に、女も興奮気味に答える。
「ホントだよね。あのムワっと湿ったあっつい空気、シャワシャワと鳴る波のさわり心地、鼻をつくけどなんだかクセになる、海から漂うしょっぱい匂い。そして、こわいほど広すぎる、空と海」
砲撃ごっこを止めた二人は、シートに背をもたげ、ほんの数時間だけ直にその大地に触れられた、地球について言葉を交わした。
「太陽の下にいるだけであんなに汗かくなんてな。サウナみたいだったぜ」
「ナツだからでしょ。地球ってキセツがあって、ちがう時期に来ると、びっくりするほど寒いらしいよ」
「ホントかよ。その時は冷蔵庫の中が味わえるな」
「でもね。あたしはもう一回、ナツに来たい」
熱を帯びた大気。
千波万波の果ての細波。
果てしなく広がり蠢く海原。
サラサラと足裏を撫でる砂浜。
そこに漂着して転がるオブジェクトの数々。
それら全てを照らす、太陽。
数時間の地球上での保養は、退屈な宇宙空間の中で次々と話の花を咲かせるのに、十分なものだった。
「……オレも子供の頃から、映像資料で地球の光景は何度も見たけどね。リアルで触れると生々しいな。世界が五感全てに突き刺さってくるような、そんな感じだった。コロニーの環境では、あの感触は味わえないよな」
ぼんやりした表情でつぶやく男に対し、女は栄養補給用のゼリーをストローですすった後、問いかけた。
「あんなにすごい星なのに、なんでジンルイは手放しちゃったのかな」
男は大きくため息をつき、答えた。
「まあ色々だろ。汚染、異常気象、自然災害、食糧問題、だの。人類は、コントロールできなくなった惑星より、コントロールできる新たな星を自分たちで造って、引っ越した。やがて、政治と経済の中心も、新しい星に移った。教科書のはじまりに、そんなこと書いてあっただろ」
「うすうす事情はわかるけど、なんかさびしいね」
女はシートから身を横に乗り出し、半球状の窓のふちまで額をつけ、後方を振り向いた。
地球が浮かんでいる。その星は少しずつ、視覚的に縮小し、目の前から離れていく。
男は地球を名残惜しそうに見つめる女を一瞥すると、再びタッチパネルを操作しながら言った。
「今日降りた砂浜は、まだ昔ながらの自然が残っていて、いいところらしい。でもさ、他の多くの沿岸部は汚染が進んで、荒れ果てているところも多いって」
「おそうじしないのかな?」
「お金も手間もかかるんだろ。天文学レベルで」
男は、指で自身のこめかみを一周二周、ほぐして言った。
「そういやさっき、幼い頃に海に行ったことがある、とか言ってなかったか?」
「うん。でも、地球の海じゃないよ。ちっちゃい頃に住んでたコロニー内の区の、郊外にあった、人工の海。でもあれ、今思うとただのでかいプールだよ。さっき見た、ホンモノの海と比べると、ね」
「なんだ。でも人工の海なんて造ったのか。おまえの地元、すごいな」
「すごいでしょ。幼い頃に地球の海でよく遊んでた移住者の老夫婦が、その恋しさゆえがんばって造ったんだって。出来は満足いかなかったかもしれないけど、そのエピソード、あたし好きだよ」
女は地球を眺めたまま喋る。
船は進む。退屈しのぎの会話は続く。
「おまえ、さ」
男は目の前の宇宙を眺めたまま、問いかける。
女は身体をシートの上へと戻し、男の方をむいて答えた。
「ナアニ?」
「おまえ、さっきあの砂浜で、なんか拾ってなかったか?」
「あの、二人で作った砂山の上に置いた、ガラス玉でしょ?キレイだったよね。」
「それじゃなくて、もうひとつ、何か拾っているように見えたんだけど」
「ナニもないよ」
「ホントか?白く光る、なんか変な形の物を拾うのが見えたけどよ」
「ああ、あれね。何かの生き物かと思ったら、コロニーでもよく見かけるようなゴミだったから、すぐすてたよ」
「なら良かった。保護法で地球からの自然物の持ち帰りは厳しく制限されてるからな。バレたらエラい目にあうぞ」
「そんくらい知ってるよ。でも、足の裏についた砂はいいの?」
「それは見つかっても、説明すれば大目に見てもらえるだろ。避難するのに時間がなかったからな。没収はされるだろうけど」
二人が話す間にも、窓から望む地球は、だんだんと離れ、小さくなっていく。
やがて互いに会話にも飽き始めたのか、二人の声のボリュームはだんだんと下がり、途絶えた。
窓の向こうには、輝く無数の星々が、砂粒のように浮かび舞っていた。
静寂を、男の静かな声が破る。
「よし。……ここまで逃げればもう大丈夫だろう。あとは自動運転にして、一眠りだ」
タッチパネルを慣れた手つきで操作した男は、リクライニングシートを水平に近い状態まで倒すと、あくびをしながら寝転がった。両手を頭の後ろで組み、窓の外の宙を見上げながら、ゆっくりと深いため息をついた。
「もうしばらく進んで高速航路に乗れば、数日間で地元のコロニーだ」
女もシートを倒し、寝転がる。
操縦席を照らしていた照明が、落とされる。窓の外の星々は、ますますその輝きを増して映る。
その光景をじっと見つめながら、女は呟く。
「また、来たいな。……旅の帰り道は、いつもさびしいね」
男も呟く。
「……オレもだよ。今回は残念だった。……降下の手続きを取るのが色々面倒だけど、休暇が取れたら、また来よう」
「……うん。ゼッタイ、だよ。あの砂山、残ってるといいね」
「……そうだな」
暗くなった操縦席内での二人の声は、また徐々に、そのトーンを落としていった。
避難が済んで緊張感が解けた脱力感と疲労からか、二人をまどろみへの誘惑が包み込む。朦朧とする意識の中、かろうじて言葉を交わす。
「……そういや、おまえさ」
「……ナニ?」
男は大きくあくびをする。問いかける。
「さっき言ってた、エイエンカイキって言葉、何?」
女は大きくあくびをする。答える。
「……話すと長くなっちゃうね。向こうに着いたら、教えるよ」
静寂の時が流れる。
やがて男の寝息が、響き渡る。反復して、響き渡る。
女は男を起こさないよう、静かにシートから身を乗り出した。窓に額をつけ、後方にうかぶ地球を眺めた。
灯が消えた操縦席からは、先ほどにも増してその惑星が美しく見えた。女にとって、それはもはやガラス玉のおもちゃのように小さく思えた。自分も宇宙に浮かんでいるような錯覚を覚えた。
大地と水と雲が、透明な水晶の中に吸い込まれ、誰の仕業かもわからないまま、宇宙に浮かんでいる。
夢の中へと誘われる睡魔の中、そんな想像をしながら地球を眺めていた。
女は再び、シートに身を倒す。男の寝る座席とは反対方向に、身体を寝返させる。
胸元のポケットの中をまさぐり始める。やわらかな指で、砂浜からこっそり隠し持ってきた、白い貝殻を取り出した。
宇宙に浮かぶ星々をバックに、貝殻を目の前にかざしながら、自分にしか聞こえないくらいの小さな声でささやいた。
「おやすみ」
#創作大賞2023 #オールカテゴリ部門 #小説 #短編 #永遠回帰 #創作
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?