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幸徳友久シリーズ

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艮さまと宮中八神

 皇居の鬼門を守る御影神社の御祭神は天照大御神と宮中八神と呼ばれる高皇産霊神・神皇産霊神・玉留産霊神・生産霊神・足産霊神・大宮売神・事代主神・御膳神と大直日神、それに陰陽道の神として知られる泰山府君神と伝わっているが、鬼門の神社なので地元の人は「艮(うしとら)さま」と呼んで厚く尊崇している。

 御影神社の宮司の幸徳友久は毎日社殿で日供祭を行い、日々天皇の玉体安穏や皇室安泰や国家鎮護や氏子や崇敬者

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経世済民の占術師

経世済民の占術師

 黒い道士服を着た男が赤いロウソクの灯りの元、印を組んだり小声で呪文を唱えたり、北斗の形に歩いては空中に剣印で何かを書いては、祈っている。

「吾奉太上老君急急如律令!」

 最後に裂帛の気合を込めて男が呪文を唱えると、男の周囲を囲むように、中国風の金ピカの鎧を着た男達が光と共に現れ、話しだした。

「主殿(ぬしどの)、御修行完遂おめでとうございます。これより我ら六甲六丁の神将、主殿の僕(しもべ

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張霊(はらひ)

張霊(はらひ)

 皇居の東北を守るという御影神社の幸徳宮司を訪ねてから一週間後、宮司夫人の瑠璃さんにアンティーク着物を着せてもらって、銀座でお茶をしたり買い物したりして過ごした。彼女は神職資格は持っていないが、巫女舞は出来るので、神社の大祭では巫女舞を御奉納しているというが、実際の瑠璃夫人は巫女というよりもアニメオタクだった。結婚前はアニメーターをしていたそうで、その才能を生かして神社の看板やお守りや御朱印などを

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耳注ぎ(みそぎ)

耳注ぎ(みそぎ)

  変わった神主がいると聞いて、面白い記事になりそうだから取材に行ってこようと、軽い気持ちで御影神社を訪ねることにした。

 御影神社には事前に電話で取材の日時を伝えたが、「いつでも居ますから、好きな時に来てくれはったらよろしいですよ」と良い声で話す男性が言ったので、お言葉に甘えて、特集記事の原稿が終わった次の日の朝に御影神社に行くことにした。

 御影神社は皇居の鬼門を守る神社とされているそうで

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