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東南アジア起業、上場の選択肢(後編):日本で上場する2つの方法

こんにちは、越です。

前回の記事では、「東南アジアで起業した会社の上場選択肢」というテーマにおいて、各国の市場についてをお伝えしましたが、今回は「東南アジアから日本へ上場する方法」について具体的に書いてみます。

前回の記事はこちらからどうぞ

そもそも「海外の会社が日本の市場に上場できるのか?」という声があるかもしれませんが「できます」。考えられる方法は2つ。CIとJDRという方法です。

CI(コーポレートインバージョン)

一言で言うと「外国籍の企業を日本本社に転換」して日本で上場する方法です。
古くからある方法で、最近の有名どころで言うとKaizen Platform(米国→日本)やAppier(台湾→日本)があります。

Kaizenはスタートアップ界隈では有名な、リクルート最年少執行役員だった須藤さんが立ち上げたマーケ支援会社。AppierはGoogle台湾の元トップが創業したAIマーケティング企業で、顧客が日本に多かったため市場拡大を狙って台湾創業でありながら東証に時価総額2,000億円で上場した会社です。

具体的には大きく「現物出資」と「三角合併」に分かれるらしいのですが、テクニカルに知りたい方はこちらの資料などをご参照頂くとよろしいかと思います。

参考:外国会社の東証上場に関する近時の動向と留意点 |アンダーソン・毛利・友常法律事務所

上記資料にJDRも載っているのですが、これを読んで理解できる方は元々これら用語に明るい方だろうなと思いますので「海外で創業/本社置いてるけど日本に籍を変えて上場する方法あるのね」という理解でいいと思います。

JDR(Japanese Depositary Receipt)

一方で「海外に本社を置いた外国籍企業のまま」日本で上場する方法があります。
それがJDR(Japanese Depositary Receipt)です。

すっごく単純に言うと、通常、発行体(上場する企業)→証券会社→投資家という流れで株が売り買いされるところの証券会社のところに、信託銀行が海外の発行体から買い付けて日本の証券会社に渡すことで日本の投資家が買える、という流れです。

出典:新規上場基本情報 JDRスキーム|日本取引所グループ

このJDRが出来たのは割と最近で、第1号は2017年、今日時点でまだ3件しか例がありません。最新事例は2021年末上場の、タイでも活躍されていたYCP Holdings(ヤマトキャピタル)さんです。

では、どちらを選べばいいの?

どっちを選んだらいいの?という疑問が湧いてくるかもしれませんが、結論は「ケースバイケース」。

例えば台湾のAppierの場合、台湾人創業ながら日本が主戦場で日本でのプレゼンスを上げたかったので日本に籍を変えたかった、と。もしかしたら昨今の中国の香港制圧、次は台湾、という危機感なども背景にあったかもしれません。

また、逆に日本人創業ながら外国籍のままJDRで日本に上場したYCPさんの意思決定は「グローバル感を出したかった」のかもしれません。聞いたわけではないので妄想です。

CIの三角合併には少なくとも数千万円かかる、という話ですし、JDRの場合それは不要みたいですが最終的にどちらの方がコストが安く済むのかは未だわかりません。

ということで日本人経営者の場合どちらを選択するかは気持ちの問題が大きい気がしてます。(違うよ!という専門家の方いたら教えてください)

ただ、1つ分かったこととして、JDRは「外国人経営者(タイ人スタートアップ)にも使える仕組みなのか?」と思っていたのですが、結局のところ上場の際もその後の全ての上場維持運用にも大量の日本語業務をせねばならず、日本が主戦場でやっていく企業で無い限りはっきり言って割に合わないな、と思いました。

タイスタートアップの友人たちに「タイのMAI/SETよりも日本に上がる方がいいよ」と言ってあげたいのですが、それはまだまだ先になりそうです。言語の壁厚し...。


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