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ボドゲのマップをどう考えるか?

<はじめに>

 上に画像が貼られている『カタンの開拓者』の名前を上げるまでもなく、多くのボードゲームにはマップが存在する。ゲームによってはやりこみプレーヤー向けに別マップが拡張として販売されることもある。
 さて、このようなマップはどう考えればよいだろうか?(※どう作るか? どう攻略するか? 両方の意味で)

<記事の方針>

ボドゲのマップは以下の4つのいずれかで表現されている。
 ・スクエア(四角形を敷き詰めた形)
 ・ヘックス(六角形を敷き詰めた形)
 ・特殊(上記以外の特殊な形、あるいは複数の形で敷き詰めたもの)  
 ・グラフ(ノード≒場所 と リンク≒道で表現した物)
    ・単純グラフ(一方通行を含まない)
    ・有向グラフ(一方通行を含む。双六のようなもの、各種トラックもここに含む)

 見た目(のわかりやすさやカッコよさ)等を考慮せず、論理的な面のみで捉えるときこれらは全てグラフ(ノードとそれをつなぐリンクで表現した物)に置き換える事ができる。
 
例えば下の図の左側、緑色のペンで書かれたA~D4つのパーツから書かれたマップについて考える。これを各パーツの隣接に着目し、パーツ自体を点(ノードといいます)で表し、その隣接を線(リンクといいます)で表すと右のような状態(グラフといいます)に書き換える事が出来ます。

グラフへの変換

 4種類の表現全てで記述するのは冗長なのでこの記事ではグラフについて記載する。

※基礎的なグラフ理論の分野ではノードリンクという事の方が一般的です。ただ、”点(point)”という単語が『得点(score)』等の別の意味と混同しやすいためか、AIやデジタルゲームの分野ではあまり使われない印象です。
 ボードゲームにもVP(勝利点)、AP(アクションポイント)をはじめ、多くの”点”が存在する事、デジタルゲームとの用語統一を考慮し、この記事ではノード、リンクという用語を使用します

注釈

【MAP1-1 袋小路】

(定義)
 隣接するノードが1つしかないノード。

※一般用語。”(陸の)孤島”やお気に入りのゲームの該当する地名、”盲腸”と言う言葉で表現する人もいる。

注釈

(特徴)
 
大抵は作者の明確な意図がある。
 
最も単純な意図は”行きたくない場所(あるいは難所)という特性を持たせる事である。
 ただ(3人戦以上の)ボードゲームでは、人と狙いが被らない事により利益を得られる場合も多い。それを多くのゲーム参加者が認識した場合、”相手と被らないためにあえて飛び込む場所”として機能する。

(上記の具体例)
テーベ
 このゲームのマップは(遺跡関連の場所を省略すると)以下のようなグラフで表現できる。

 このゲームでは常に4枚のカード(目的地上がるステータスが書かれている)の中から1つ選び、後の遺跡での発掘時に必要なステータスを上げていく。1マス移動するたびに1日を消費してしまうため、効率よくステータスを上げるためには移動回数を減らす必要がある。

 ここでマップをみてみるとモスクワ(右上)が袋小路である。モスクワはワルシャワしか隣接するノード(都市)がない。さらにそのワルシャワも先述のカードの目的地にならない特殊な場所である。
 普通に考えれば、モスクワには行かない方が良い。ここから別の場所に移動する際、必然的に2日以上の時間を消費するからである。
 しかし、目的地がモスクワのカードが2枚以上公開されている場合、あえて行く場合がある。2枚目のモスクワのカードが自分のターンまで残っていれば移動なしでこれを取る事ができるからだ。(対戦相手も先述の”モスクワに行くべきではない”という思考ができる相手である場合、この目論見は成功する可能性が高い)

(その他の例)
パンデミックの”サンチアゴ”、エルフェンラント

【MAP1-2 中心(直径/半径)】

定義)
 
グラフ理論用語
 グラフ(あるいはその一部地域)に対して最も少ない移動で到達できるノードを中心という。あてはまるノードが複数ある場合、全て中心である。
 また、グラフ(あるいはその一部)において最も遠いノード間の距離(=何回移動すれば到着するか)を直径、中心から最も遠いノードへの距離を半径という。

(特徴 中心)
 
意図せずとも自然に発生する。作者の意図が絡んでいるとすれば以下の2つである。

 ①スタート地点
 (イスタンブール等の)『Xマス移動してその場所に対応するアクションを行う』ゲームではスタート地点として使用される。Xマス移動で行ける場所が必然的に多いため、選択肢に多様性があり、後手でも十分に有用な場所を用意できるためである。

 ②ハブ故の争いの焦点
  袋小路とは逆に非常に多くのノードに移動しやすい場所である。故に盲腸とは真逆の性質を持ちやすい。
 また、(ブロックス等の)陣取り要素の強いゲームで最初の陣地がマップ全体の中心から大きく離れた位置からスタートする場合、まずは中心に向かって陣地を広げる展開が予測される。

(特徴 直径 半径)
 また、各プレーヤーの移動あるいは支配した範囲の中心や直径(半径)を解析する事はマップの偏りに気付くきっかけになる事がある。

(その他の例)
多数。強いてあげるならパンデミックの基地をどこに建てるか?等

【Map1-3 切断ノード / 橋 】

(定義)
 グラフ理論用語。
 削除するとグラフが2つに分かれてしまうノードやリンクの事。それがノードの場合「切断ノード(切断点)」、リンクの場合「」と呼ぶ。

(特徴)
 (ノードやリンクを1人のプレーヤーが占有するような)陣取りゲームにおいて非常に重要。これらの地形を抑える事で相手の展開を阻害できるからである。
 このようなゲームにおいてマップは他プレーヤーの占有によってだんだんと狭まっていくため、必ずしも開始から切断ノードや橋の状態にしておく必要はない。
 『相手の占有する場所と残っている場所』をグラフとみなした時に切断ノードとなる場所を素早く占領し、相手の進出を阻む事を考える必要がある。(逆に相手にされないように気を付ける必要もある事は言うまでもない)

 また、ローゼンケニッヒのように隣接しているノードの塊の大きさが重要なゲームの場合、これらの地形を守れるかどうかをゲーム終盤の肝にすることもできる


2022/09/11 公開
2022/0914 用語変更:盲腸を袋小路に修正

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