夜の深海

日の暮れ果てた、21時過ぎ。
東京の中心地からベッドタウンまで、夜の車窓より。

私は視界を流れていく夜の街並みをただ眺めている。

それは、何かを見ているようで、何も見ていない。
空中を見つめる猫のように、一点を凝視するが、その瞳には何も映らない。

金曜の夜、脳みそがパンクし、ショートしている(ショート寸前という表現はよくあるが、すでに一線は超えている)が為に、目の前の風景よりも、自分の頭の中ばかりを注視してしまう。
一人反省会。最後はたいてい、悲しいor恥ずかしいor怒り、の気持ちになる。

だめだ、だめだ。何駅か過ぎたあたりで我に返る。
会社モードのON /OFF切り替えが下手くそすぎるなと、自虐的に苦笑い。

明日は休日、気持ちを切り替えよう。
何をしようか考えを一巡りしてみるが、休日の過ごし方のレパートリーも少ないために、すぐに暇になった。(どうせ午前中はゴロゴロしているんだから、という自分の性格を見越しての諦めもある)

そんなこんなで、冒頭。窓の外をぼーっと見ている。

窓の外は光と闇の集合体。

街中のビル群、看板やネオンが煌々と照らされているうちは、夜を夜だと認識できない。
東京の夜は明るすぎる。
いつまでも消えない明かりは、誰かが起きている証拠なのだけれど。
本当に東京の街は眠らないらしい。

都心から離れる電車に連れさられていく。光の世界から、暗闇の世界へ。
段々と、周囲の明かりが少なくなり、闇の割合が増える。

小さな光がぽつぽつと流れてゆく。
波に流されるホタルイカのように。

街灯の灯りと、マンションの共用廊下の大して明るくない照明と、
儚く小さな光たち

やがて今自分が乗っている電車が周囲で1番明るい存在になっていく。

そうだ、今は夜なのだ。休む時間なのだ。

濃くなっていくばかりの闇の中を、光の塊は通り抜けていく。

今日が尻すぼみに閉じていく、なんだかハッキリしないまま

そして、なんだかハッキリしないまま、また1日が始まってしまう…らしい。

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