こるもの先生のミステリ講座・自作短編解説3 『3人目の名探偵』後編

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こるもの先生のミステリ講座・自作短編解説3 『3人目の名探偵』前編
こるもの先生のミステリ講座・自作短編解説4『第2回文学フリマin大阪で配布したペーパー』

未来のバンデラスの諸君!
もうネタフリはいい。後編だ!
途中から有料になるぞ!

「……ええと、どちら様ですか?」
 と言うのは、スポーツ刈りの三十代くらいの男。セーターの上からでも筋肉質の体格が見て取れるので、恐らくはバスケット部の顧問か監督なのだろう。真樹はため息をついて嫌そうに紹介する。

容疑者候補その1、バスケ部顧問の吉岡先生登場。
後半になってから出てくるのかよ。

「あー、こちら、オレの遠い親戚のオッサンとその父親。ぶっちゃけほとんど他人です。無視していいです」
「俊、俊! あれは持ってないのか!」
 湊も他人のふりをしたかったのだが、名指しで呼ばれては無視もできない。そっと忍び寄って父の耳許にささやく。
「持っていません、非番です」
「何だと、用意の悪い奴だ」
「どのみち管轄外ですよ」
 それにきっと眞一郎だって、現役時代ならこの場面で警察手帳を出したりはしない。長野県警に迷惑だ。父は憮然として真樹に向き直る。

水戸黄門の印籠・浅見光彦の兄からの電話をやりたがるおとなげない眞一郎。

「では真樹君」
「ここでオレの生徒手帳出して何がどーなるわけ?」
「折角の機会だというのに、なっとらんぞ君たちは! 私の育てた探偵が二人もいるというのに!」
「オレはあんたに育てられた覚えはない」
 ――湊だってそんなことを言われても。ますます訝しげに湊たちを見る教員に、眞一郎は咳払いをして重々しく言い放つ。
「――私はこれでも、以前警視庁に勤めておりまして」

仕方ないので自分で印籠を出す眞一郎。

「け、警察!?」
「警察はよしてください!」
 三人は一斉に青ざめ、怯えた声でまくし立てる。
「み、宮根君や菅原君は推薦入学が決まってるんです! 不祥事がばれたら……」
「そ、そんな大したことじゃないんです。わ、私の携帯電話が見つからなくって、立花君に捜してもらおうと思っただけで。どこかに忘れちゃっただけかもしれないし……」
「――可哀相だからすっこんでろよ、元警視総監と現役管理官」

印籠でひれ伏しすぎてビビる人たち。かわいそう。
ギャグだけではなく後に効いてくる印籠。
というわけで携帯電話紛失事件、ここから開始。

 真樹が冷ややかにつぶやき、教員の袖を引っ張る。
「ヨッシー、こいつらただ面白がってるだけのヒマ人だから放っといていいよ。オレの親戚だから、親戚。つーかトイレにでも忘れただけじゃねーの? 乾燥室とかは?」
 この場合、真樹の意見が一番冷静で正しい。教員は――吉岡琢己というらしい――目を白黒させてうなずきながら状況を説明する。

晴永くんにあんなひどいことをした悪魔メフィストフェレスである立花真樹が一番まともとはどういうことだ。
日常の謎って恐ろしい。
いや日常の謎と殺人事件でリアクションに大差ない真樹が恐ろしいのか。

「何でも女子は着替えた後に全員で風呂に入りに行って、戻ったときには関の携帯だけがなくなってたらしい。関の部屋と大浴場の脱衣所、乾燥室は捜したんだがどこにもない。他に立ち寄った場所もないそうだ」
「ゲレンデで湊さんとメアド交換した後、部屋に戻るまで二、三回いじってたんだけど。着替える前、確かにカバンに入れたのに」
 と被害者――関陽子が補足する。真樹がそれを聞いて首を傾げる。
「部屋のセーフティボックスには入れなかったの?」
「財布は入れたけど、普通携帯電話なんて入れないじゃない。一応確認したけど財布しか入ってなかった」
「そりゃそうだ」

今はセーフティボックスに入れるべきだと思います個人情報保護の観点からも。
いろいろと時代が違う。

 真樹は自分の携帯電話を取り出して開けたが、すぐに顔をしかめる。
「あ、ここアンテナ立ってないんだっけ。鳴らしたら一発で見つかるかと思ったけど」
「そうなの、どこの会社のもつながらないみたい」

携帯電話を紛失したとき一番最初にすることであり、ものすごく重要な手掛かり。

「面倒だなー。つーかそれじゃ今すぐ使用止める必要もないわけ? 関のケータイってどんなだっけ?」
「ピンクで、蝶のシールが貼ってあるの。これくらいの大きさのねこまんまのぬいぐるみストラップがついてて」
 関は指で十センチくらいの大きさを示してみせる。
「オサイフ機能とかついてる?」
「ううん、ちょっと前の古い型の奴。もう二年使ってる」

勿論、SuicaとかYahoo!ウォレットとかなかった時代!
ねこまんまが何かはわからないがゆるキャラの一種なんだろう、多分!

「結構大きなものがついていたわけだな」
 そこで、眞一郎が再び割り込んだ。関係者が怯んでいる隙にべらべらと推理を語り出す。
「そんな大きなものがついていては他の者が間違えて手に取ったということはあるまい。ポケットに入りきらん。逆に、関さんの携帯電話と知って盗んだことになる。財布等金品に手を出していない点からも、君のことを個人的に知っている人間が何らかの明白な目的をもって持ち出したと言える」
「何らかの明白な目的って何だよ、ここケータイ使えないのに」
「そこだ。関さんの携帯電話に入っているデータ、個人情報などが目当てだったと考えるべきだろう。あるいは単純な嫌がらせで関さんの携帯電話を使用不能な状態にするということも」

デキる探偵は推理をサクサクと整理する。
ここで物盗りの線を否定。

「モルダー、貴方疲れてるのよ」
 真樹が変な女口調で言って、眞一郎を押しのける。
「まーじーさんの言う通り、物盗りの犯行じゃなさそうだし? 女子高生の持ち物盗んでハアハアしたいだけの通りすがりの変態の仕業ならケータイ以外にもっと盗るべきもんがあるだろーし、ほんとに窃盗なら知ってる誰かなのは確かだね。一応全員の持ち物検査やってみれば? それで出てこなきゃ他人を疑わなくて済むわけだしさ。今やんなくて永遠に見つからなかったら後々気まずいじゃん」
「――立花の意見も一理あるな、おれも部員の誰かが犯人とは思いたくない。だからこそ持ち物検査をして、皆の無実を証明するという方法も悪くはないと思っている。どうだ? やってみないか?」
 吉岡がやんわりと言うと、隣の少年――部長の佐藤晴仁は顔をしかめたが、やがて不承不承うなずいた。

容疑者候補その2、部長・佐藤くん登場。

「それで納得できるんなら、やってもいいです」
「よし、じゃあ女子の分は関と水沢で調べろ。男子の分はおれと立花で調べる。調べる方も皆に荷物の中身を見せるんだ。出てこなかったら改めて紛失の届けを出そう。それでいいな?」
 ――なるほど。最初から教師が高圧的に持ち物検査を始めたら反感を抱くだろうが、生徒の真樹に提案させ、更にそれを部長に承認させれば当たりが柔らかくなる。真樹がこういうことを言う奴だと知った上で使っているとすれば、この吉岡というのはなかなかやり手だ。

立花真樹は政治家のせがれなので推理ではなく政治をする。
男子の持ち物検査をするのが吉岡先生・真樹で佐藤くんは調べられる側というのが重要なポイント。

 どうやらそれで合意がなされたらしい。スキー部員、もといバスケ部員たちは大人しく部屋に戻っていく。
「探偵の出番はなさそうですよ、お父さん」
 湊は肩をすくめ、テーブルに戻る。――エスプレッソがすっかり冷めてしまった。しかし眞一郎は相変わらず難しい顔で腕を組んでたたずんでいる。
「荷物の中から見つからなければ犯人はいない。――それで、どうなるのだ?」

デキる探偵は自分で問題提起する。

 父の不吉な予言通り、関陽子の携帯電話は発見されなかった。確かにそれはゆゆしき事態だ。眞一郎は指を二本立てる。
「この事件の謎は大きく分けて二つだ。一つ、なぜ電話やメールの通信ができないこの場所で彼女の携帯電話を盗んだのか。二つ、顔見知りの犯行となると、ここではバスケット部の十五人程度に限定されてしまう。通常、授業を行っている期間に学校で盗めば全校生徒が容疑の圏内に入る。少子化と言っても全校で三、四百人はいるだろう。廊下ですれ違った程度で彼女を見初めたということがありえるとして、その半分にアリバイがあっても百人ほども容疑者が残る。後一週間程度で学校は始業式だ。犯人はなぜ、その一週間を待てなかったのか。そんなに急いで関さんの携帯電話で何をしようとしていたのか――」

ときどきこうやって何が問題なのか情報を整理しよう。
しかし肝心なところには触れない。

「……あのさあ、じいさん。何でオレにまとわりつくわけ? ナイター行けよ」
「君らこそ、なぜナイターに行かない」
 身分がばれ、親の存在がばれ、女子高生との楽しい夕食が台なしになった湊はもはやナイターどころではない。夕食後に父に連れられて遊戯室に来たのはいいが、真樹がいたのは全自動麻雀の卓だった。――子供はカラオケか卓球でもしていればいいものを。

で、このシーンは何かというと、『虚無への供物』の麻雀推理オマージュらしい。
マジかよ。

「いーじゃん、折角のお泊まりなんだから普段はできない無茶をしたいじゃん。つーか本庁の警視正ともあろうお方がガキの麻雀ごときを取り締まろうって?」
「お前が自分の小遣いを全部賭けたら相手が気の毒だ。負ければ勿論悲惨だが、勝ってもこの歳にしてギャンブルであぶく銭を手に入れることを覚えたら、将来ろくな大人にならん」
「オレだって空気読むよそれくらい」
 そうしてほしいところだが、眞一郎と真樹を同時に監視するにはこの方法しかないのだ。同じく麻雀の卓についた学生はさっきも出会った佐藤。巻き込むことになったのは少々可哀相だが、こちらにも余裕がない。窓際から北に真樹、東に湊、南に佐藤、西に眞一郎。最初の親は湊。指先でドラ牌を弾いて表返す。

ついに真樹のみならず自分の父親を「監視」しなければならないというこの事件における自分の役割を悟った俊介。
容疑者候補の佐藤くんが面子に入っているのは勿論意味がある。

「無論リスクなきゲームなど楽しくはあるまい。お前たちが勝ったら何かうまいものをおごってやろう」
「ヤだよオレお前らとメシ食いたくないよ」
「お前が負けたらうちの書庫の整理を手伝ってもらう」
「――佐藤先輩、何が何でも勝ちますよ。こいつら金持ちですよ。松阪牛の牛丼とか一缶ン万円のキャビアで海鮮丼作りましょう。折角だから元警視総監のじーさんにビストロSMAPに出てもらって、ついてって楽屋でお相伴するってのもアリ?」
 真樹が悪い顔で佐藤にささやく。佐藤は妙な取り合わせに苦笑している。

THANATOSメンバーがビストロSMAPに呼ばれてフジテレビで殺人事件に遭遇するプロット、なくはなかった。
ビストロSMAPが早く終わったと思うべきなのかあれでも長続きした方と思うべきなのか。

「あんまり期待すんなよ……あ、その西、ツモです」
 ――何だかんだ言いながら、わずか二分で一局目が終わった。真樹が押し殺した口調で解説する。
「ざわ……ざわ……! 佐藤部長、リーチ一発ドラドラ、更に裏ドラもだと、馬鹿なッ……! そのとき立花真樹に電撃走る! 何という運気、何という天賦の才ッ……! この一見普通の高校生が、本性は根っからの博徒、まさに悪鬼羅刹ッ……!」
「真樹、その妙な喋り方には元ネタがあるのか?」

アカギ、ついに完結したそうですね。
麻雀のルールをあまり知らないのを何となくごまかした!

 眞一郎は牌を崩しもせず、腕を組んでじっと考え込んでいる。将棋や囲碁と違って運の要素が絡む以上、手筋を検討しても仕方がないと思うのだが、やがて重々しくつぶやいた。

いや、綾辻行人先生が真剣にやってんだからお前も真剣に麻雀極めた方がいいんじゃないかな。
不完全情報ゲームに気合い入れてる人結構多いぞこの業界。

「なかなかいい打ち筋だ。麻雀は運否天賦のゲームとはいえ見込みがある」
「あ、ありがとうございます」
「しかし我々も負けてはおらんぞ。もし私たち親子が勝ったらそのときは、この事件はせがれの俊介が必ず解いてみせよう!」
 一瞬、父親の言葉の意味がよくわからなかった。つい首を傾げてしまう。
「え、ぼくですか?」
「……じーさん、わけがわからんにもほどがある」

真樹に見せ場を作るためだけになぜか自分にリスクのない勝負を始めるわけのわからない湊眞一郎元警視総監。
せがれか真樹の探偵行為が見たいだけの迷惑なファン。
彼の需要は読者の需要。

しかしここで彼は実は探偵だけが使うことを許される神聖魔法を使っている。

 呆れる真樹の隣で、眞一郎が胸を張って見得を切る。
「せいぜい吠えるがよい、小童ども。ただ一回の勝利を拾っただけで調子づくものではないぞ。この程度で流れを崩される我々ではない。次の局はもらった。運否天賦は自らの手で掴み取るもの。勝機は我らにあり!」
「てゆかあんた福本伸行もチェックしてんのかよ、幅広いな中高年」
「麻雀マンガは本来中高年の読むものだ。さあ、どうした! 洗牌だ!」

台詞は格好いいのだが。

 実に雄々しく言い放った眞一郎であったが――オーラスを終えたとき、その自信には何の根拠もなかったことが判明した。勢いよく牌を崩すと、真樹は回り込んで向かいの佐藤の肩を抱く。
「雀王! 雀王佐藤部長!」

超一瞬で負けた。
これ、後で回収されます。

 真樹に手を握って振り回され、佐藤は微妙な表情だ。笑顔を作ろうと思っているのだろうが、戸惑っているような。真樹は悪い笑みを浮かべて彼にささやく。

真相を全く知らないので何気なく佐藤くんに罪深いことをしている真樹。

「どーします雀王様、築地の寿司? 銀座のフグ? ミシュランの五つ星? 松阪牛? ウニ丼? 寒い季節だし、アンコウ鍋とかもいいっすねー」
 眞一郎は一人、点棒を数えて首をひねっている。
「おかしいな、阿佐田哲也も『アカギ』も『天』も全部読んだのだが」
「どーゆう理屈だよそれ、『ヒカルの碁』全巻読んだら棋士になれんのかよ。デスノート読んだら念力で人が殺せんのかよ」

ワンピース読んだら海賊になれるのかよ。

「お父さんの勝機ってそのことですか。ぼくは麻雀で推理と言うからてっきり『虚無への供物』のオマージュかと思っていました」
 自販機の薄いコーヒーを啜って湊がつぶやくと、眞一郎がいじけた目でこっちを睨んだ。
「……俊、一人でやたら小難しい手を作っていたのはそのせいなのか? 二対二のチームプレイなのだから、私をサポートするのが筋だろうが!」
「そうなんですか? ならそう言ってください。お父さんこそぼくのサポートをしてくださいよ」
「私が少しばかりサポートをしたところで国士無双は無理だ、なぜわからん!」

湊俊介のプレイスタイル。
彼が「正統派の変人探偵」だが常識の縛りを突破できないことの表れでもある。
「解決のためなら何でもする」わけではない。

「つーかどう見てもお前らにチームプレイは無理だ、顔見りゃわかる」
 散々こっちの妨害をしては糞手で上がっていた真樹が偉そうに言い放つ。彼のせこい立ち回りがチームプレイというものなら、湊は別に勝てなくてもいい。舌打ちして点棒を卓に投げ、眼鏡を押し上げる。

立花真樹のプレイスタイル。
彼がセコい手で上がりがちで真面目にやっているプレイヤーにキレられがちなのは『溺れる犬は棒で叩け』にも出てくる。
それはそのまま真樹の探偵スタイルであり、何でもするのでしばしば犯人をキレさせる。
キレさせてもいいと思っている。
彼は湊俊介がしないことをし、湊俊介がすることをしない。

「わかりましたよ、それじゃぼくが敗戦責任を負いますよ。フォアグラでもトリュフでも松茸でも好きなものを言うがいい。――おっと、立花君は舌が肥えているからな。つまらないものをおごったのでは申し訳ない。店は厳選してくれたまえ。残念ながら私が行きつけの店は上等のワインが揃っているところばかりだ、高校生を連れていくわけにはいかん。今どきの子供はどこに行きたい? ん?」

負けたくせに超偉そうな俊介。
彼が眼鏡を上げる動作はキメポーズなのでタイミングを厳選して使う。

「……佐藤部長、こいつムカつくから何かシメませんか。今からでも罰ゲームを上のゲレンデで雪中行軍とかにしませんか」
「いや、今雪中行軍したら死ぬだろ……」
 佐藤は引き笑いを浮かべている。窓の外は雪が斜めに降っている。降り始めたのは幸いにして日が落ちた後だったが東京都内なら間違いなく電車が止まり、首都機能が麻痺している天気だ。ナイターすらも中止になったらしい。

いつの間にかここは「吹雪の山荘」になっていた!
連続殺人事件だと大変なことだが、この携帯電話紛失事件では別の意味を持っている。
ここは天気を窺う佐藤くんが重要なのを、吹雪の山荘状況というミステリ者が大好きな情報で覆い隠す。

 眞一郎は、罰ゲームの他にも目当てがあったらしい。真樹の顔に指を突きつける。
「ともかく、勝った者がこの事件を解決する資格と権利を有するのだ。真樹君、君は探偵たる権利を得た。さあ、我々の前で華麗に謎を解くがいい!」
「じーさん、シラフで酔えるって羨ましいな……」

強引に萌える探偵の見せ場を作っていく年寄りの図々しさ。
探偵として解決するのではなく探偵たちに解決の場を提供する謎の男、湊眞一郎。

「事件を解決するって、関のケータイですか? 何かわかったんですか?」
 いまいちノリを理解していない佐藤に、眞一郎は指を振ってみせる。
「まあまあ、これからこの真樹君が見事なる帰結を見せる。楽しみにしていたまえ」
「何勝手に約束してんだよ。……もー、仕方ないなー。じゃ、部長、部員とよっしー、全員ここに集めてくれませんか」
「おお、意外とやる気ではないか真樹君! それでこそ探偵だ!」
 真樹がひどく疲れきった顔をしているのが気になるところだが。

証拠が出揃っておらず、真相を全く見抜いていないのに「もー、仕方ないなー」で披露できる芸がある辺り、すごいな立花真樹。

「立花、本当に解決できるのか? 手がかりとかあるのか?」

実はめたくそ不安な佐藤くん。

「あー、そんなもんいらないいらない」

真樹は真相を何も見抜いていない。マジで。

「流石は真樹君だ!」
「はいはいじっちゃんの名にかけてー」
 いかにもやる気なさそうに真樹は手を振ってみせた。
 関係者全員が遊戯室に集まったのは、十分ほど後。もう日付が変わりかけている時間だ。寝ていた部員もいるらしい。幾人かはジャージ姿だ。
 真樹は一同を見回すと、二度柏手を打ち、一礼して大声で唱えた。
「ないないの神様、ないないの神様ー、関のケータイを見つけてくださーい」

『× -ペケ-』より。
――何と立花真樹が、魔法を使い始めた。
ここで5年後の作者はたいへん驚いた。
お前、そんなことできたの!?
マジで!?
この後の湊のリアクションにも驚いた。
マジで!?
お前そんなこと言っちゃうの!?

さあ無料公開はここまでだ!
驚愕の真相解説はこの後も続く!

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