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里山で子育てをすることについて考える。

過疎地で子育てをして11年。
3年前に、小学校の児童が少ないということで娘の通っていた小学校が実質廃校になり、隣の小学校と統合した。そしていま、その学校すら無くなり、隣校区の子ども達も通う小中一貫の義務教育学校を作る案が出ている。
いま、私の暮らしている地域では、マイホームという大きな買い物をしてしまった世帯は残っているけれど、親と同居していた人や借家の人は、家を購入するのを機に出ていく。行先は市内の人口の多い校区や、隣の大きな市だと聞く。
 子どもが少ないから勿論保護者も少なく、役員が当たる確率が高い。僻地なので消防団や、自治会の役員、神社やお寺の仕事まで引き受けている人もいる始末。こんなに負担が多いのでは借金という人質がなければ誰だって出ていきたいだろう。
 過疎の町に家庭を築いている子育て世代の人は、親や自分の育った土地に愛着があって、面倒臭いし辺鄙な場所だけど、捨て置けない、と思った立派な息子や娘たちだ。それなのに、家を構えて、地域を担っているのに、母校が草だらけになって、何のメリットもない。
 市の計画案を見た時から、すごく嫌な気持ちだ。 私の暮らすような地域の事を、行政は死んでいく町だと諦めているのがありありと分かるから。
 私は何も、皆が親元で暮らすことを選ぶべきだと言っているのではない。私は圧倒的に、住む場所は人の自由で、どんな風に暮らすのか他人が口出すべきではないと思っている。だけど、このまま、そこらじゅうの里山が限界集落になって消滅するのを放っておくべきではないと思うのだ。
 例えば農業だけれど、我が家は稲作を義父から夫が引き継いでいる。しかし、周りで米を作っている人は60代が最年少だ。70代、80代が殆どだから、近々一気にに米の収穫高が下がる時が来ると思う。
 隣の市には梨や柿が有名な産地があるけれど、果樹園に跡取りがいる家は殆どないと聞く。日本の食の安全保障は本当に厳しい状況なんじゃないか。
 こんな体たらくでは今はまだ若い人が残っている校区だって、先行きが怪しいと、計画を見て感じた。
 義務教育学校を作って、広い範囲から子どもを通学させるという事は、急な発熱や災害などで迎えに行く場合も時間がかかる。普段の学校からの帰宅時間も遅くなる。
 そもそも、お稽古事や塾に行くにも、自転車で通うというわけにはいかない場所なので、親の経済力だけでなく、時間的余裕があるか否かで、街の子どもと田舎の子どもの間の教育格差、経験格差が広まってしまうのだ。
 僻地の子ども達はたまたま小規模校区に生まれただけだ。それなのに、教育の機会に出会うチャンスがもともと少なく、生まれながらにして街中の子に比べてハンディを負っている。しかも、バスで通学することになって、道草を食う楽しささえ味わえない。友だちの家が遠く、仲間と約束をして、子どもだけで遊ぶ自由も味わいにくい。
これは、小規模校区の子ども達が、相対的に経験に乏しい育ち方をしていることに他ならない。
 子どもの将来を思えば、子育て世代、これから子育てをする世代は、こんな状態の田舎を選ばなくなる。
 今、このような統合計画を立てているという時点で、今後も子どもが減る地域は集約されていくのは明白なのだから、関市は選ばれない市になるだろう。
子どもが減っている現状を見たら、ある程度の統合は否めないのは分かる。しかし、僻地になってしまっている地域の立て直しに何の努力もしないまま、指をくわえて見ているだけでは駄目だ。どうするべきか。
 まず、義務教育学校を作るのであれば、そこの学校の特色や、通ってよかったと子どもが思えるような教育をするべき。
例えば、不登校の子どもに長けた教員や常勤のスクールカウンセラーを置いたりして、学校に来にくい子どもや、その保護者に手厚い学校にする。
発達障がい等、個別の学習支援にも力をいれた取り組みをする。
例えば、放課後にプロによる指導の習い事が出来るようにする(月謝は別途徴収する)。英会話や、ピアノや、そろばんなど、遠くまで送迎しなくても放課後に習えるのであれば、子どもも友達と一緒に習えるし、保護者の負担が少なくて済む。
高校受験の対策も、学校内で民間の指導者に教わることが出来たら、地域の格差は減るだろうと思う。今どき、高校受験のために学習塾に行くのはごく普通のことなのに、市内の外れに住む子どもは送迎がないと塾にすら行けないのだから。
 僻地ばかり優遇されるのはずるい、という声も上がるかもしれない、だけど、僻地に住む人に少しだけメリットを用意しなければ、加速度的に田舎を捨てる人が出るだろう。
 そうやって、選ばれる教育を市がやっていたら、少なくとも「出ていきたい」という感情に歯止めがかかると考えている。

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