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極楽にきています

かつてはあたりまえのように、週末に「大陸」に行っていた。
(島国イギリスではフランスやオランダ、ドイツなど大陸側のヨーロッパの国のことをまとめてコンチネントと呼ぶのだ)

ちょっとカスレを食べにパリに。
ちょっとビールを飲みにドルトムントへ。
ちょっとピザを食べにナポリへ。

そして、毎年11月になると行っていたのが、イタリアのトスカーナ地方で行われる白トリュフ祭りだ。

けれど、ずっと一緒に行っていたお友達が、コロナのロックダウン開始と共に、駐在期間の繰り上げで日本へ帰国。
同時に、行くたびに泊まっていたAirBnBのオーナーさんが、コロナを機にAirBnBをやめてしまった。

新しい仕事があまりに波瀾万丈だったこともあり、すっかりご無沙汰のまま気がついたら、2年が経過していた。

これじゃいかん。今年こそは「日常」というやつを取り戻すのだ、と腕をまくり、6月から全て手配した。
これまで通り、金曜夜にヒースロー発、日曜には帰宅する、トリュフの週末だ。

豚ではなくカワイイお犬さまがハンター

朝一番にレンタカーをピックアップし、村にたどり着くと、丘のてっぺんから見下ろす先にはほわっと霧がかかり、手前にオリーブとオレンジの木々が揺らいでいた。

ああ、トスカーナに来た。

屋根の瓦がオレンジ色になると「ああ南側にきたなあ」とつくづく感じる。

同じレンガ造りだというのに、不思議に、北ヨーロッパの建物と違ってほんわか目に暖かい。

初めてこのお祭りのことを聞いた時、まったくどんなものか分からなかった。
なにせ情報がほとんどネットにない。あってもイタリア語のみ。
だから、宿とのやりとりから駐車場の確認、レストラン探しまで、イタリア人の同僚ステファノがネット検索や電話をして助けてくれた。

「ミラノっ子としてはなんでアルバじゃないのかといいたいとこだけど、アルバは観光色が強すぎちゃうしね」

そういって一緒に宿やレストランに連絡してくれたっけ。

それから6年。

今回行ってみたら、いろんなお店でメニューや営業時間が縮小されてしまっていた。

お昼に行くはずだった店も、今年は通常メニューのピザしかやらないと言われてしまった。

仕方なく、坂を下りた少し村はずれで、チャリティで開放されている教会の食堂を訪ねることにした。

ワインは赤のみ。
だってトスカーナだよという顔をされた。
ラベルもない本当の意味での「ハウスワイン」
壁にはピエタや聖母子などの絵画がかかる
前菜はトリュフチーズやトマトの乗ったパン。
途中、自慢だから景色をみておいでといわれた。うつくしい。
もちろんトリュフもだけど、バターが薫り豊かでおいしい
メインは目玉焼きを選択。王道。
デザートワインに、お母さん手作りのペストリー

おりしもロンドンでは猫の昼餉の時間になった。
見守りカメラで中継しながらカリカリとトリュフでお互いランチを堪能した。

妃殿下もカリカリにてランチ。

宿に戻って、休憩。
なにもせず、窓からの景色をみて、ゴロンとする。
やっぱり、空白って大事だなあ。

そして夜6時過ぎ。
表に出ると、人出がピークに達していた。

トリュフ入りのゴルゴンゾーラに、トリュフの練られたニョッキ。
機内持ち込み用の小さなジップロックに収まる範囲で、瓶入りのトリュフペーストも。
人混みで賑わうテントの中で、いつもと同じ場所に、いつものおじさんが出店していることに、なんだかホッとしてしまう。

いざ、夕飯なり。

牛肉のカルパッチョ。考えたら前回もこの店でこれを食べた
そして再びの目玉焼き。これも前回同様。

ここ数ヶ月、炭水化物とアルコールを制限してダイエットしていたので、胃袋が小さくなっている。

いや、年齢もか。

美味しいものを少し食べる方が嬉しい年齢になったんだなとしみじみ感じてしまった。

さあ、明日ロンドンに帰ったら、貝印のスライサーでカットして白トリュフ卵かけご飯を食べよう。

極楽極楽。

いただいたサポートは、ロンドンの保護猫活動に寄付させていただきます。ときどき我が家の猫にマグロを食べさせます。