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バーボン・ストリート・ブルース   シンガー高田 渡と高石ともや

バーボン・ストリート・ブルース 高田 渡
 2008年に出版された文庫本、ちくま文庫というのがいい。なんだかいい。
何時ものように本の内容や感想ではなく、本を読むことから脳内に来る私の妄想的な話となる。

バーボン・ストリート・ブルース

 1960年代、日本に二人のフォークシンガーが現れた。若い人はおそらく知らないと思う。
それが高田 渡さんと高石ともやさんだ。この2人の生き方が面白い。

高田 渡さんは亡くなるまで東京三鷹に住んでいた。
高石ともやさんは現在京都に住む。

 私はJ-POPが見直されたように、今度はSNSと何でもネットに頼るデジタル世界、そのカウンターカルチャーとして昔のフォークソングが再ブレイクするのではと思ったりしている。ライブで歌詞もテンポも音量も微妙に変わっていくアナログ性が面白い。また機材はギターオンリーでも可能。

2人を有名にした曲。

高田 渡 自衛隊に入ろう ある種の反戦ソング

高石ともや 受験生ブルース これは大ヒット

高田 渡
 生誕1949年1月1日 2005年4月16日(56歳没)

最後の花火だった

 さんは 子供時代、深川で貧困生活を送る。夜間高校で仕事をしながら10代から歌っていた。
中年以降は東京三鷹に住んでいた。子供もおり、電気契約が15アンペア仕様、そんな昭和のアパートに住んでいた。さんの妻がドライヤーを使う時、ブレーカーが切れないように照明など他の電気製品の電源を切る。(本人談)
そんな昭和の生活だ。

 興行というどさ回りが無いときは、吉祥寺のいせやで昼間から飲む。その姿はよく目撃されている。さんの活動はずーっと同じで、地方へ興行、そして飲みまくる。
私が高校生の頃、さんが参加していたジャグバンド「武蔵野タンポポ団」、そこでで歌われた「自転車に乗って」が好きだった。

 国やエリートに搾取されているが、それほど不幸でもない労働者、職人、昭和の復興を支えた日本の人々、その姿を歌う。
何故か急速に老けて56才で亡くなってしまった。
さんの曲は、日本の古い詩が歌詞となってもいるもの多く、正に日本のブルース。

 吉祥寺のいせや
 朝11時頃、焼き鳥を焼だす。炭が安定しないので凄い煙となる。警報レベル。
オシャレしている女性はいせやの前を避ける。一方、開店を待つオッサン達は匂いを嗅いでいる。

吉祥寺のいせや 焼き鳥は直ぐに人気の部位が売りきれる

高石ともや
 生誕1941年12月9日(82歳)
立教大学文学部日本文学科卒業、この時代に私立大学を出ているので、裕福な家庭だったと思う。当時の大学生の流れからフォークへ行き着いた。歌声は綺麗だ。

トライアスロンの伝道師だった

 ともやさん、1960年代の大学生やエリート達、反戦、社会批判などの世論に巻き込まれていた。牧歌的な歌を拒否する時代でもあった。風当たりは強い。
1970年代、家族と田舎へ引っ込んで生活していた。その間に訪れたニューミュージックブームなどに背を向けていた。
これもある今思えば人生の選択だったのだろう。

 田舎の廃校に住みながら、ランニングを始めていた。酒もタバコも止めて、マラソン大会にもでるようになる。その後、日本で初めて行われる本格的トライアスロン、皆生トライアスロンで優勝する。

その記事を読んだ私、「高石ともやさんがトライアスロンで優勝!」と驚いた。

 今は京都に住むともやさん、80才を越えても元気に存命している。これもトライアスロンのおかげだと思う。
私もトライアスロン黎明期から選手を続けていたので、何度かともやさんと大会会場でお会いしている。凄く存在感があり、何時も笑っていた。

左がともやさん、中央は恩師トーマス氏、そして私、何故か富士登山競走のTシャツ

 沖縄の宮古トライアスロン・セレモニー会場の外、ともやさんが芝に座って歌っていた。その周りに車座でトライアスリートが囲んでいる。
苦しくても、そこに大自然がある、トライアスロンという大きな遊びは希望に満ちている。そんな世界を歌っていた。

二人の邂逅
 その動画がアップされている。何時までかはあるかは知らないが、ここにリンクする。
ドキュメント2004年 NHK

 常に人生は選択の連続であり、その選択を他人にゆだねる人々がなんと多いことか、この2人は常に自分で選択している。
私も自分で人生を選んだ。時に戦略的に、またやけくそで、それでも悔いは残る。そして今がある。
不思議だけど、人生も終わりに近づくと、そのように生き抜いた人達と邂逅する。人生の不思議だ。

 流れ流れて同じ島にたどり着く。そしてそこにとどまるか、また流れていくかは自由だ。

 生活の柄 これは一時期の私の気分。
渡さんは本当に疲れ果てて、寝入ってしまった。もう起きることはない。

生活の柄 
作詞 山之口貘
作曲 高田渡

歩き疲れては
夜空と陸との隙間にもぐり込んで
草に埋もれては 寝たのです
ところかまわず 寝たのです
歩き疲れては
草に埋もれて 寝たのです
歩き疲れ 寝たのですが
眠れないのです

近頃は眠れない
陸をひいては 眠れない
夜空の下では 眠れない
ゆり起こされては 眠れない
歩き疲れては
草に埋もれて 寝たのです
歩き疲れ 寝たのですが
眠れないのです

そんな僕の生活の柄が
夏向きなのでしょうか
寝たかと思うと 寝たかと思うと
またも冷気にからかわれて
秋は 秋は
浮浪者のままでは 眠れない
秋は 秋からは
浮浪者のままでは 眠れない

歩き疲れては
夜空と陸との隙間にもぐり込んで
草に埋もれては 寝たのです
ところかまわず 寝たのです


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