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【1000字書評】頭木弘樹『自分疲れ ココロとカラダのあいだ』

【概要】
創元社さんが出している「あいだで考える」というシリーズの1作目です。「10代以上すべての人に」というキャッチコピーがついているため、とても読みやすいです。著者の頭木さんが書いた『絶望名人カフカの人生論』がとても面白かったので、こちらも読んでみました。

自分のココロとカラダを分けて考えることは、哲学者のデカルト以降当たり前に捉えられてきました。一方でどこからがココロなのか、ココロは脳科学的に電気信号でしかなく、幻想に過ぎないのか・・・。その答えはまだ出ていません。

この疑問について、文学作品に精通している著者が様々な文学を引用して説明しています。また、著者の頭木さんは難病である潰瘍性大腸炎の当事者でもあり、幻肢ならぬ幻腸を経験したことがあるそうです。そうした自らの経験をもとにされており、読み進めていく中で一緒にこの難問について考えることができる本です。


【感想】
タイトルにもある自分疲れ、最近すごく感じます。でもいったい自分の何が疲れているのかよくわかりませんでした。特に痛いところもないし(強いて言えば腰が痛いけれど、疲れている感じとは違う)、ココロと言ってもどうすればよいのかわからない。そんな時に読んで「そうか、分けて考える必要はないんだ」と納得することができました。

50ページの『「真実」はたいていあいだにある』という一文がとてもしっくりときます。心身二元論ではなく、自分というものは体も心も環境も全部をまとめた存在なんだとふと気づいた瞬間、とても楽になりました。あるようでない。ないんだけどある。最近わたしが関心を持っている仏教の考え方にある「空」の思想に似ている気がします。

「空」は全てのものは存在しているように感じるだけで、実際はすべて繋がっているという考え方です(わたしの理解なので学者さんに怒られるかもしれませんが・・・)。なので、自分は常に変化していくし、切り分けることもできないのです。そう考えた時、自分だけではなくて、他者やこの世の中のすべてを大切にしたいと思えるようになりました。

ちょっと話は逸れましたが、この本の問いである「自分とは何か」ということに答えはありませんし、書かれてもいません。あとがきで頭木さんが『ひとつひとついっしょに考えてみてほしい』と述べているように、本と対話しながら考えていき、結局よくわからないけれど気分が楽になるという不思議な本です。

是非皆さんもご一読ください。




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