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学力差恋愛 1

あらすじ

インターネットがなかった時代のノスタルジックな恋愛ストーリー。
「直接会ってふたりきりで話す」ことが恋愛のスタートラインであり、それは予期せず始まるものだった。



生成りのカーテンが揺れていた。
気がつくと中庭を挟んだ向かいの教室ばかり眺めている。南館と北館に校舎が別れているということは、そこに明確な学力差が存在し、北館にある8組と9組はいわば見放されたクラス。どうしようもない生徒が集まっていた。

中学1年の英語の授業でいきなり躓いた。
アメリカ人講師がなんの説明もなくいきなり英語で授業を始める。講師の発音を真似てみろという授業だったらしいが、th の発音ができず、講師がなんども私の席までやってきてしつこく発音するのを見せていた。
3度目は無視して答えなかった。
すると近くの席の生徒が
「舌を歯で挟むんやで」
と小声で教えてくれたが、それも無視した。

その後、その講師は私の机の前には来なくなったし私は全ての授業を無言で通した。

それでも義務教育であるから3年経てば卒業となる。

地域の教育政策は歪んでいて、受験戦争や教育格差の緩和を掲げ、総合選抜と呼ばれる大学の共通テストのようなものを高校入試で実施していた。
この共通テスト的な物をクリアすると居住地によってどの高校に入学するかが決まる。
義務教育の校区(学区)制と同じで勉強したい側にもしたくない側にもメリットの少ない謎システム。
表向きには「進学校」という言葉は県内の公立高校の間では使われなく(使えなく)なっていたが学校間格差は確実に存在していた。

入試の成績優秀者には一定数の越境入学が認められていたし、成績トップで入学した女子生徒が総代として壇上に立っていたし、クラス分けは成績順だったし、学期ごとのテストの順位と点数が廊下に張り出されていた。

一年生は全科目必修。二年生からは選択制となっていた。まぁ大学進学だけを見据えたカリキュラムだ。90分の授業も選択科目の中で存在していた。

毎年、東大や京大に現役生を送り込む学校なので勉強してれば(大人しくしていれば)あとはとやかく言われない。校則も緩い。
実際同学年からも京大合格者が出たが、その生徒も学生服の下にパジャマで登校していた。

私は謎システムによって県内でも指折りの進学校に入学することになってしまったということだ。







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