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学力差恋愛 2

高校一年の時は辛うじて南館の住人であったが、二年から北館に追いやられた。数学のテストを白紙で提出していたり、体育の授業ですら毎回自主的に見学していると当然そうなる。

北館の校舎の空気は澱んで冷たく、じめじめしていて諦めに支配されていた。クラスの三分の一は短ランに鉄板入りの鞄、三分の一は気配を消しているやつ。三分の一はどうしようもない落ちこぼれか天邪鬼。
私は天邪鬼を拗らせた落ちこぼれだった。

渡り廊下に対する二次元的幻想は当時からぼんやりあったような気がするが私の世界の現実では関所のような場所で、理由がなければ誰も通らない。学校からの扱いがあからさま過ぎてお互いどうしたらいいか分からずにいた。生徒は当然ながら教師の世界にもヒエラルキーが存在し、北館に来る教師に何かを求めるのは酷だった。

そんな歪んだ世界だが、居場所はあった。
私の机と椅子があった。見えない振りはされても居ることを否定はされなかった。
いじめもなかったし、たいした事件も起こらなかった(誰かがトイレでタバコを吸っていたり、バイクで登校しているのが見つかったりする程度はカウントされない)
お互い別の価値観を持つコロニーには口出しをしない暗黙のルールがあった。
ある意味おおらかで安心感のある世界でもあった。

家にいるのが苦痛だったので毎日登校した。
ただそれだけ。
鞄の中には弁当箱だけ入っていた。それすらない日は何も入っていない鞄だけを持って登校していた。なにも起こらない。誰とも話さない。


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