#11 「中途半端な気持ちでは農家は務まらない」―お客様から信頼を集める本気の梨づくり
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#11 「中途半端な気持ちでは農家は務まらない」―お客様から信頼を集める本気の梨づくり

フロンティアファーマーズ|生産者のストーリー

伊藤梨園
伊藤正且まさかつさん

県内の農業振興を目的に次代を担い地域のリーダーとなる農業者を育成する「福島県農業総合センター 農業短期大学校(アグリカレッジ福島)」。1935年に「福島県立修練農場」として開設後、幾度かの組織変更を経て1988年から現校名となり、毎年数十名の農業を志す若者が、県内各地からその学びの門を叩いています。

アグリカレッジ福島の卒業生の多くは今、県内各地で農業や農業関連産業、食品産業などに従事しており、地域の食を支えるキーパーソンとして活躍しています。郡山市三穂田町で梨を栽培する伊藤正且さんも、その農業短期大学校の卒業生の一人。須賀川出身の伊藤さんは、農業短期大学校で奥様と出会い、奥様の実家である「伊藤梨園」を継ぎました。

梨栽培に従事し25年。代替わりして20年。社会人としての人生を梨づくりと共に歩んできた伊藤さんは今、どのような想いを胸に農業と向き合っているのでしょうか。

思いもしなかった進学が結婚という「転機」に

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伊藤さんの実家は須賀川市仁井田で米や野菜を生産する農家。しかし次男だったこともあり、自分が農業をやることになるとは中高時代には思いもしなかったと言います。「高校を卒業したら普通に就職すんだべな」——そうぼんやりと考えていた頃、両親に「兄貴と同じ学歴をやるから」と農業短期大学校への進学を勧められました。

進学した先でもまた「ここを卒業したら農業関連の会社にでも就職すんだべな」と思いながら勉強をしていたという伊藤さん。しかし、同じ学び舎で果樹生産を学んでいた奥様と出会ったことで、大きな人生の転機を迎えます。

「当時の農業短期大学校は農産と畜産と園芸の3学科に大きく別れていました。園芸学科はさらに野菜と花と果樹の3つのコースに分かれていて、私は野菜コースを取っていたんですが、かみさんが果樹コースにいたんです。付き合うことになって、将来について話した時に、俺は梨のことなんて全然知らねえなと。それで、2年目は果樹コースに切り替えさせてもらったんです。こないだ同窓会に行った時にも先生に言われましたよ。野菜コースから果樹コースに切り替えた生徒は後にも先にもお前だけだって。

卒業してからすぐに結納して、21歳になる前に結婚しました。将来なんて考えてなかったのに、蓋を開けてみればここに就職した感じになっちゃってね。」

私が見つけたのか見つけられたのかわからないですけど。そう言って照れ笑いを見せながら、伊藤さんは奥様との馴れ初めを語ってくれました。

本当の大変さがわかったのはずっと後になってから

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現在伊藤さんは、自宅周辺の約15,000㎡の畑でさまざまな品種の梨を栽培しています。この地で古くから続く農家の12代目となりましたが、梨農家としては3代目です。

「もともとは田畑をやっていたんでしょうけど、戦争の時、疎開でここに来ていた人たちが山を切り開いて果物と野菜を作ったみたいですね。で、戦争が終わって帰ったあとに祖父がさらに山を切り開いて桃と梨を植えたそうです。結局桃は土地に合わなかったのか、私が来た時にはもう梨一本になっていました。

それにしても、ここに来た最初の頃は大変でした。1年間学んだのもそれはそれでいい経験でしたけど、学校と実践は違いますからね。覚えることが多いし、果物はひょうとか霜とか台風とかの自然災害をもろに受けますから。ここに来て2~3年目に台風が直撃した時には実が相当落ちました。

ただ、あの時の私はまだ経営者ではなかったんで、落ちた梨を拾うのが大変だなと思うぐらいで。27歳で代替わりしてもう20年近く経ちますけど、本当に大変さがわかってきたのは、もっとずっと後になってからです。」

お客様の期待に応えるプレッシャーは半端じゃない

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今、伊藤さんの梨園では、早生品種の「喜水」から始まり、幸水、豊水、二十世紀、あきづき、南水、にっこりなど、8月から11月にかけて収穫時期の違うさまざまな品種をリレーのように栽培し出荷しています。

「古い木だと45年以上経つものもありますけど、木は古くなると実の出来が悪くなったり収穫量が落ちたりしてくるので、古い木を植え替える時に品種も替えることがあります。梨の場合、実を取るまでに8年ぐらいかかるので、いろいろ先のことも考えながら、毎年少しずつ古い木の更新をしていきます。

ただ、震災以降の4~5年の間は、このままここで農家ができるかどうかわからなかったので木の更新ができませんでした。3年ぐらい前からようやく以前のように木の更新を再開しましたけど、まだあと5年ぐらいは実が取れないわけですし、その間は古い木を使うしかない。でも古い木は弱いんで病気になりやすい。だから、あと数年は大変です。

収穫が近くなると、毎年ドキドキしますね。常連さん達はみんなうちを信頼してくれて、注文してお金まで払って帰っちゃう。これで台風でも来たらどうすんだってね。期待に応えるそのプレッシャーは半端じゃないです。」

4年ほど前にも雹の被害を受けた伊藤さんの梨。しかし、その年はふくしま逢瀬ワイナリーが稼働を始める年で、雹で傷つき贈答用として出荷できなくなった梨をワイナリーが買い取ってくれました。「捨てる神あれば拾う神ありですね」と伊藤さん。以後、伊藤さんが生産する梨の一部は「OUSE Poireポワール Japonaiseジャポネーズ」という名のリキュールに生まれ変わり、好評を博しています。

「絶対に継がせるという意識はないんです」

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現在は夫婦二人を中心に、秋以降の繁忙期には奥様の妹さんの手も借りながら出荷の作業に追われる伊藤さん。しかし、収穫作業は基本的に伊藤さん一人で担っています。

「シーズンにはだいたい朝の5時から12時まで畑で梨をもいでいます。梨は重いんで若い頃は体も作れて一石二鳥だと思っていたんですけど、最近は腱鞘炎になったり腰を痛めたりして、きついと感じる時もありますね。

23歳になる息子がいて、今は会社員をやってますけど、いずれ戻ってくるかは…どうですかね。前にじいちゃんに言われたことがあるんです。孫の代まで梨をやってもらえれば俺は幸せだって。ひ孫までは強制しないと。それがあるんで、私もあまり息子とそういう話はしたことがないし、絶対に継がせるっていう意識はないんです。

ただ一つ思っているのは、自分の意思で就職したのであれば、そっちの道をしっかり頑張らないといけないということ。継ぐか継がないかは本人次第ですけど、中途半端な気持ちでは農家は務まりませんから。」

最後の言葉には、25年にわたり積み上げてきた伊藤さんの農家としての誇りが垣間見えました。その肩に感じているのはきっと、たわわに実った梨の重みだけではないでしょう。婿として受け継いだ「世代」、お客様からの「信頼」、きっとそんな重みも左の肩に感じながら、伊藤さんは今日も3代つないだ自慢の梨園へと歩を進めます。

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伊藤梨園
福島県郡山市三穂田町大谷字南蟹沢8
Tel/Fax 024-953-2009

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<伊藤さんの梨が買える場所>

■伊藤梨園 直売所
福島県郡山市三穂田町大谷字南蟹沢8
Tel/Fax 024-953-2009

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■愛情館
福島県郡山市朝日2丁目3-35
Tel 024-991-9080
ウェブサイト

■ベレッシュ
福島県郡山市喜久田町字四十坦6-47
Tel 024-973-6388

■旬の庭 久留米店
福島県郡山市久留米2丁目77-1
Tel 024-945-7483
ウェブサイト

■旬の庭 大槻店
福島県郡山市大槻町字殿町64-1
Tel 024-966-3512
ウェブサイト

■ポケットファームおおせ
福島県郡山市逢瀬町多田野字下町屋101
Tel 080-6041-3872

取材日 2019.8.26
Photo by 佐久間正人(佐久間正人写真事務所)
Interview / Text by 髙橋晃浩Madenial Inc.


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フロンティアファーマーズ|生産者のストーリー
福島県郡山市。開拓者精神が息づくこの地で農業の世界に生きる人々の姿をインタビュー記事と写真でお伝えします。彼らがどのように「農」に取り組み、受け継ぎ、繋いでいるのか。その想いを、彼らの生の言葉から感じてください。“作り手の顔が浮かぶと、食はもっと美味しく豊かになる”/運営:郡山市