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今観るべき映画『デトロイト』

メッセージ性を強めたかったため、いつもと敢えてタイトルを変えました。

今Twitterで拡散されて話題になっている、ミネソタ州ミネアポリスで起きた殺人事件。白人警官が黒人男性の喉を踏みつけ続けるショッキングな映像を見てしまい、今この映画に触れよう、と鑑賞しました。
Twitterで「ミネアポリス」と検索すると、本事件やレイシズムが加速しているアメリカ国家に対する意見、さらには連日のデモにより荒れ果てた街が世紀末のようだと写真や動画が沢山あがっているので是非ご覧になってみてください。

土地の名前って、特にアメリカの地名は、キャッチーで頭に残るキーワード化がしやすいのだと思う。として今「ミネアポリス」が話題になっているように、同じく米北東部でほど近いミシガン州「デトロイト」が本作の舞台であり、標題だ。
物語は、1967年の「デトロイト」で、(差別が大元による)黒人逮捕への反発として起きた大規模な暴動の最中、モーテルにたまたま居合わせた若い黒人たちと、銃声を聞きつけ駆けつけた白人警察による悲劇を描いている。これは実際に起きた「アルジェ・モーテル事件」が題材だ。
市や州に仕える警官が、陸軍州兵が、民間警備員が、本来であれば人を守る側の役割の人間たちが、差別に加担する。
…というだけでも、前談した昨今の事件の様子までありありと彷彿とさせ、リアルな描写の数々では差別を感じたときの胸くそ悪さ、遣る瀬無さ、怒りが込み上げてくる。

事件から50年の節目である2017年に映画化できた理由は、正当なメッセージであることはもちろんのこと、世論で少なくとも過半数からは支持を得ることが確信できる世の中になったからだろう。白人警官の殺人が無罪で裁かれる当時、同じように作品化して声をあげたとしても恐らく政治的圧力などによりメディアでも「問題作」などと評され弾圧される。
ところが社会派作品が得意なキャスリン・ビグロー監督の手により世に知れ渡った今、民間レベルでの表現や報道の自由がより広がりプロパガンダ的に正義を訴えられる今、この2020年でもなお、同じような差別という魔による殺人が起こっている。
ちょうど今日発表された求刑は、第3級殺人だと。弁護団や遺族が第1級を望んでの本判決で、第3級が具体的に何だかわからなくともとにかく第1級まで高い壁があることはわかる。結局50年で変わったのは?事件に対する世間の反応だけ?問題のタネは根深くアメリカ北部に根付いていると感じる。
私たちにできることは、長い時を流しながら同じ過ちを繰り返すなんておかしい、ということを、作品の観賞を通して生身の感情を持って実感し、同じ人間として平等な人権を訴え続けることではないか。1人の力は小さいが、何事も1人から始まるため今回はあえて強く書き記した。

総じて観てよかった。#今観るべき映画 としておすすめしたいです。

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(余談)
『ゼロ・ダーク・サーティ』から、ビグロー監督が好きでした。社会の実情をより沢山の人に知ってもらおうと、エンターテイメント性を絡めてハリウッド界に叩きつける姿勢そのものを尊敬する。事実を突きつけるように描く、大げさな装飾のない、俳優の演技だけで魅せるサバっとした全体のトーンが心地よくて見やすい。
オスカーリレーから外れた理由(受賞最有力と言われながら一部門のノミネートすらなかった)は、ストーリーの繋ぎ方ではと推測されていると聞いたが、上記のように事実を届けることに振った作品であるのならば、起承転結なんてものはどうでも良いじゃないか。ノンフィクション映画は、脚本賞ではなく脚色賞へのノミネートになるように、「物語力」を問われるのがオスカーであるようだ


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