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「医師として働くモチベーション」低いですが?

事の発端は、ブログのコメント欄に寄せられた、ある方からのご相談

えりおさんの、医師として働くことのモチベーションなどありますか?もしあれば教えていただきたいです。

今病院をまわっていますが、イマイチこうなりたい医師像や人生が見えなくて…

このコメントを最初に読んだ時、頭をハンマーで殴られたかのような衝撃が走りました。


答えに窮したわけではありません。

モチベーションなんて、ありません

そこは即答です。


若干不本意ながら大学を離れ、医師としての前途が断たれた私、今まさに、これまでの医師としてのキャリアの中で、一番モチベーションが低いです。

そこじゃない。


その答えをこの若いお医者さん(あるいはお医者さんの卵)に、しかもブログのコメント欄という場で、どう書けば自分の考えを滞りなく伝えられるのか、今までその発想が全くなかったこと、こんな大きなネタの存在に、今まで気にも留めていなかったこと、それを若い方に気付かされたことに衝撃が走ったんです。

私は考えた末、コメント欄でなく、記事という形で、いつかお答えしたいとだけお返事したのでした。


最初からモチベーションなんてなかった

医師として働くモチベーションなぞ、そもそも最初からあんまりなかったです。

自分のキャラクターからして、若いというだけでチヤホヤされているうちに結婚に漕ぎつけないと、その後はそうチャンスがないと思っていたので、医師になったら、2年以内に結婚すること、結婚式は絶対ハワイで挙げて、新婚旅行はタヒチに行くぞと、それだけを考えてました。

肝心の業務については、担い手の少ないニッチな分野を探すこと、自分の味方、後見人を探すこと、あとは、いかに楽しながら、最大限の知識を吸収するかとかしか、考えてなかったです。
大学受験や、国家試験もそれで切り抜けられてきちゃったので、地道にコツコツなんて、知ったこっちゃなかった。

研修医2年目でとりあえず1回は結婚(というか結婚式!?)すること、結婚式はハワイで挙げることが叶いまして、次の目標として、ほどなく、ニッチな分野として、形成外科専門医に目をつけました。

将来やりたいのは皮膚科でしたけど、皮膚科って女性が多い、というか医局自体が女っぽいし、そこで希少価値は出ない。
皮膚科に比べれば、女性でありながら形成外科って方が少ない。女の自分が皮膚科の専門医です、っていうのなんて、ベタでしかない。皮膚科で食べてるけど、実は形成外科が専門です、って方が、絶対レアでかっこいいじゃん。(レアな女性=かっこいいという短絡的な思考回路)

ということで、目標ができたら、後は最短距離で形成外科専門医になるだけです。ここでちょっとモチベーションが上がったんじゃないでしょうか。

専門医試験受験の前後、その絡みで敬愛する師匠に可愛がっていただき、棚ぼた式でキャリアが積み重なり、分院のちっちゃな形成外科医局で医局長にまでしていただいての5〜6年、医学博士を取るまでがモチベーションのピークでした。

その後、医学博士を取らせてもらうことによるごにょごにょがありまして(医局でよくあるアレやソレやですのであえては申し上げません笑)、だったらフリーランスになったれ、月1回旅行したれ、と医局をやめ、モチベーションは下降の一途をたどるわけです。が、フリーになってから最初の3年は、ブログやってませんしね、今よりは医師としてのモチベーション、ありましたよ。

で、2017年4月に今勤めているクリニックに移って、ブログを始め、ブログが軌道にのり、そちらのモチベーションが上がるのと反比例するかのように、医業へのモチベーションは下降の一途をたどり、今が下降のピークと、いうことです。

現在、私が医師として費やす時間は週12.5時間のみ。
勤務時間にだけ精一杯やろうという、気持ちしか、ありません。

収入の9割は医師としての給料から、ですが、モチベーションの9割はブログと旅行に注がれております。

今の勤務先の院長先生やスタッフの皆様は自分のこのスタンスを最大限に応援してくださっており、これ以上ない、非常に良い環境で働けておりますので、このまま行くつもりですが、その院長先生だって、いつかリタイアされるでしょう。

なもので、いずれ医師やってる時間をさらに減らすつもりで、今準備しておるわけです。


モチベーションがなくては「医師」はできませんか?

もしそうだとしたら、ブログと同じ年数だけ、今のクリニックで勤務できてるのは理論上おかしいということになりますね。

モチベーションって高いまま保つものだ、という前提がそもそもおかしいんです。人間だもの。
モチベーションというのは、上がったり下がったりするものなんですよ。

ブロガーへの質問あるある、なのが「ブログを書くモチベーションを維持するにはどうしたらいいですか?」というもの。
記事を書き続けて、更新し続けてナンボなところがありますからね。
続けられずドロップアウトする人間が大多数な中、どうやって息長く続けるか聞きたい、ということですよね。

それに対する、回答は、こうです。

モチベーションが高いまま維持できる、そこを前提とするのがそもそもおかしい。
誰にでも、いつかモチベーションが下がる瞬間は絶対ある。
なのであらかじめその時に備えて準備しておくんです

どんなトップブロガーでも、モチベーションが高まらないとき、筆の進まないときは必ずあります。
なのでモチベーションなぞ、いつかは下がることを前提として行動する。
筆が進むうちに、記事を書きためておき、調子が落ちた時に備えておいたりなど、対策しておくんですよ。

大事なのは「モチベーション」を高く保ち続けることじゃないんです。
自分には今モチベーションがあるならある、ないならないと、きちんと受け止めることが一番重要なんです。

そして、モチベーションがあるにせよ、ないにせよ、それぞれに道はあるということを知っておくことです。

だって、
モチベーションが上がらないのに、その事実を受け止められず、自分に嘘をついて仕事して、質の高いパフォーマンスが提供できると思いますか?

モチベーションが高くてエネルギーが有り余ってんのに、変に目立ちたくないって、そのエネルギーを持て余すなんて、もったいなくないですか?

これそのまま、ブログや医業以外のあらゆるビジネスにも、当てはまりやしませんか?


モチベーション「低い」ことに罪悪感は、ありません。

モチベーションがない、大いに結構じゃありませんか。

私は今もこれからも、医業に対してのモチベーションは上がらないと思いますし、上げようと、自分を鼓舞するつもりも、ありません。
そしてそれに対して申し訳ないという気持ちや罪悪感、ちっともございません。

綺麗事をいうのは簡単です。
が、世の中、綺麗事だけじゃまわりませんよ? それが人間というものじゃないですか? 
それを知らない医師の方が、かえってやばいんじゃないですか。

世の中、仕事に対する情熱やモチベーションが上がらないことへの罪悪感に苦しんでいる人というのは、人に言えないだけで、たくさんいるはずです。
彼らの力になれるのは、必ずしもモチベーションの高い人間だとは限りません。そこが人間、そして人生の面白みではありませんか?

私は医業に対するモチベーションは底辺ですが、同じ境遇にいる方がなかなか言葉にしづらいことを、かんたんに言語化して発信することができます。それが見えない誰かの力となりうる。(と、最もらしく謙遜してもみましたが、実際なりまくってるからブログが繁盛してるんです。)

事実を自分で受け止められさえすれば、モチベーションが低い医師、高い医師なりに、成果をあげられる仕事は必ずあります。それぞれの道が用意されています。

以上がいただいた質問への、私の回答でございます。いかがなものでしょうか。


ちなみに、かのナポレオンによりますと、戦力というのは

  • やる気のある有能

  • やる気のない有能

  • やる気のある無能

  • やる気のない無能

の4つに分類でき、

やる気のない有能は、幹部や軍司などに
やる気のある有能は、前線の指揮官や軍曹に
やる気のない無能は、前線に送り込み
やる気のある無能は、「今すぐ殺せ」

だったそうですよ!?


今後も「ブロガー複業」を続けていく中で、また新たに気づきがあれば、次回以降、記事にさせていただきたいと思います。引き続き、応援よろしくお願いいたします。


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