【週刊プラグインレビュー】Liquid Sonics / Cinematic Rooms
今月はLiquid Sonicsから販売されているリバーブ「Cinematic Rooms」をレビューしていきます。
メーカーの紹介ビデオはこちらを。
同社の他製品も混ざっていますが、Cinematic Roomsを使ったミックスの例はこちらの動画をご覧ください。
Cinematic Roomsには上位互換であるProバージョンが存在しているのですが、今回は無印版を取り扱っていきます。
無印でもMonoから9.1.6chでの運用が可能です。
基本的に打ち込みの素材を扱うことが多い筆者にとって、「楽器の距離感」は、ミックスにおいて周波数や音量よりも重要なものだと思っています。
ここがチグハグだと、各々が好き勝手に鳴っている印象が抜けきらず、楽曲として上手く纏まりません。
例えばドラムはスタジオ鳴りがあるのに、ギターはスタジアムの鳴り、シンセ類は距離感ゼロで、パーカッションはやたら近い。みたいなことありますよね。
距離感を遠くから近くすることは不可能なので、
そういった場合は特定の空間を用意して適宜センドしたり、近すぎる素材にリバーブをインサートして音源を後ろにおいていくイメージで立ち位置の調整を行います。
今回のCinematic Roomsはそういった用途に向いていると思います。
どれかというとテイル(残響)を伸ばしていく、というよりは音源の距離感をコントロールするイメージです。
偉そうにいってますが、
「テイルを伸ばすリバーブと伸ばさないリバーブを明確に使い分ける。」
この考え方はソニー時代の先輩エンジニアである原さんから教わったもので、こちらに素晴らしい記事がまとまっているのでぜひ一読を。
今回はマニュアルを読み返しつつ、テイルを伸ばさないリバーブをテーマにレビューしていこうと思います。
機能
Cinematic RoomsのGUIはぱっと見複雑なんですが、必要なツマミだけに綺麗にまとまっていて、案外直感的かつサウンドカラーを精細にコントロール可能です。痒いところに手が届きます。
Reverb Time
残響の長さを0.2秒から45秒までの間で調整
残響は「初期音から60dB減衰するまでの時間」を指す
時計回りに回し切りでリバーブが減衰しない[infinite]に設定することも可能
Reverb Contour
部屋の材質や内容に応じて異なる周波数でリバーブ時間を調整
Trebleは6kHz、Bassは800Hzで固定
Reverb Low Boost
リバーブ音の低域をコントロールする
小さいリバーブに低域を足してしっかり聞かせたり
大きいリバーブに過剰に発生する低域を削ったりする
コントロールできる低域はReverb Timeの値に依存する
Reverb Pre-delay
プリディレイを調整することで距離感を操作でき、最大500msまで設定可能
DAWとのテンポシンクも可能
Reverb Bloom
リバーブが最大に達するまでの時間を調整し、空間の大きさの知覚を制御する
Reflection and Reverb Roll-off
反射およびリバーブの高域をロールオフする
オクターブごとに6/12/18/24 dBの勾配で設定可能
Reflection Proximity and Reflectivity
[Proximity]は予め用意された反射パターンを選択して、音源からの反射音がどれだけ近くに感じられるかを制御する
プリディレイと共に使用して、音源が空間内でどのように配置されるかを定義するのに役立つ
[Reflectivity]は、反射がピークの周りをどのように包むかを制御し、特定の空間がどれだけ反射的に聞こえるかを調整するのに使用する
Reflection Size
反射の間隔を調整することで、空間の知覚されるサイズを指定する
Refl / Reverb Mix
初期反射とメインリバーブのバランスを調整し、音源の空間内での感じ方を操作する
ざっくりと機能はこんなものです。
是非デモって聞いていただきたいのですが、Reflection周りの項目は他のリバーブにはない大きな特徴になっています。3つのパラメーターを操作することで音源とリバーブの距離感を自由にコントロールすることが可能です。
そしてCinematic Roomsでは多くのパラメーターをロックすることができます。リバーブタイムだけでなくMixの値やSize / PreDelayなどを固定した状態でプリセットを切り替えることで、楽曲にフィットしたリバーブを容易に探すことができます。
経験上リバーブタイムとPreDelayは楽曲ノリに直結するので、
良い値を見つけたらそれで固定したままプリセットを巡回していくのがおすすめです。
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ひとつよしなに。
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