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【週刊プラグインレビュー】Solid State Logic / SSL Vocalstrip2

今月はSolid State Logic(SSL)から発売されている
ボーカル用チャンネルストリップ「SSL Vocalstrip2」をレビューしていきます。

概要はこちらを。

サウンドデモはこちらをご覧ください。

先日のセールをきっかけに手に入れて、「まぁチャンネルストリップものだしなぁ。1,2回ミックスで使えたらいっか。」くらいに思っていたのですが、
使ってみると各機能のクオリティが非常に高く、「これがSSLの積み上げてきた技術力か〜」と感心しました。

特筆すべきFX部分や他社にない機能が搭載されているわけでもないのですが、ベーシックな部分の強度が異常に高いので、なぜそうなっているのか、実際どんな変化が起きているのか、他社類似製品と比較・検証しつつレビューしていきます。


概要

Vocalstrip2はボーカルの処理に特化したツールをまとめたプラグインです。
Compander / De-esser / De-ploser / EQを用途に合わせて組み合わせることができ、ここで整えたボーカルにFXを加えるだけで、ボーカルトラックが完成してしまうというお手軽さを謳っています。

それぞれの機能をさらっていきましょう。

Compander

[Compander]はCompressorとExpanderを組み合わせた造語です。
2つのツールを使ってボーカルのダイナミクスをコントロールします。

信号はまず、ダウンワードエキスパンダー に入ります。
[EXP THRESH]で指定した値よりも小さな信号を[THRESHOLD]で指定した値分レベルを下げます。
つまり『小さな音がより小さくなる』ということです。

この機能で、不要なブレスノイズ・音漏れ・部屋鳴りをカットしておくと、後段のコンプレッサーで不要な音が立ち上がってしまう現象を防げます。

コンプレッサーでは、アタック・リリース・レシオを自由に設定でき、ソフトニーとハードニーの選択・ドライブのON / OFFが選択できます。

Companderで行った処理はふたつのグラフによって視認できます。

左側のグラフでは、Companderで行われるダイナミクス処理のカーブが確認できます。信号のインプットとアウトプットの関係性が把握できます。
右側のグラフでは、縦軸がdBになっていて、インプットとアウトプットでどんな音量変化があったかを把握できます。

右側のグラフと異なり、「大きい音が叩かれた結果なのか」「小さい音をカットした結果なのか」「小さい音が持ち上がった結果なのか」など、Companderで起こり得るサウンドの変化をより詳細に視認することができます。

スイープ音を流し込んだ際のグラフの挙動

※スイープ音を流し込んだコンプレッサーの挙動を見ていただくとわかりやすいかも・・・。
-20dBあたりまではIN:OUTが1:1で動いていますが、その後にコンプレッサーのスレッショルドに達して、レシオ分叩かれてIN:OUTの増加率に変化があることが見て取れます。

通常のコンプレッサーのノリで使いたい場合は左側のグラフだけ見ておけば問題ないと思います。

De-esser

[De-esser]はボーカルに含まれるシビランス(≒歯擦音)を検出・除去するツールです。

[FREQUENCY]で指定した帯域を[THRESHOLD]で指定した分検知・除去します。
上部のMODEで[SPLIT]を選択すると、[FREQUENCY]で選択した帯域のみリダクションされ、[BROADBAND]を選択すると、入力した信号全体がリダクションされます。

除去される信号を正確にモニターするには[LISTEN]ボタンを使い、[LOOKAHEAD]ボタンでオーディオの先読みを行うことで、よりサウンドをナチュラルにすることも可能です。
(Look a headの具体的な数値は非公表)

De-ploser

[De-ploser]は、マイクに近づき過ぎたり、ポップガードのない状態での録音時に発生しがちな不要な低域の破裂音(Plosive)を検知・除去するツールです。

[FREQUENCY]で指定した帯域を[THRESHOLD]で指定した分検知・除去します。
上部のMODEで[SPLIT]を選択すると、[FREQUENCY]で選択した帯域のみリダクションされ、[BROADBAND]を選択すると、入力した信号全体がリダクションされます。

除去される信号を正確にモニターするには[LISTEN]ボタンを使い、[LOOKAHEAD]ボタンでオーディオの先読みを行うことで、よりサウンドをナチュラルにすることも可能です。
(Look a headの具体的な数値は非公表)

Equaliser

Vocalstrip2に搭載されたEQは低域のカット・レゾナンスの除去・トップエンドのシェイピングという3つの目的のためにデザインされています。

ハイパスフィルターは30Hz-300Hzの範囲で動作し、カットオフの周波数周辺を少しブーストします。
ノッチフィルターは200Hz-10kHzの範囲で動作し、鋭いQ幅で12dBのブーストと36dBのカットを行います。
ハイバンドEQは1kHzから20kHzの範囲で動作し、緩やかなカーブで12dBのブースト / アッテネーションを行います。

※公式のテクニックとして、ノッチフィルターのブーストはボーカルに含まれる不要なレゾナンスを発見するための機能であり、レゾナンスを見つけたらカット方向に処理することを推奨しています。
つまり、ミドルバンドのブーストに使う機能ではない、ということです。


以上4つのツールがVocalstrip2に含まれる全ての機能になります。
こうして並べてみると至ってシンプルですし、他社製品でいくらでも代替が効く気がします。
でもなんか違うんですよね・・・。
実際使ってみると「ん?なんかやたら音楽的に良くなるぞ???」っていう感覚があるんです。

実は、マニュアルにも以上の情報より詳しいことは書いていないので、
実際どんな処理が実際行われているのか、本当に代替は効かないのかなどを次項で検証していきたいと思います。

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