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「努力に気づかない脳」という話

今回は「努力に気づかない脳」という話をしたいと思います。

努力と脳科学
突然ですが、皆さんは何かに没頭していて、他人から「努力してるね(頑張ってるね)」という風に声をかけられた経験はありますでしょうか?
私はそうした経験があります。
私がギターを始めた頃、ギターが楽しくて、毎日音楽スタジオに引きこもってギターを弾いていたことがあります。
当時、ギターを弾いている先輩から「よく頑張ってるな」と誉められたことがあるのですが、私は「頑張ってギターを弾こう」等と意気込んでいたわけではなく、ただ楽しいからギターを弾いていただけなので「自分は努力してたのか?」と驚いたことがあります。
そうした、自分自身は努力している気はないのに、楽しいからのめり込んでいたら、それが努力として評価されたという経験のある方もおられると思います。
実は、こうした努力に気づかない現象は脳の機能が原因で起きていると言われています。
それを裏付ける面白い実験があるので紹介したいと思います。

研究では、被験者25人に、ボタンを押す簡単な課題、難しい課題のいずれかを選んでもらった。簡単な課題では1ドルの報酬が得られ、難しい課題では1~4.30ドルの報酬が得られる。課題の難度を選択した後で被験者には、報酬は確実に得られるとは限らず、報酬が得られる確率は、低い(12%)、中くらい(50%)、高い(88%)のいずれかであることが告げられた。

課題は30秒ほどのもので、内容は死ぬほど退屈だ。自分の利き手で7秒間に30回ボタンを押すか(こちらが簡単な課題)、あるいは、利き手でないほうの小指で21秒間に100回ボタンを押す(これは難しい課題で、これに比べたら、原稿を書くことなど、海岸で1日過ごすようなものだ)。

被験者が退屈しつつも大急ぎでボタンを押す間、研究チームは、PETスキャンを使って被験者の脳の変化をモニタリングした。このPETスキャンは、大脳皮質全体のドーパミン・ニューロンの活性を追跡できるように修正をほどこしたものだ。それによって、ドーパミン作動性活性と、ひどく退屈な作業を続けようとする被験者の意志との間に、相関関係があるのかどうかを調べることができる。

研究の結果、ボタンを押すのを途中でやめてしまう人と、たとえ小指が痛くなってもボタンを押し続ける人の違いが明らかになった。

チームが最初に発見したことは、左線条体と前頭前皮質腹内側部(ventromedial prefrontal cortex)におけるドーパミン作動性活性が高い被験者のほうが、多くの報酬を得るために努力する意欲が高かったことだ。

この違いは、報酬を得られる確率が低い場合に、特に顕著に現われた。実際に金銭が得られるチャンスはごくわずかでも、このタイプの被験者はどうにかモチベーションを保つことができたのだ。(https://wired.jp/2012/05/25/the-neuroscience-of-effort/)

これはヴァンダービルト大学のマイケル・トレッドウェイが率いる研究チームが『Journal of Neuroscience』に発表した研究ですが、長いので要約すると、「快楽物質のドーパミンがよく分泌される人ほど努力が出来る」という研究です。
つまり、努力をしている人は、そもそも努力を苦痛とは感じておらず、ドーパミンが分泌されているので、努力に快楽を感じています。
私が体験したギターの例でも、他人から見たら私はギター演奏の努力をしているように見えるかもしれませんが、私自身はギターを弾くことでドーパミンが分泌され、「ギターを弾くことを楽しい(快楽)と感じる。だからもっとギターを弾きたい。」となりギター演奏の努力を無意識にし続けます。

脳科学者の茂木健一郎さんもドーパミンを活用した勉強法を推奨しています。
例えば、ドーパミン・サイクルを作ることで「数学を勉強するとドーパミンがでて気持ちいい→また数学が勉強したい」となれば、数学嫌いを克服できます。(詳しく知りたい方は『脳を活かす勉強法』を読んで見てください)。

(https://www.amazon.co.jp/dp/4569696791/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_QYA9Eb2SCMN82より)

まとめ
少し努力の話とはズレてしまいますが、人によって「面白い」という感覚が違う理由も恐らくドーパミンが原因でしょう。
例えば、私は芸能ニュースを見ても殆どドーパミンが分泌されないので、全く芸能ニュースを「面白い」と感じないのですが、経済や科学、政治に関係するニュースはドーパミンがよく分泌されるので「面白い」と感じます。
人によっては芸能ニュースを見た場合にドーパミンが分泌され、経済や科学、政治に関係するニュースにはドーパミンが分泌されないという人もいると思います。
そうしたドーパミンの分泌される条件の違いが人の「面白い」という感覚の違いに反映されているのでしょう。
さて、今回は「努力に気づかない脳」という話をしましたが、頭のいい人(知識欲のある人)は学習するときによくドーパミンが分泌されている人が多いように思います。
努力が続かないという人は、このドーパミンの機能をうまく活用することが大切かもしれません。

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