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迷子になるための散歩とは

お散歩は私の趣味のひとつ。
家の近くに限らず、旅行先でも時間さえあれば歩き回っています。
ただし、お散歩はお散歩でも一般的なお散歩ではなく、私の場合は迷子散歩。
初めて行く土地はかろうじて観光名所と言われる場所を巡ってはみるものの、旅の後半や二度目の旅行ともなると、「ザ・観光」はもうおしまい。
私は地図をしまい、気が向いた方向へと歩き出します。
そして迷子になる。
でも、それは想定内。というよりも、「ここはどこ?」「この道どこまで続くの!?」と、実際は迷子になる状態を楽しんでいるのです。

鎌倉に行った時のこと。
その日は小町通りの有名なお店でフルーツサンドを食べることだけを決めていましたが、その目的が達成できたら、お待ちかねの迷子タイム。
鎌倉駅周辺は何度か来たことがあったので知っているとみなして、私は未開拓の西の方向へ歩き始めました。
お店がたくさん並ぶ通りを抜けたら、急にレトロな建物が点在する通りに出て、古くから営んでいそうなお店や井戸も見付けました。
一つひとつの建物が低いからか、空がとても広く感じました。
さらに歩いて行くと住宅地。
そして、そろそろ感じる「ここはどこ?」。
すでに方向も方角も手放していましたが、絶対に地図を見ることはしません。
なんとなく歩いていると、住宅地の奥で神社に出会いました。
階段を登ったところにある本殿は、静かで、でも由緒ある正しさと凛とした空気を感じました。
ここに巡り合わせてくださったご縁に感謝して、高台から見える遠くの海のきらめきに感動して、私はまた歩き始めます。
そのままズンズン進むと、さらに入り組んだ住宅地に迷い込みました。
緑色のドアの家や、小さな線路、用水路やそこに掛かる石橋を見て、ここに住む人たちの生活に思い巡らせてみたり。
そうしてさらに歩いて行くと、突然海が目の前に広がりました。
「ゴール!」
小さくそうつぶやいて、今日の私の迷子散歩は終了です。
そこがどこの海か分かっていたわけではないのですが、ゴールしたので地図を見てみると、そこはどうやら由比ヶ浜。
私はいつの間にか江ノ島電鉄2駅分歩いていたようです。不思議なくらいあっという間でした。

迷子になるためのお散歩は不思議な出会いがたくさん。
今回の迷子散歩で出会った神社は、甘縄神明宮といい、なんと鎌倉で一番古い神社。
他にも、急に目の前に現れた小さなカフェで鎌倉野菜のサラダをいただいたり。
オリエンタルな香りがするブックカフェで温かいチャイをいただいたり。
こんな素敵な出会いが叶った奇跡を思うと、迷子散歩が見えない縁をつないでくれたことに、ただ静かに感動してしまいます。
建物も家も景色も、地図を見ていたら出会えないものばかり。
だから迷子散歩はやめられないのです。
次はどこの町に行こうか、と考えただけでドキドキします。

それでは、皆さま、良い夢を。

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