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レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.92


[101枚目]●フランク・ストークス『ザ・コンプリート・レコーディングス』<Pヴァイン>(11)


※ 本文を書くに当たり、小出斉さんのライナーを大いに参考にしています。


力作揃いの、全38枚から成る「Pヴァイン戦前ブルース名盤コレクション」中の一枚。メンフィスを拠点に活躍したフランク・ストークスの全作品集である。2枚組で、テイク違いも含めた42曲となる。ディスク1が、ダン・セインと組んだザ・ビール・ストリート・シークス名義。27年と29年のシカゴ録音で<パラマウント>発である。ディスク2は、ダン・セインやヴァイオリンのウィル・バッツが参加している曲もあるが、名義はフランク・ストークスとなっている。28年と29年のメンフィス録音で<ヴィクター>発である。


フランクは、1888年メンフィス近郊のホワイトヘイヴンという小さな町(村?)で生まれている。1888年というのは彼の娘の証言らしいが、リサーチャーによれば、フランクの召集令状には1877年と書かれているらしい。本盤のライナーでは1888年となっているので、それに沿って話を進める。幼い頃に両親を亡くし、ミシシッピ州タトワイラー(W.C.ハンディが初めてブルースを聴いた町として有名)に住む叔父に引き取られ農業の手伝いをしていたが、1895年にはメンフィスの学校に通っている。1900年頃から音楽活動をしていたという説には賛否両論あるそうだが、10代後半には確かに音楽活動をしていた。ガーフィールド・エイカーズとの縁で、メディシン・ショウの一員として南部を巡業したのがスタートだった。


ダン・セインとは1925年頃に出会い、本盤に収録されているようにビール・ストリート・シークスとして活動している。ダン・セインはプロデューサーとしても著名なオリヴァー・セインの祖父に当たる。フランクがフィンガー・ピッキングで、コード・ストロークからメロディー・ラインに絡めば、ダンの方はフラット・ピックで、低音弦を中心にリズムを刻むのが基本形らしい。いずれにしても2人のギターワークの融合は聴き応え十分である。


【Disc 1】

THE BEALE STREET SHEIKS (Stokes and Sane)


1. You Shall


厚いノイズが掛かっているが、ヴォーカル、ギターとも力感があるのでさほど気にならない。語りのような歌い口やギターが紡ぐメロディーラインが軽妙さを作り上げている。27年8月の録音だが、この曲と次の曲は同年翌月にも録音している。


2. Its A Good Thing


「It's」ではなく「Its」なのは、レコードの表記。ライナーで「現代ならラッパーになれる」と述べられているように、息継ぎが心配になるほどのスピードで、語るように歌う。途中に入るギターのアクセントが温かい。


3. Sweet To Mama


出だしのギターの絡みが何とも言えず良い。彼らは、メンフィス・ブルース界におけるギター・デュオの先駆的存在と言えるそうだ。


4. Half Cup Of Tea


絡みながら駆け抜けるような2人のギターに圧倒される。さらに、迫力あるフランクのヴォーカルが加味され、思わず踊り出したくなる。


5. Beale Town Bound


一段と力強いギターの出だしは、若干突っかかるような感じが特徴的だ。野太い語りから伸びのある歌声を聴かせる。実に歌の上手い人だ。


6. Last Go Round


ライナーでも触れられている通り、プリ・ブルース的黒さが味わえる。


7. Jazzin' The Blues


朗々とした歌い口から後半はほとんど語りとなる。6.でもそうだったが、時々弦をはじくようなスライドさせるような音がタイミング良く入る。これも見事なダンス・ミュージックだ。


今回の7曲は、27年8月シカゴ録音分。Disc1は残り12曲。27年9月が5曲、残りは29年3月の録音となる。この分は次回へ。


(つづく)

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