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レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.63


【過去記事です】

[72枚目]●V.A.『ザ・スピリット・オブ・フィラデルフィア 3』<エクスパンション>(11)

ひさしぶりに聴いてみて、聴き憶えのある曲が多いなぁと感じた。よくよく考えたら、このCDで憶えたんだろう。相当数聴いたんだよなとしばし感慨に耽った。好編集盤として名高い当シリーズは、02年に第1弾、06年第2弾、本編が11年、そして16年に第4弾が出ている。発表年のサイクルに着目すると今年あたり、と期待したくなるが果たしてどうでしょう。編者及びライナーは<エクスパンション>の主宰ラルフ・ティー。あえて<フィラデルフィア・インターナショナル>作品を外しているが、幅広く紹介するという意味では功を奏しているかも。

①から王道フィリーの洗礼。渋みと力感のあるテナーを鉄壁の演奏陣が盛り立てる。ノーマン・ハリス絡みの<シグマ>録音。73年<フィリーグルーヴ>からのシングルも有名なようだが、discogsでは67年のシングルから上げられている。アルバムは85年に1枚。思わず踊り出したくなる②が続く。エクスタシー、パッション&ペインは、72年~77年にかけて活動。バーバラ・ロイはリードシンガーだけでなく、グループの設立者でビジネス面でも活躍したとの事。例の名盤アルバムは74年の作品。本曲も収録されている。③はソフトなヴォーカルだが、サビの「ドーン、アスク・ミー~」は思わず口ずさみたくなる。ジェイ&ザ・テクニクスは、人種混交のポップ系グループ。大人の女性らしい落ち着きを感じる④は、シャロン・ペイジ。十分にダンサブルでもある。ハロルド・メルヴィン&ブルーノーツのメンバー時代もあった。テディ・ペンダーグラスとの絡みもあり。⑤は好きなタイプの曲だ。コクのある歌い口からバリトン系シャウトでグッと盛り上がる。後年判明した事だが、実は白人のベニー・マルドネスが正体。音楽キャリアをソングライターとして出発した彼は、この曲も作っているが(トロイ名義)、ブレンダ・リーやチャビー・チェッカーの曲を作っている。マルドネス名義では78年から活動し、「イントゥー・ザ・ナイト」というヒット曲があるらしい。

⑥は再び女性でクールダウン。ほどよい甘みが心地よい。シャロン・マクマハン本人の自作。ボビー・マーティンがアレンジ。64年から活動しており、07年に初アルバム、11年には<エクスパンション>から本曲が再リリースされている。それだけで終わらず、今年もシングルをリリースしている。作曲家としての経歴も多いようだ。⑦は、リードのよく通る声が雰囲気を高める。しかし、ストリングスの使い方やポロンと鳴るピアノなんか上手いなぁ。アレンジはヴィンス・モンタナ。ネットで調べても中々正体が判らない。某レコード店のリストでは5900円ほどの値が付いていた。⑧はテンポアップして女性グループ。リードはキュート声で、迫力主体ではないのでコーラスと合わせて愉しみたい。メンバーは、アリソン・ホッブズ(のちグイン)、カレン・デンプシー、フィリス・ネルソン(この人はたくさん作品を残している)。ヴィンス・モンタナ作編曲。⑨この曲も好きなタイプ。ファルセットかハイテナーか、高めの声がよく生かされている。ボビー・イーライ絡み。アルバムは73年~80年、<ジュウェル><コロムビア><キャピトル>から4作品。77年顔大写しのアルバム『キース・バロー』(同タイトルがもう一枚ある)に本曲は収録されている。生まれはシカゴで父親は公民権運動家の牧師。ブルー・マジック「ティーチ・ミー」の作者でもある。⑩バーバラ・メイソンの甘ったるい歌声は、切ないのだが元気が湧いてくる。<ナショナル・ジェネラル>は<ブッダ>の一つ手前に所属していたレーベル(配給はブッダのようだ)で、アルバムも一枚出ている(本曲は未収録)『イフ・ユー・ニュー・ヒム・ライク・アイ・ドゥ』。

⑪名前と違いインパクトはさほどないが完成度は高い。76年作のアルバムは購入済みだが、本曲が収録されているのは77年のアルバム『ザ・パック・イズ・バック』。⑫これも王道のイントロから美麗なファルセットという安定路線。アラン・フィドラー+バニー・シグラー作品。元はエレメンツでリードはマーク・アンソニー。⑬パワフルなシンガーなので、サザン・ソウル的感触も。ヴァージニア州ノーフォークの出身で、音楽キャリアのスタートが<デッカ>で、ウィリー・ミッチェルの<ロイヤル>スタジオと知るとやや納得。⑭ロニー・ダイソンは昔からどうもピンとこない。ソツが無さすぎる。ただ、歌の上手さは文句のない所。トム・ベルとリンダ・クリードの作品でトムのプロデュース。有名な73年盤アルバム『ワン・マン・バンド』にも収録。⑮出自がドゥーワップだと、スウィートな感覚やコーラスの温かみといった部分でフィリー・ソウルに繋がるのではないだろうか。59年のスタートから現在まで活動は続いている。⑯幅広く知られている存在としては、本盤内ではシスター・スレッジが最高だろう。79年のアルバム『ウィー・アー・ファミリー』が特に有名だが、本曲のリリースはその3年前となる。これにもその他のアルバムにも収録はされていない。ボビー・イーライ+レン・フィリップス作で、ボビーのプロデュース。彼女たちは現在も活動を続けており、20年にはデビー・スレッジによるニーナ・シモンのカバー・アルバムが発表されているようだ。⑰ラストを締めるのはメイジャー・ハリス。淡々と歌っているようで実に味わい深い。ボビー・イーライ+テリー・コリンズ作でボビーのプロデュース。

① Tapestry - It's Not The World That's Messed Up <キャピトル> (76)

② Ecstasy, Passion & Pain - I Wouldn't Give You Up <ルーレット> (74)

③ Jay & The Techniques - Don't Ask Me To Forget <ポリドール> (75)

④ Sharon Paige - New To You <ABC> (77)

⑤ Troy - And Tomorrow Means Another Day We're Apart <コロムビア> (72)

⑥ Sharon McMahan Get out of my life <コロムビア> (73)

⑦ Ghetto Children - I Just Gotta Find Someone To Love Me <コロムビア> (73)

⑧ Brown Sugar - I'm Going Through Changes Now <キャピトル> (76)

⑨ KEITH BARROW ---PRECIOUS <コロムビア> (76)

⑩ Barbara Mason - When You Look At Me <ナショナル・ジェネラル> (70)

⑫ Moving Violation - Wild Goose Chase <アトランティック> (74)

⑬ DEBBIE TAYLOR - I HAVE LEARNED TO DO WITHOUT YOU <ポリドール> (73)

⑭ Ronnie Dyson - I Think I'll Tell Her <コロムビア> (73)

⑮ Little Anthony & The Imperials - Help Me Find A Way(To Say I Love You) <ユナイテッド・アーティスツ> (70)

⑯ Sister Sledge "Thank You For Today" <コティリオン> (76)

⑰ Major Harris - This Is What You Mean <WMOT> (76)


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