最強の仕事術は「仕事をしない+ズルをする」
皆さん、「パーキンソンの第一法則」をご存じでしょうか?
”仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する”という法則で、要は1時間で終えられる仕事でも、8時間あればフルで使っちゃう、というものです。
「今日はさっさと仕事を終わらせて帰りたい」と思っていても、気がついたら夜になっていた。こういう経験をされてきた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
古巣のデロイトでも一人ひとりに膨大な仕事量が降ってくるため、毎日夜中2-3時位まで働く人が多く居ました(当時)。一方で、効率的かつパフォーマンス高く仕事をこなし、常に19時頃に仕事を終えて帰っている人も少数いました。
今回は、そうした人たちが用いていた2つの仕事術を解説します。
仕事術1.「仕事をする」ことを当たり前だと思わない
まず、彼ら/彼女らは、”意味のない仕事”を絶対にしません。
上司から指示された仕事でも、「それってやる意味あるんですか」「もっと、こういう方法の方がバリューが出るんじゃないですか」と平気で言い放ちます。
例えば、上司からこまごました財務データの分析と結果整理を依頼されたとしましょう。普通はまっさきに、「いつまでに、どういうアウトプットを、どのように作成するか」ということが頭に浮かぶかもしれません。
しかし、彼ら/彼女らの頭に浮かぶことは、
誰が、何のために使うものなのか?
最終的に誰にどうなって欲しいのか?
です。言うまでもなく、資料は使い手の人間と、その資料や情報を提供する先の人間がいます。そして、究極的には、その提供先の人間の心を動かすことを目的として作られるものです。その最終目的を真っ先に確認するということを常に行っているのです。
例えば、上記の財務データ分析で考えてみましょう。この資料の使用者や目的が、「自社のパートナー(役員)が、クライアントの社長に対して説明する資料。○○部門の財務状況を理解してもらい、危機感を持ってもらうことが目的。持ち時間は5分位」だったとしましょう。
そうすると、「5分で危機感を持ってもらうためには、こういう数字とこういう数字があれば十分だな」「恐らくこの点は裏付けや、補足情報が必要だな」というように、目的達成の”キーとなる情報”を絞り込んだ上で、そこに必要な情報を継ぎ足していく。
このようなゴールを起点とした思考を使いこなすことで、無駄な作業を極力排除することができるのです。ドラッガーも次のような言葉を残しています。
もし、自分のやろうとしている仕事について考えてみたときに、
明らかに別のやり方の方が効率が良い
今までの慣習で何となくやっている(そうしている)
その仕事を通じて便益を受ける人がほぼいない
(または便益が著しく低い)
という場合には、その仕事をやめてしまったり、極小化したり、定義を変えてしまうことが有効でしょう。(もちろん、上司側の理解も必要にはなります)
その2.できるだけズルをする
では、取り組む価値のある仕事が実際にあって、それに取りかかる必要があるとします。皆さんは何から始めますか?
仕事というのは基本的に、何らかの問題を発見したり、課題を解決する取り組みです。例えば、商品の売れ行きを分析したり、販売数増加のプロモーションを考えたりといったことがその典型です。(「問題」や「課題」の違いは最後に補足を載せていますので、ご参考にしてみてください)
実は、課題解決にまで至る道筋(解決アプローチ)は3つのパターンに整理することが出来ます。仕事に対峙した際に、まず「どのタイプのアプローチを使うと最も効果的か」を考えることが有効です。
では、その解決アプローチ(パターン)をご紹介しましょう。
王道アプローチ:現状分析→あるべき姿設定→ギャップ特定→ギャップの原因分析→課題設定→打ち手検討・実行(課題解決)
仮説検証アプローチ:問題・課題の仮説設定→追加調査や議論→仮説のブラッシュアップ→打ち手検討・実行(課題解決)→ブラッシュアップ(繰り返し)
模倣アプローチ:類似する事例の対応策を準用する(マネする)
時間的に余裕があって、状況変化もあまりなく、打ち手が及ぼす影響が大きい場合には、1の王道アプローチが適しています。例えば、中期経営計画などを立案する際にはこうした手法が採られます。また、思考がグルグル回ってまとまらない場合にも、立ち返ってみてこのアプローチを順番に進めていくことも良いでしょう。一方で、かなり労力を費やすのも事実です。
優秀なコンサルがよく活用するのは、2の仮説検証アプローチです。まず仮説を立ててから動き出す。というのも、仮説を立てると、次のアクションが絞り込まれるからです。ある商品のプロモーション施策を考える場合、まったく仮説がないと、何から手を付ければ良いか分からず、とりあえず膨大な分析から始めるといった王道アプローチになりがちです。しかし「SNS活用が有効ではないか」という仮説があれば、その妥当性を検証するため情報収集や分析に集中でき、使うエネルギーを最小化することができます。
では、情報収集をせずに仮説を立てて良いのでしょうか?よくある疑問ですが、立てた仮説の”確からしさ”がある程度あれば、情報収集をしなくてても問題ありません。もう少し言うと、立てた仮説に対して「なぜそう言えるか」一定の合理性をもって説明できるのであれば、その仮説を一旦の拠り所として問題ありません。例えば、「過去こういう事例があった」でも、三段論法を用いた説明でも構いません。しかし、そうした説明がまったく難しい場合、それは「仮説」ではなく「妄想」です。
ちなみに、これを言ってしまうと元も子もないのですが、優秀な人材は普段からのインプットや経験の蓄積、仮説検証の繰り返しによって、そもそもの仮説の精度が高いのです。彼ら/彼女らは、特に単なるインプットをしているのではなく、
「自分がこういう問題に直面したらどうするか」
「お客様からこういう問いがあったらどう答えるか」
という自分ごとに置き換えたインプット
を常に行っているのです。
例えば、ある会社で、インフルエンサーを使ったマーケティングが大成功した事例の記事を目にしたとします。その時に「へぇ~」で終わらせるのではなく、「もし、お客様先の社長から『この方法、我が社でも取り入れた方が良い?』と聞かれたら、何て答えよう」と考えて咀嚼しているのです。そうした実用的なインプットや仮説を蓄積しているからこそ、とっさの場面で生み出される初期仮説の精度が高いのです。
最後の模倣アプローチは、過去または他者(他者)が用いた方法をそのまま、または少し調整して活用してしまう方法です。
この方法は、「自分で(ゼロから)考えることにあまり価値がない」仕事に用いるべき方法です。例えば、プロジェクトのキックオフ資料やWBSを作る必要があるとします。当たり前ですが、優秀な人材はこれを自分でゼロから作ることは絶対にしません。類似するプロジェクトから資料をもらって、それを加工して活用します。
考えてみれば当然のことなのですが、組織の中においてまったく前例のない仕事の方が稀です。必ず他の誰か(もしくは他社の誰か)が同じようなことをやっています。
ニュートンもこんな言葉を残しています。
他者が努力して作り上げたものを(倫理・法律の範囲内で)徹底的に活用しましょう。地球には現在70億人もの人間がいて、なおかつ長い歴史が積み重ねられてきています。
補足.「問題」と「課題」の使い分け
ちなみに、皆さん「問題」と「課題」の違いは他の人に説明できるでしょうか?ネットで検索しても、色んな切り口で語られていたり、諸先輩方から、それぞれの”説”が論じられることが多く、混乱することもありますね。
効率的に仕事を処理することにも役立つので、「問題」と「課題」の一般的な定義も押さえつつ、それぞれ「どういう問いに答えるモノなのか」も把握してみると理解が進むでしょう
問題:あるべき姿とのギャップやその状態
(→「それってホントに困るの?」という問いにYesとなるもの)課題:あるべき姿に近づくために取り組むべきテーマ
(→「それをやると、あるべきに近づくの?」という問いにYesとなるもの)
例えば、「商品Aの売上が毎年5%下がっている」とします。これは”問題”ではない可能性もあります。というのも、仮に商品Aの市場が縮小しており、会社としても「追加投資はせず、なりゆきに任せる」という戦略を採っていた場合、「困ったこと」ではないからです。
一方で、「売上を毎年10%伸ばす」というあるべき姿(目標)がある場合には、そこに対するギャップが存在するため、これは”問題”(困ったこと)となります。
よく部下などから「こんなことや、あんなことが起きて問題なんです」という報告を受けることもあるかと思いますが、「それは本当に困ることで、あるべきとのギャップなのか」を見極めてみると、無駄な労力を割く必要がなくなるかもしれません。
まとめ
ここまで、効率的に仕事をこなしている人の仕事術について紹介してきました。整理するとポイントは、
意味のない仕事はしない。または極小化したり、定義を変えてしまう
3つの課題解決アプローチを使い分ける
本当の”問題”に取り組む
でした。少しでも皆様にとっての気づきとなる部分があったのであれば幸いです!
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