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彷徨うおっさん12 正しいボランティア団体の運営 (4/4) 戦略がなければ活動を見失う

 前回はボランティアは全て善意で成り立っていることを強調した。そして、その善意に報いるべく行動すべきことを述べた。また、最後に戦略について少し述べた。最終回の今回は「戦略がない事による悲劇の発生」。そして「今後のボランティアの重要性」について述べる。

<前回の続き>


 あるボランティア団体の立ち上げで、おっさんがリーダーに具体的なヴィジョンを確認したときの話、急に似た活動をしている別のグループのHPアドレスを送り付けてきて「こうしたいんです」とだけ言われたことがあった。

 説明が大雑把すぎる。そんなにそのグループの活動が好きなら、自分のグループを作らず、個人でそこを手伝ったらいいではないか。

 似せるにしても、そのためのより具体的なイメージとプロセスは必ずあるはずだ。それがその人、そのグループなりの根幹となる戦略である。そこを明かさずして人はついてこない。
 もしついてくるとすれば、それは単に友達だからであり、既に善意は大きく消費された状態からのスタートと言える。戦略的には失敗している。

 多くのボランティア団体が、内輪のお祭りイベントで終了してしまうのは、こうした戦略不足による、善意の浪費が原因とおっさんは推察する。

<戦略が曖昧だと、活動が暴走・迷走し、事故にさえつながる>


 再びおっさんが立ち上げに携わった子ども食堂の話をする。
 その団体はおっさんが抜けて1年経過していたが、コロナで休止中にあれこれと手を伸ばしていた。

 ① 地域の畑を利用して新鮮野菜を出す
 ② 地域の飲食店を利用してお弁当を提供する

 ①は色々な子ども食堂がやっていることではあるが、コロナで活動休止なのに野菜だけもらってどうするというのか、その理由が実は②にあった。その野菜を使って、知り合いの飲食店に頼んでお弁当を作ってもらったというのだ。

 慈善的で一見して問題はないように思う、むしろコロナ禍でも機動的に活動の幅を広げた、素晴らしい提案と思う人も案外いるかと思う。
 
 だがそんな事はない。全部出鱈目な活動であるとおっさんは思う。

<事故まっしぐら、戦略を欠いたイレギュラーな奇襲戦術>


 今まで飲食店だったところが、営業継続のためとはいえ、お弁当に切り替えるというのはリスキーである。これは保健衛生の知識があればわかるが、店内飲食とお弁当では衛生管理の基準が異なるのである。
 コロナ禍での営業継続という建前から、大目に見られてはいたものの、子供に提供するものとしては危ないと言わざるを得ない。
 しかも書き入れ時に結構な量を慣れない方法で作るわけである。

 結局お弁当による食中毒事件が発生してしまった。

 また、ほとんど民間企業からの出資とは言え、子ども食堂への出資は公共投資でもある。そして出資団体は無条件に出資しているわけではなく、自社の慈善事業としての側面もある。なんやかんやでビジネスでもあるし、そうでなくとも出資者を立てるのは世の常識である。

 ①の野菜にしてもそうだ。にもかかわらず、この子ども食堂のリーダーは、自分の懇意にしている飲食店に野菜を横流し、他者に目的を限定されて預けられたお金を使って弁当作りを依頼した。

 友達を助けたい気持ちは分からなくもないが、他人のお金と善意を、お気に入りの個人のために利用するのは筋が全く通っていない。

 このような暴走も、戦略の(1)~(5)をきちんと整えていれば起こりようがない。特に「子ども食堂」というフレーズだけで「すばらしい慈善事業」とされるような活動であるからこそ、天下御免でやりやい放題になりがちである。戦略をきちんとしておかないと、今後も過ちが繰り返されるのではないだろうか。

<ボランティア活動はこれからの組織運営に柔軟な発想を与えるか?>


 ボランティア団体は会社ではない。集まった人の行動原理はお堅い会社とは異なるので、旧来の会社ごっこ的な運営は全く通用しない。また、経済の外にある、いわば公共事業的側面も持っている。故に単なる収支管理だけではなく、事業を通じて社会とどう関わるかも大事である。

 お金を儲けるだけなら、会社ごっこに甘んじたとしても企業に勤めればいい。好きなことをやるだけならば趣味のサークルやイベントでいい。だがボランティアならば、団体各々が社会における明確な位置付けを持つことが不可欠であるとおっさんは思う。そのためにも戦略フェイズをしっかりこなすことが極めて重要である。

 活動していて、或いは昨今のブルシット・ジョブ問題などを思うに、これからの企業活動は案外ボランティア的側面が増してくる様に思う。イメージアップ戦略、社会貢献による大きな資金の獲得、脱会社ごっこや自由な働き方による社員満足度の向上、人々の業務への関わり方の変化(フリーランス活用、プロジェクト参加型社員、サポーター事業者、他)。仕事との垣根が曖昧になってきている。

こんな時代だからこそ、本稿が、ボランティアだけに限らず、様々なキャリアの人たちの活動の参考になれれば幸い、とも考えている。


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