『ゴッドファーザー(上)(下)』(マリオ・プーヅォ著・一ノ瀬直二訳)を読んで…あらすじ・映画との比較・疑問 -第11回-

小説『ゴッドファーザー』は、“新しい発見の宝庫”だった!

第9部(下) 
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〇カルロ・リッツィ殺害を否定したマイケルの嘘により、ケイは実家に戻ってしまう。トムハーゲンがケイを訪ね、事のいきさつを説明すると、ケイはマイケルのもとに帰って来た。(P407~P418=映画ではシーンなし)

〇トム・ハーゲンがケイに語った話の中に、コルレオーネ・ファミリーが生き抜いていくための真実が…。トムが語ったこととは?
〇今でも残る疑問…コニーの夫、カルロの殺害は誰がどのように?
① ドンとマイケルが相談して。
② ドンの心境を推し量り、マイケルが。
③ マイケルが独断で。

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 コルレオーネ・ファミリーの血みどろの勝利は、その後に続く1年間の巧妙な政治的操作により、マイケル・コルレオーネが合衆国じゅう最も強力なファミリーの指導者と目されるようになって初めて完璧なものとなった。
 コルレオーネ・ファミリーは、ニューヨークからラスベガスに移住することになり、引っ越しの準備をしていた。ケイは、毎朝ママ・コルレオーネとともに教会に出かけ、今朝は聖体拝領の儀式を受ける日であった。
 その翌朝、ケイは、マイケルのもとを去ったのだった。自分は妹の夫を殺しはしなかったという、マイケルの嘘のため、彼女はニューハンプシャーにある彼女の両親の家へ、子どもたちを連れて帰っていった。
 1週間後、トムがケイを迎えに来た。ケイは、妹の夫を殺したマイケルを許せないと、トムに言った。二人は長いこと歩き続けた。そして、やっとトムが言った。「そういうことがみんな本当だと、実際に知る手段は何もないんだよ。…。もしカルロがソニーを罠にはめ、彼を殺させたんだとしたらどうする?あの時カルロがコニーを殴ったのは、ソニーを戸外におびき出すための慎重な策略だったなら、つまり、相手は彼がジョーンズビーチ・コーズウェイを通るだろうと知っていたとしたらどうなるだろう? ソニーを殺す手助けをするために、カルロが金を支払われていたなら? もしそうだったらどうなるね?」
ケイは答えなかった。トムは言葉をついだ。「そして、もしドンが、あの偉大な人が、自分がせねばならないこと―自分の娘の夫を殺して、自分の息子の死に復讐することがどうしてもできなかったとしたら? 結局、それは彼の手に負えなくて、マイケルならその重荷を自分の肩から除き、その罪を甘受してくれるだろうと知って、それでマイケルを自分の後継者にしたのならば?」
「みんなすんだことだったのに。…なぜ何もかもそのままにして、そしてみん
な忘れてしまえなかったの?」涙ぐみながらケイは言った。「普通の社会だったら、そうできたんだよ」トムが言った。「彼はもう、わたしが結婚した時のような人間じゃないわ」ケイは言った。 
 トムは続けて言った。「もう少し率直な話をしてあげよう。ドンが亡くなった後、マイクを殺すための罠が用意されたんだよ。誰がそれを仕組んだかわかるかい?テッシオだ。そこでテッシオは殺されねばならなかった。カルロも殺されねばならなかった。裏切りは許すことができないからだ。…しかし、もしテッシオやカルロを勝手にさせたならば、彼は君や子どもたちや家族全員、…われわれすべての生活にとって、危険なものになっていたかもしれないのだからね」ケイは頬に涙を伝わせながら、聞いていた。「それを伝えるために、マイケルはあなたをここによこしたの?」「いいや」びっくりしたようにトムは言った。「彼は、君が子どもたちのめんどうをよく見てくれるかぎり、なんでもほしいものを手に入れていい、やりたいことをやっていい、そう伝えるようにと言ったんだよ。君は俺のドンだ、そう伝えてくれとも言ってたな」
 長い5分間が経つと、ケイはトムに言った。「夕食がすんだら、わたしと子どもたちをニューヨークまで乗せていってくださる?」「そのためにぼくは来たのさ」とトムは言った。
 マイケルのもとにもどってから1週間後、ケイはカソリック教徒になる教えを受けるため、司祭のもとへおもむいたのだった。ケイは、自分自身に関するいっさいの思いを、子どもたちや、あらゆる怒り、あらゆる反抗、あらゆる疑いに関するいっさいの思いを、心の中から洗い出した。彼女はマイケル・コルレオーネの魂のためにお祈りを唱えた。(完)

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