【詩】暗闇

ある日目を覚ますと
私は暗闇にいた

何も見えなかった
私しか分からなかった

声を出しても聴こえず
つねっても痛くない

なんの匂いもなく
誰の温もりもない

まだ手はついているのか
まだ足はついているのか

私はいるのか
私ってなんだ

考えることをやめたら
私が消える気がして

怖くなって泣いた
涙は感じない

いっそこの暗闇に
溶けてしまえたら

私はひとりから
解放されるのに

暗闇は私の影だけを奪う
本当の1人ぼっちにする

ある日私は突然
沢山の視線に気づいた

暗闇が私を見ていた
無数の目で見ていた

自分の目が開いているのかどうか
もう私には分からないが

開けているつもりで
暗闇を見返した

暗闇は無ではなかった
暗闇は在ったのだ

ただそこに在った
私もここに在る

奇妙な安らぎがあった
ただここに在るだけ

誰からも決めつけられず
欲に振り回されず

自分を責め立てず
周りに毒を吐かず

私は暗闇と共に
ただここに在る

この時間は終わる
この予感は当たる

光の中に出た時
初めて目にしたものは

小さくなった暗闇
私の影だった

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