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御社のチャラ男

絲山秋子さんの「御社のチャラ男」読了しました。
芥川賞を受賞した「沖で待つ」で知ってから過去作品を読み漁り、新刊を楽しみにしている大好きな作家さんです。今回も面白かったー!

チャラ男はどこにでもいるんです

ある地方都市のジョルジュ食品と言う架空の会社にいるチャラ男が、三芳部長です。この小説は彼に関わる人たちが主人公となる短編連作小説です。
目立つ存在の彼は、短編の主人公たちに様々な影響を与えます。良くも悪くも彼のことが気になるのは、それぞれの主人公が自分を投影しているからでしょう。彼の行動が羨ましかったり、自分の隠し切れない嫌な部分をマザマザと見せつけられたりするから。
一人の登場人物が言います。

チャラ男って本当にどこにれもいるんです。

チャラ男という言葉の概念は登場人物それぞれで、(詳しく書きませんが)その定義も面白いと思いました。

思考の因数分解

共感できないタイプの人の行動も、実はその人の思考に沿った行動な訳でして、その思考の因数分解が分かりやすく描かれています。(絲山さんの作品の登場人物が魅力的なのは、そこがしっかりしているからだと思います。)そしてこれは、実生活でも言えることだよなぁと考えさせられました。私の嫌いなあの人も、思考を因数分解すれば理解できない行動ではないし、結局私を投影しているから気になるのだろうと。

時代を読む

作者の先読みも素晴らしく、短編の中の主人公の妻が言ったことが今の世界を表しているようで驚きました。

「オリンピック、やめればいいのに。」
「絶対何か問題が起きる」
「9のつく年は中国で波乱が起きるんだって」
「中国で何かあったら、世界経済が傾くよ」

「群像」に連載されていたのが2019年8月号まで。つまり、その前から書いていた内容です。作家の時代を読む力って、本当にすごいですね!

会社で働いたことがある人はきっと、この小説の中に自分を投影してしまう登場人物がいると思います。

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