『明月記』に見る風景
面白い。
ひっさびさに夢中になれる一冊です。
吾妻鏡、増鏡、愚管抄と並ぶ中世を知るための史料明月記を
体系的づけて読み解かれています。
定家『明月記』の物語 書き留められた中世 稲村栄一 著(ミネルヴァ書房)
当時の貴族の意識はもとより暮らしに根付いた風習、
さらには、それぞれの屋敷が置かれた場所から見えてくる、
当時の都の姿など、実にわかりやすく説かれています。
定家の、若々しさを感じる簡潔な文章は
和歌のたしなみ以前に漢文に長けていたことを感じさせます。
風習といえば、
この当時は親の死に際には立ち会わないようにしていました。
定家の父が死を悟りそろそろだと伝えると
家族は皆部屋を出て行って下人のみが残ったのです。
それは死という穢れに触れないためでした。
親の最期を見届けられなかったと嘆く向きがなきにしもあらずですが
こういう風習もあったのだと知ると
それは必ずしも悲しむべきことでもなく
ましてや不徳でもないということができるような気がします。
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