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梅すだれ

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恋も仕事も頑張る江戸女子、お千代の物語!ですが現在、猿彦や松之助など天草の隠れキリシタンのストーリーから、雑賀の国の物語が展開中。
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#長編小説

26-3 梅すだれ 紀国雑賀/木花薫

寺へ着くとお滝は以前のようにお桐の隣に座った。お桐の向こう隣に座っているお孝がお滝を見てうれしそうな顔をした。お滝が「おはよう」と声をかけると「おはよう」と返したのだが、その声の大きさにお滝は驚いた。お孝は無口で声も小さい。お桐とは喋るがお滝と話すことはほとんどない。そのお孝から歓迎するような挨拶をされてお滝はここにいていいのだと、居心地の悪さが消えたのだった。

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26-2 梅すだれ 紀国雑賀

宿屋へ墨絵を観に行けなくなったお滝は、次の日の朝、渋々と寺小屋へ向かった。背中にタカベの視線を背負いながら。いつもは「行ってくる」と朝飯を食べたらすぐに出かけるタカベであったが、この朝はお滝とお桐が寺小屋へ行くのを見送ってから仕事へ行った。

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25-2 梅すだれ 雑賀

店には数人食べている客がいた。ハモは慣れた動きで座敷へ上がると、 「めしやめしや!この子たちにも腹いっぱい食わせたってくれ」 と叫んだ。その声に呼ばれておひでと呼ばれる女が茶を持って来た。そして「見かけへん顔やなあ」とタカベ親子を眺めまわした。

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25 梅すだれ 雑賀

雑賀には夕暮れ前に着いた。荷下ろしが始まる前に荷物庫にいる娘二人を外へ出さなければならない。タカベはすぐに荷物庫へ行った。昨日と同じように二人は荷物庫の隅に座っていた。昨日は「父ちゃん!」と立ち上がってきたが、今日の二人はぐったりしている。朝あんなに騒いだお滝もうつむいたままだ。こんな暗いところに二日も閉じ込められていたのだから無理もない。二人を不憫に思うタカベの心は痛んだ。

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22-2 梅すだれ 肥後の国

干物屋へは毎日たくさんの干物が集まってくる。漁師たちが有明海で獲った魚を売りに来るのだ。番頭がその魚の数を数えたり目方を量ったりして買い取ると、残りの使用人たちが魚の腹を切って開く。その開いた魚を糸で結わえて竿へ干すのを庄衛門は手伝っていた。しかし生来の不器用から結わえるはずの魚のしっぽをちぎってしまう。そうすると庄衛門はめげることなくその魚の目玉をくりぬいて紐を通して干すのだった。

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