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梅すだれ

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恋も仕事も頑張る江戸女子、お千代の物語!ですが現在、猿彦や松之助など天草の隠れキリシタンのストーリーから、雑賀の国の物語が展開中。
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31-3 梅すだれ 御船/木花薫

矢形川は岸にいた舟で渡った。毎日誰かしらタケの豆腐を買いに来る。そのために舟がいるとも言える。船頭には豆腐を買いに来たことは明らかで、甘木側の岸へ着くと訊かれもしないのに、矢形側から枝分かれした支流の川に沿って八町歩いたところだと教えた。二人は礼を言い船賃を払って降りた。 船頭に言われたとおりに歩いていくと、大きな畑の中にぽつんと家があった。「ごめんください」と玄関へ入っていくと、ひょいと二十歳くらいの男が顔を出した。 「クラさんから教えてもらいました。豆腐をください」

31-2 梅すだれ 御船/木花薫

この頃の家に天井はなく家の上部は柱がむき出しで屋根の裏が見えた状態であった。床に垂直に立てられた通し柱の上部を水平につなぐ横木、差鴨居に板を張り床にして寝泊まりや物置に有効活用したものが厨子二階である。低くて狭いが小さな窓を開けることで換気がなされ、寝るのはもちろん座っている分には十分な空間である。 その二階へ上がるためにかけてある梯子の下へ行くと、お滝は「ご飯炊けたよ」と大きな声で叫んだ。もそもそとお桐が梯子の上に顔を出した。 「上へ持ってこうか?」と訊くと、「下で食べ

31 梅すだれ 御船/木花薫

ここ数日は涙も枯れて窓の外を眺めてぼんやり過ごしていたお滝。昼になると腹が減った。お桐が炊かないなら自分が炊くしかない。久しぶりに一階へ下りると鍋に米と水を入れた。 (ご飯を炊くの、何年ぶりだろう) 雑賀で握り飯屋を始めてからご飯はお桐が炊いていた。もう何年もご飯を炊いていないことに気付いたお滝は、お桐を御船に連れてきたことが悔やまれてならない。御船に来てからのお桐は厨房にこもって料理をしてばかり。雑賀ではお孝と遊んだり村の人たちと話したりしていたのに。 (雑賀へ帰ろうか

30-8 梅すだれ 御船/木花薫

マサが死にお滝は三日三晩泣き続けた。二階のマサが寝ていた場所に横になってマサのことを思い出している。

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30-7 梅すだれ 御船/木花薫

マサが旅立ち意気消沈するお滝。追い打ちをかけるように二日後に大嵐が肥後を襲った。強い風がこれでもかと大粒の雨を打ちつけて来る。そのすさまじさは二階が吹き飛ぶのではと思われるほどであった。お滝とお桐は一階の座敷で身を寄せ合い息を潜めて嵐が過ぎ去るのを待った。

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30-6 梅すだれ 御船/木花薫

身振り手振りの会話でどう転んだか、 「金山寺味噌を琉球の王様へも差し上げろ。取り計らってやる」 と丸い目の船乗りたちは言い始めた。酔っぱらいの戯言で実現可能かどうかなんてわからないけれど、大友のお殿様に献上したのだから不可能ではないかもしれない。どうせやるなら手渡したいし、どんな国か見てみたい。マサは琉球へ行くことにした。

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30-5 梅すだれ 御船/木花薫

御船に住み始めて二年が経った。笑うように花が咲き、芽吹いた新緑は茂り出すのを今か今かと待ち構えている夏の初め。長崎へ荷を運びに行ったマサが五日たっても帰ってこない。いつもなら三日で戻って来るのに。何かあったのではと心穏やかではいられないお滝は川へ下りて荷運びの先頭を捜した。マサの乗る船の先頭は見つからないが、ほかの船は停まっている。

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30-4 梅すだれ 御船/木花薫

それ以来小佐井は三月に一度食べに来るようになった。三人前をぺろりと平らげて三倍の値の銭を置いていくよい常連客となっている。

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30-3 梅すだれ 御船/木花薫

六尺はある大きな体と四角い大きな顔。そこに太太と生えた眉には貫禄がある。今までにも侍は食べに来たがこれまでの誰よりも堂々とした立ち姿であった。

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30-2 梅すだれ 御船/木花薫

マサの乗る船は島原や天草、時に長崎まで荷を運ぶが頻度はそれほど多くはなかった。半分は船に乗らない日だったので、そんな日は北東に位置する朝来山へ山菜を採りに行く。それをお桐がお孝の母親の真似をして塩漬けにした。

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30-1 梅すだれ 御船 / 木花薫

厨で一晩を明かしたお滝とお桐は、次の日も朝からご飯を炊いた。昨日に引き続き絶え間なく何度も炊き続け、船乗りたちの食事が終わり自分達も食べ終わったのは真昼を過ぎた頃だった。厨房を片付けるとあとは九州に着くのを待つばかり。

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29-6 梅すだれ 旅立ち / 木花薫

船乗りたちの食欲は目を見張るものがあった。一人五合も一度の食事で食べるのだ。四、五人づつ順番に食事を済ませていくのだが、炊いても炊いてもなくなる。追われるようにひたすらご飯を炊き続けた。

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29-5 梅すだれ 雑賀-旅立ち / 木花薫

やって来たのはお孝だった。

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言い訳をあれやこれや。「梅すだれ」編集後記

ロング連載中の小説「梅すだれ」の進行状況について。 遅々としたペースですが、今後もご愛読よろしくお願いいたします。 (o*。_。)oペコッ ロング連載中の「梅すだれ」はこちらです。 初話 肥後編はここから始まります。 お滝とお桐の物語はここからです。 最新話