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梅すだれ

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恋も仕事も頑張る江戸女子、お千代の物語!ですが現在、猿彦や松之助など天草の隠れキリシタンのストーリーから、雑賀の国の物語が展開中。
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2023年1月の記事一覧

23-3 梅すだれ 肥後の国

庄衛門を見るとお菊はいつものように嬉しそうに「上がりなされ」と家に上げた。庄衛門の大好物の湯葉を皿に盛って「食べなされ」と置いたが、この日の庄衛門は手を付けない。いつもなら話をする前、お菊の顔を見るよりも前に食べ始めるというのに。「腹でも壊しなすったと?」と顔色の悪い庄衛門を心配するお菊に、庄衛門は探るように尋ねた。

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23-2 梅すだれ 肥後の国

ヤズは庄衛門と同じ年ということもあって、魚を売ったあとも帰らず庄衛門の脇で話し続けることが多い。忙しく頭の中で計算をする庄衛門はいつもは聞き流してやり過ごしていたが、今度ばっかりは違った。「なんで潰れたと?」と魚を数える手を止めてヤズをじっと見るものだから、ヤズはここぞとばかりに話し始めた。

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23 梅すだれ 肥後の国

珍しい魚や数の少ない魚を番頭が買い取り、残りを庄衛門が買い取るという区分けが自然とできていった。毎日たくさんの魚の買い取りをさばいていく庄衛門であったが計算を間違えることはなかった。冴えた頭で計算しながら漁師たちとの会話も楽しむ庄衛門は、次第にこの仕事が自分に合っていると思うようになった。熊本へ売りに行くことへの未練もなくなり買取に励んで三年が経った時、買取担当の者が一人増えた。それと同じくして新しい漁村が魚を売りに来るようにもなった。干物屋の主人がまた規模を大きくしたのだと

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22-5 梅すだれ 肥後の国

御船の路上で庄衛門が干物を売るようになったために、栄太がお得意様を回って最後に道で売ろうとしてもてんで売れない。客を取られてしまっては酒を買う銭も手に入らない。困った栄太は庄衛門に熊本へ売りに行けと指導した。

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22-4 梅すだれ 肥後の国

どうやって計算しているのかと不思議に思う番頭に、庄衛門は「頭ん中の玉が勝手に動くと」と言った。「どんな頭ん中をしとるとか」と干物屋の誰もが庄衛門の秀でた算術に一目置きながらも、相変わらず庄衛門を「不器用で大食らいの坊ちゃん」として可愛がるのだった。

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22-3 梅すだれ 肥後の国

紐で魚を結わえることさえうまくできない庄衛門であったが、石でうろこを取り除いたり開いた魚を水で洗って海水に漬けたりと毎日忙しく働いた。そして三年が経ったとき魚の開き方を教わった。腹に切り込みを入れてはらわたを取り除き、背骨に沿って刃を動かして切り開き、頭を割ってえらを取る。やって見せてくれる者は一呼吸の間でやってしまうのだけれど、期待を裏切らず不器用な庄衛門にはもちろんできなかった。腹へ切り込みを入れようとすると腹を切り落としてしまうし、開くはずが身を二つに切り裂いてしまう。

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22-2 梅すだれ 肥後の国

干物屋へは毎日たくさんの干物が集まってくる。漁師たちが有明海で獲った魚を売りに来るのだ。番頭がその魚の数を数えたり目方を量ったりして買い取ると、残りの使用人たちが魚の腹を切って開く。その開いた魚を糸で結わえて竿へ干すのを庄衛門は手伝っていた。しかし生来の不器用から結わえるはずの魚のしっぽをちぎってしまう。そうすると庄衛門はめげることなくその魚の目玉をくりぬいて紐を通して干すのだった。

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