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短編小説集

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短編をまとめてみました。 五分以内に読めるものが多いと思います。 楽しんでいただけると幸いですー♪
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記事一覧

【短編】安藤さんは無視をする

 隣の席の安藤さんはいつもムスッとしている。
 しかめ面で哲学の本を読んでいる時も、お昼休みでご飯を食べている時も、いつも不機嫌そうな顔をしている。
 眼鏡を掛けていて、いかにも真面目な女子だ。近づきがたい雰囲気がある。
「安藤さんっていつも一人だよね」
「だって話しかけたって無視をするんだもん。おはようの返事くらいしろっての!」
 当然クラスの女子に噂される。
 中学生は多感だという

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【短編小説】女の子のCT検査

 とある夏の日。
 病院は患者さんでごった返していた。
 頭痛、めまい、だるさ、様々な症状でやってくる。
 そんな中で、女の子が検査に回された。
 カルテを見るとまだ四歳になったばかりである。椅子から落ちて頭をぶつけたそうだ。被曝に気をつけながら、CT検査をやる事になった。
 女の子は親御さんに連れられてやってきた。
 小児用の設定をしていよいよ検査である。
 頭をぶつけて心配だから調べるねと言っ

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【短編小説】勇気0%の魔王

 魔王は地下にある自室に引きこもっていた。
 寂れた玉座にしがみつきながら、震えていた。
 外で、何者かが扉を乱暴に叩く。そのたびに自室は揺れ、天井からパラパラと粉が落ちた。
 どの程度の時間が過ぎたのか、魔王には分からない。今はただ、扉の外にいる恐怖の存在からどうやって逃げるのか。それしか考えられない。

「おい、開けろ。へっぽこ魔王!」

 恐怖の存在が声を荒げた。勇者だ。魔王の腹心たちをデコ

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【SS小説】パイルバンカー・シュート

 ワールドカップ2030年、サッカースタジアムは異様な熱気に包まれていた。
 各国の代表がしのぎを削る試合の数々は、サッカーファンはもちろん、日頃はサッカーに興味がない人たちの気持ちも掻き立てた。
 プレーの1つ1つに歓声が沸き、紙一重の攻防に手に汗握る。
 世界が注目する大会だといっても過言ではない。
 至高の場であり、甲乙つけがたいチームが集結していた。
 しかし、そんな中で実力差を見せつけら

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