0.5リットル分の邂逅

20180512

ひと作業終えた頃には喉が渇ききっていた。冷蔵庫を開けてみる。麦茶がこれっぽっちも残っていなかった。

水道水で喉の渇きを潤すこともできたが、せっかくなので何か買いに行こうと思った。どうせ買うなら頭の悪い甘さの炭酸飲料が飲みたいと思い、パーカーを一枚羽織り、裸足のまま靴を履き、最寄りのコンビニへと向かった。

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目的地に着くや否や、僕を呼ぶ声がした。コンタクトレンズをつけていなかったので初めは誰が僕を呼んでいるのかわからなかった。目を細めて見ても暗いのでよくわからない。ただなんとなく、どこかで聴いたことのある声がする。多分最近聴いた声ではないから、とりあえず「お〜久しぶりじゃん」と応える。

そいつの目の前に立って、ようやく声の主が誰だかわかった。高校時代のクラスメイトだった。

彼とは高校時代、それなりに仲が良く家も近かったためよく一緒に帰った。卒業してからは示し合わせて会うことはなかったが、今もこうして気兼ねなく声をかけてくれる仲だ。

そしてようやく、彼の隣に座っているもう一人の男の存在に気づいた。二人とも青梅のドンキに売ってそうなスエットを着て、ベンチに座りながらタバコをふかしていた。僕はなんだか嬉しくなって、喉の渇きも忘れてタバコを取り出す。

「就活どうよ?」「うん、一応もう終わってる」「まじ?すげ〜」

一本吸い終えると、喉がカラカラだったことを思い出し、店に入って三ツ矢サイダーを買う。その間わずか1分半。僕はこの思いがけない再会にすっかりテンションが上がってしまっていた。

炭酸の弾ける音が車も通らない深夜1時の静寂に傷をつける。煙とサイダーが混ざったよくわからない味も、今はなんだか心地良い。

隣のベンチに腰掛け、彼の友人とも話す。初対面でも同い年だとわかるとすぐに敬語を捨ててくるあたりきっと友達も多いんだろうななんて思いつつ、僕もそれに合わせてタメ口で話す。おそらく知り合い方が違っていたら苦手なタイプの人かもしれないが、不思議と初めて話す感じがしなかった。「人類みな友達!いえーい!」みたいな雰囲気の人だった。うん、なかなか楽しくなってきた。

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それから近況報告や昔話で盛り上がった。話を聴くと、二人とも明日は(正確には今日)公務員試験だそうだ。こんな時間まで何してんだお前ら。専門学校に進んだアイツが今はどこどこで働いてるなんて意外な話も聴けて僕は久しぶりに高校時代に戻りたい衝動に駆られた。

そして、ちょうど僕が500mlのサイダーを飲みきった時、示し合わせたかのように「明日に備えて寝ますか〜」「だなっ」なんて言う。

通り一辺倒の別れの挨拶と、明朝の試験と今後の健闘を祈って僕らは別れた。

次に彼らと会うのはいつだろう。その時までに、彼らは立派な公務員になれているのだろうか。僕はどれだけ成長しているのだろうか。

500ml分のサイダーが、僕に将来の楽しみをくれた。

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