育休期間中にリスキリングできる人は既にハイスペックだと思う

一昔前に某国の総理大臣が「育休期間中にリスキリングしたらいいじゃないの」と言って、釈明に追われていたことがあったことを、子供が産まれた時に思い出した。

実際に育休を取得して、実態がどんなもんかをやってみて感想を書いてみようと思う。

結論としては、タイトルにある通りであり、筆者(男)はそれほどのスペックと持ち合わせていないため、ほぼ不可能であるという結論に達した。

はっきり言って自分のことを考える余裕なんてないのが、実情であると断言できる。

某国の某総理大臣が炎上するのも、感情的には非常に理解ができる。

新生児を育てるにあたって、リスキリングできるほどの時間管理が出来る人はそれほど食うに困らないのではないだろうか。

毎日3時間ごとにミルクや母乳を与えて、その隙間に家事や食事、睡眠を取らなければならない。

その「3時間ごと」もぴったり予定通りに来るわけではないのだ。

明らかに大抵の仕事よりも育児の方が難易度が高いのではないかと個人的には考える。

仕事は予定や計画が予め設定してあることが多く、先に段取りや必要な準備を行なっていれば、そう慌てることはない。

利害関係の絡むような「人」の問題は、定まっている要素や時間的余裕があるため、先手を打つことができるのである。

一方で新生児の育児はそうはいかない。

ミルクを3時間ごとに与えても、毎回、完食してくれると限らず、予定がずれることを予定しておかなければ、メンタルが持たない。

オムツ交換も次から次にしなければならず、ついさっき換えたばかりであるにもかからわず、10分後にまた交換ということも全然珍しいことではない。

新生児という「人」を相手にしているが、自分のコントロール下に置けないという意味では「自然」と向き合っているに近い感覚である。

新生児の睡眠に合わせて寝たら良いという意見も散見されるが、もっと現実を考えてほしいと思う。

新生児が眠って一緒に床に入ったとしても、ちゃんと子供が息をしているか、何か変わったところがないか、呼吸が乱れていないか、睡眠に入ったとしても、寝るに寝付けないのが、親の心情ではないだろうか。

子育てや育児を合理的に最適化できるという発想がそもそもとして、かなり傲慢であると言わざるを得ない。

育児休業期間中にリスキリングが可能かどうかは、100%できないとも言えないだろうが、普通に仕事をしながら学ぶ方が簡単であると言える。

そもそもとして、新生児の育児中は睡眠があまり取れないため、頭が回らない。

勉強する暇があるのならば、「寝たい」というのが育てる側の言い分である。

リスキリングはあくまでも個々人の自己実現のために行われるべきことであり、国の経済や産業を担うためにやるものではない。

自分の人生を全て、国や会社に捧げるという生き方を優先したいのであれば、それで問題ないと言えるが、多くの人にとっては、やはり自分の自己実現よりも子供の健やかな成長を望むのが自然ではないだろうか。

少なくとも、自分の自己実現よりも、子供のことを優先できる人が活躍できるような社会を目指す方がより多くの人が「生きやすい」のではないだろうか。

そのような世の中であってほしいと個人的には願っている。

リスキリング自体は否定されるべきことではない。

何か新しいことを学んで、自分の経験値を増やしていきたいという思いは尊敬に値するし、筆者自身もそのような姿を子供に見せていきたいと考えている。

育児休業期間中は新しいスキルを「身につける」ことよりも、「自分がどうありたいか」を考えるに相応しい期間ではないだろうか。

ライフステージが大きく変化する中で、自分の価値観を考え直し、どういう親でありたいか、どういう社会を子供たちの世代に残していきたいか、を考えるための良い機会が育休期間ではないかと思うし、そういう意味ではより多くの人が育休を取れるようにすることが最終的には全体最適につながるのではないかと思われる。

少なくとも子育て環境の整備に関する事業に従事している男性の方には1週間だけでもワンオペで新生児の我が子の世話をする経験をしてみると良いだろう。

育児や家事、こういった日々の営みを平穏に保つための活動については、もう少し敬意を払う方が健全な文明社会ではないだろうか。

少なくともこういった育児や家事ができない人が「外で稼ぐ」方が偉いと主張する様は美しいとはいえない。

自分の無能を棚に上げることなく、できることに全力を尽くすことが大切であると筆者自身を強く思うのである。

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