私が愛してやまない社内教育資料の工夫
私が愛してやまない仕事のひとつである教育資料作成においての工夫を詰め込みました。
私は今、インターネットバンキングアプリを開発している会社のBCP推進チームPMOとして働いています。
BCPとはBusiness Continuity Planの略で、大規模地震やシステム障害、パンデミックなど、危機事象が発生したときに事業縮小や事業中断が想定されるので、そのような事態に備えて策定される対策についての計画や手順・マニュアルなどのことです。
私のチームでは、事業部のBCPが古くて使えないものにならないように、備蓄品やドキュメント類の棚卸しをしたり、各開発担当者が訓練やドキュメントの棚卸しを適切なタイミングで行っているか等を管理したりしています。
そのBCPの業務の一環で、BCP教育というものがあります。
BCPは管理職やシステム開発担当者など一部の人だけが理解すればいいのではなく、事業部全員が理解する必要があります。
例えば、大地震が起きた時に全従業員の安否を確認することもBCPに含まれますが、連絡体制はどうなっているのか、連絡先はどこなのか、連絡する媒体は何がいいのかが分かっていないと連絡できないですよね。
そんなわけで年次でBCP教育として、PowerPointで作成した教育資料を事業部全体に展開して読んでいただく、というようなことを行っているのですが、このBCP教育を今年度と昨年度私が主担当させていただいたので、どんな工夫をしたのかご紹介します。
目的を明確化する
まずは、資料の作成に取り掛かる前に、そもそもこのBCP教育とは何のために行うのか、目的を具体化してチーム内で意識合わせを行いました。
社内の規定には一応、「事業継続計画を周知させるため」というようなことは書かれているのですが、それでは抽象的でいまいちイメージがつかないのですね。
BCP教育とは何のために行うのか、目的を具体化することで軸ができます。
既存の教育資料をブラッシュアップすることで今年度の資料を作り上げていくのですが、目的に沿っていないスライドは削除したり、目的のために必要な情報がなければ新規のスライドを作成したり、教育資料の作成を進めるにあたり大切な判断軸ができます。
また、昨年度は目的の意識合わせの前にトピックの検討や作成を進めてしまったため、後から方針が大きく変わってしまったり、せっかく作成したスライドがボツになってしまったりしました。
改めてわざわざ認識を合わせなくても良いように思えますが、不要な稼働を増やさないためにも、何のために作るのかについて意識を合わせることは重要です。
結果的にも目的の意識合わせを最初に行ったことで、今年は不要なスライドを作ってしまったり、後から方針が変わったりするようなことはなく、稼働もかなり抑えて作成を終えることができました。
資料の冒頭に動画を挿入する
BCP教育の本題に入る前に、実際大きな地震が発生したらどのような事態になるのか、2分程度の動画を視聴いただくようにしました。
会議資料は文字ばかりだろうが分かりにくかろうが、会議の出席者は理解しようと真剣に読むと思いますが、教育資料は全員が真剣に読んでくれるとは限りません。
ちゃんと読んでもらうためにも、論理的なだけではなく、感性に訴えるような仕組みづくりが必要だと考えました。
「あっ、こんな酷い事態になるんだ。自分もちゃんと考えなきゃ。」
そう感じてもらうためには動きで訴える動画が効果的です。
回答方法を見直す
従来までのBCP教育では、Excelで作成したチェックリストに全従業員の名前が記載されており、受講者が受講完了日を入れることで教育の完了としていました。
この方法では、受講対象者が本当にちゃんと読んでいるか分かりません。
そこで、受講完了日だけ入れて完了とする回答方法を大きく見直し、
有事に自身は事業部の従業員としてどんな役割になるのか、
この教育を受けたことでその役割を果たすことができるかについて考えてもらうアンケートへの回答を必須にしました。
受講完了日を入れるだけの回答方法に比べればちゃんと教育資料を読んでいるかどうかが認識しやすく、教育の理解度も何となく把握することができます。
また、アンケートを通して質問されることで自分事として捉えてもらいやすくなり、回答内容は来年度以降のBCP教育の改善に活かすことができます。
テスト問題やアクションリストを追加
資料を一通り読んで終わりとならないように、簡単なテスト問題で教育内容が身になっているか確認してもらい、安否確認する際の連絡先や連絡体制の見直し、備蓄品を用意する、避難経路を確認するなど本教育を受けて具体的に実践してほしいことリストアップしました。
情報をインプットさせるだけではなく、アウトプットの機会も提供することで教育内容が定着しますし、理解が不十分な点は見直してもらうことができます。
また、実践してほしいことを具体化してまとめることで、何をすればいいか明確な分行動へのハードルが下がり、アクションに繋げやすくなります。
プレ教育の実施
事業部の全員に展開する前に、一部の方に完成した教育資料を読んでもらい感想をいただくプレ教育を実施しました。
教育資料は作成する私自身もレビューを行うチームのメンバーも常にBCPに関する業務にあたっていますが、事業部の中には世の中の人がほとんどそうであるように「BCPって何?」から始まるような方もいらっしゃいます。
その様な方からの視点で確認いただき、感想をもらうことでより多くの人に浸透しやすい資料になると考えました。
資料の課題を見つけて解決策を考えよう
まとめると、
①目的を明確にすることで、作り手も軸がブレないから最小限の稼働で濃い内容の資料を作れるし、読み手にも伝わりやすい資料になる
②感覚に訴えて必死にさせることで、教育の習熟度を上げる
③本当に受講しているのか確認できる仕組みを作る
④行動に繋げる仕組みを作ることで、より教育の効果を高める
⑤第三者からの観点を取り入れて浸透しやすくする
今の教育内容の課題を洗い出してみれば、自ずとその課題を解決するためのアイディアはいくらでも出てくると思います。
私の会社の教育もまだまだ見直すポイントは山積みです。
実は実際やってみて、アンケートで思うような回答が得られなかったり、プレ教育がそこまで効果が出なかったので、新しい工夫や改善をしなければなりません。
もっと具体的な手順に落とし込んだ教育や教育で学んだことを実践する場の提供が必要ですし、もっと感覚に訴えなければならないし、アンケートももっと求めている回答が得られるように見直しが必要です。
たかが資料作成、されど資料作成。
世の中に完成された資料など存在しない、工夫次第でいくらでも効果を上げることができる。
そして、事業部全体に読んでもらえる資料の効果を高めることの影響度は計り知れません。
教育資料に限らず、今目の前にある資料にどんな課題があるか、どうしたらそれが解決するか、一度考えてみると楽しいかもしれません。
最後まで読んでくださるなんて! うれしい~ありがとうございます! これからも思考まるだしの文章を書いていきます(^o^) コメントあればお気軽にどうぞ~♪