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#趣味
『シンプルな世界』四
四
愛が来て、一週間が経過した。今日も猛暑というニュースにうんざりしつつ、和貴は出掛けるための準備を始めた。
「バイト?」
愛が朝食の用意をしながら彼に尋ねる。彼は寝ぼけ眼を擦りながら、「ああ」と一言だけ答えた。
「今日も遅くなる?ご飯は?」
「いや、今日は夕方には帰ってくるよ」
「わかった。そうしたら、ご飯作っておくね」
「うん」
会話はそこで終わった。暫くの間、目玉焼きがジュウジュウとフ
『シンプルな世界』三
三
土日が明けて、大学へ向かった和貴は早速仁を捕まえて報告した。
「行動早いな、和貴」
「善は急げってな」
「善なのか、それ?」
「さあ」
二人は軽く笑い合ったが、仁は和貴の肩をぽんっと叩くと「ま、よかったじゃん?満更でもなさそうだし」と言った。
「ああ、飯も作ってくれるし、うまいし、可愛いし……動く人形、動く理想だわ」
「うわあ、コイツ、相当ハマってやがる」
仁はニヤニヤしながら言った。
『シンプルな世界』二
二
ピンポーン。インターホンの音が六畳の部屋に響き渡る。どう考えても広さの割に音が大きすぎる。
「はい」
「タケル運送です。株式会社ミライからのお届け物です!」
「今、開けます」
オートロックを解除後に再びインターホンが鳴った。扉を開けると、運送業者の若い男が胸元くらいまである大きな箱を抱えて立っていた。割れ物、精密機器、天地無用といったステッカーが貼られているのがちらりと見えた。
「東雲和貴
『シンプルな世界』一
刃となった陽光が、柔い生地を切り裂いた。懐かしい思い出たちが、ドロドロとチーズが溶けるように流れ出た。
一
さわさわと新緑が生い茂る夏。二人の男子学生は古びた食堂にて向かい合い、何やら難しい顔をして話していた。
「だから、俺はヒューマノイドの恋人なんて御免だよ。人間じゃないから、所詮疑似恋愛の域を出ないじゃないか」
「じゃあ、お前はヒューマノイドの恋人を作ったことがあるのか?」
「それはない